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2025年 07月 16日
富士宗学要集 第八巻 史料類聚(2)下 法難編より 第十三章 昭 和 度 (創価学会) 明治巳後は徳川幕末・神道復興の影響を受けて、廃仏棄釈の為に各仏教の勢力減退し、加ふるに明治天皇の神格向上と共に、又形式だにも各旧仏教の繁栄を見ざるに至り、殊に国威の発展と共に益々其の勢力を削がるる傾きに陥り、時の政府の愚弄する所と成り了り、殊に昭和度の軍国政府の勃興するや、全く神威の下に慚く生息する程度に陥りたり、 此を以て古来神社の整理を謀り、或は雑乱の社参を禁止せし浄土真宗及び日蓮宗の一部に於いては法難を受けたる事・顰繁(ひんぱん)にして此れが防禦法に苦心惨憺(さんたん)たりしなり、 吾宗の僧俗亦此の難を免れず殊に真新気鋭の創価学会・最も此の難を蒙り、殆んど全滅の形状に陥れり、 但し当時の国家としては神威に憑(たの)み過ぎて大敗戦に及びし・為に世界の劣等国と成り対外的にも政策の大変動に依り俄然(がぜん)此等神道偏尊の悪風が一掃せられたるも却つて個人の自由は勿論にて信仰も亦自由公平となりたれば、学会の復興も忽ちに成り、意気・中天に達し全国到る処に新真なる会員が道場に充満し幸福平和の新天地を拓ければ、一時の劣等が又最勝国と成るべきか、 各宗教界の羨望甚だしく、本末の仏法興隆を究め法益倍増、法滅の末法・忽(たちま)ちに変じて正法広布の浄界と成り、広宣流布の大願成就・近きに在り、悦ぶべし・喜ぶべし、編者(日享)申す。 (左の一編は小平芳平氏の記に依る) 一、事件の概要 昭和十九年七月六日、創価教育学会の会長以下二十一名が治安維持法違反及び不敬罪の容疑により、各地の警察署に留置された、この事件の背景とその概要は次の通り。 昭和十二年七月七日、支那事変勃発、十五年七月成立した第二次近衛内閣は、新体制準備委員会を作り、高度国防国家建設を声明、十六年十月十八日、東条英機が内閣を組織し、戦時動員体制を整えつつ同年十二月八日、対米英宣戦布告を行つた。 緒戦の陸海軍の大戦果にもかかわらず、アメリカ軍は次第に反攻に転じ、進歩した科学と豊富な物量をもつて次第に日本軍を圧倒し始め、開戦後一年も過ぎる頃からあわただしい空気に包まれてきた。 創価教育学会は昭和十二年に発会して、当時(昭和十七年頃)は会員が三千人に発展していたが、牧口会長はこのように未曾有の非常時局を救う道は、日蓮正宗の広宣流布以外にないこと、従つて今こそ国家諌暁をしなければならないと仰せ出さる。 然るに時局は全く逆の方向に流れつつあり、あらゆる分野において戦時体制を強要し、当局は宗教も各派を合同して一本化し、国家の大目的に応じて進まなければならないとの方針をとるようになつた、 軍部の権力を背景とする文部省のこの方針は、日蓮宗の各教団は単称日蓮宗(身延)へ合同しなければならないとし、軍人会館を中心に日蓮主義者と称する軍人と、日蓮宗の策謀家達が屡々(しばしば)会合して、この謀略の推進に当つていた、 大石寺の僧俗の中にもこれに動揺を来(きた)す一類を生じ、小笠原慈聞師は水魚会の一員となり、策謀の一端を担うに至る、而して「神本仏迹論」を唱え、思想的にも軍閥に迎合して総本山大石寺の清純な教義に濁点を投じた。 大石寺においては僧俗護法会議を開き、身延への合同には断固反対して十八年四月一日、漸く単独で宗制の認可を取ることができた。 十八年二月にはガダルカナル島の敗戦が発表され、愈々(いよいよ)戦局は敗色濃厚となり、国民生活には極度の窮乏が襲いつつあつた。 牧口会長は今こそ国家諌暁の時であると叫ばれ、総本山の足並みも次第に此れに向かつて来たが、時日の問題で総本山からは掘米部長がわざわざ学会本部を来訪なされ、会長及び幹部に国家諌暁は時期尚早であると申し渡されたが、牧口会長は「一宗の存亡が問題ではない、憂えるのは国家の滅亡である」と主張なされた。 小笠原師はこの策謀に成功すれば、清澄山の住職とか或いは大石寺の貫主を約束されているとの噂もあつた、十八年四月七日には、東京の常泉寺において、小笠原師の神本仏迹論を議題に、堀米部長が対論することになつたが、小笠原師の破約によつて実現しなかつた、又この頃東京の妙光寺らも紛争があつたが、陰には小笠原の策謀があつたといわれている。 この当時、総本山と創価教育学会を訴えた者があるとの噂もあり、正宗と学会弾圧の気配が次第に濃くなつてきた。 十八年六月には、学会の幹部が総本山へ呼ばれ「伊勢の大麻を焼却する等の国禁に触れぬよう」の注意を時の渡辺部長より忠告を受けた、牧口会長はその場では暫(しばら)く柔らかにお受したが、心中には次の様に考えられていた、当時の軍国主義者は、惟(ただ)神道と称して、日本は神国だ、神風が吹く、一億一心となつて神に祈れ、等々と呼びかけていた。少しでも逆う者があると、国賊だ、非国民だといつて、特高警察や憲兵のつけねらう所となつた、 もとより牧口会長は、神札を拝むべきではない、神は民族の祖先であり、報恩感謝の的であつて、信仰祈願すべきではないと、日蓮大聖人・日興上人の御正義を堂々と主張なされていた。 この頃一般日蓮宗に対して、御書の中に神や天皇をないがしろにする不敬の箇所があるとか、お曼荼羅(まんだら)の中に天照大神が小さく書いてあるのはけしからんというような、くだらない警告が発せられ、一部の日蓮宗では御書の一部を削ったり、お曼荼羅を改めるというような事件さえあつた。 こうして合同問題のもつれと、小笠原一派の叛逆、牧口会長の国家諌暁の強い主張等を背景とし、直接には牧口会長の祈伏が治安を害するといい、又神宮に対する不敬の態度があるとして、弾圧の準備が進められたから会長の応急策も巳に遅し、殊に十八年の四月には豆北の雪山荘を大善生活同志の本部とするの盛挙を為すほどに発展もしていたが、同じ頃から、学会幹部の本間直四郎、北村宇之松が経済違反の容疑で逮捕され、六月には陣野忠夫、有村勝次の両氏が学会活動の行き過ぎ(罰論)で逮捕され、七月六日には伊豆に御旅行中の牧口会長を始め、戸田理事長等が逮捕された。 それ以後幹部二十一名が各地で逮捕され、治安維持法違反、不敬罪との罪で獄中に責められた、牧口会長は逮捕されて一年半、十九年十一月に老衰と栄養失調のため七十四才で獄中に亡くなられた。 一方総本山は漸(ようや)く弾圧を免れたが、戦時体制に捲き込まれ、十九年十二月からは、兵隊の宿舎に客殿を提供せざるをえなくなり、大宮浅間神社の神籬(ひもろぎ)を寸時書院に祀るようの事もあつた、その為か、二十年六月十七日、兵隊の火の不始末から失火し、対面所、大奥、書院、客殿、六壺等の中心を焼き、第六十二世日恭猊下(にっきょう・げいか)は責を一身に負われてか、火中に無念の御遷化を遊ばされる不祥事を惹起(じゃっき)した。 戦事の激化とともに、留置場生活も異常の食糧難や不潔に陥り、残された留守家族も、企業整備、疎開、インフレ、統制配給、応召、勤労動員等々とあわたゞしい動きの中に益々生活難に陥り、或は世の白眼視に耐えかねて退転する者が多かつた。 最後に戸田理事長は二十年七月三日に保釈され、直ちに学会の再建にとりかかられた、裁判の結果、懲役の判決を受けた者もあつたが、敗戦とともに治安維持法が廃止され、神社に対する不敬罪は大赦により、大多数の者は免訴となつた。
by johsei1129
| 2025-07-16 10:20
| 富士宗学要集
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