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日蓮大聖人『御書』解説

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2021年 10月 29日

妙法蓮華経 信解品第四 (2)  訓読

   漢訳版

世尊、大富長者は即ち是れ如来なり、我等は皆仏子に似たり。如来常に、我等は為れ子なりと説きたまえり。世尊、我等三苦を以っての故に、生死の中に於いて諸の熱悩を受け、迷惑無知にして小法に楽著(ぎょうじゃく)せり。今日世尊、我等をして、思惟して、諸法戯論の糞を蠲除(げんじょ)せしめたもう。我等中に於いて、勤加精進して涅槃に至り、一日の価(あたい)を得たり。既に此れを得已って、心大いに歓喜して、自ら以って足れりと為す。便ち自ら謂(おも)いて言わく、
仏法の中に於て、勤めて精進するが故に、所得弘多(ぐた)なりと。然も世尊、先に我等が心弊欲に著し、小法を楽うを知しめして、便ち縦(ゆる)し捨てられて、為に汝等、当に如来の知見、宝蔵の分有るべしと分別したまわず。世尊、方便力を以って、如来の智慧を説きたもうに、我等仏に従いたてまつりて涅槃一日の価を得て、以って大いに得たりと為して、此の大乗に於いて、志求有ること無かりき。我等又、如来の智慧に因って、諸の菩薩の為に、開示演説せしかども、而も自ら此に於いて、志願有ること無し。所以は何ん。仏我等が心小法を楽うを知しめして、方便力を以って、我等に随って説きたもう。而も我等、真に是れ仏子なりと知らず。今我等方に知りぬ。世尊は仏の智慧に於いて、悋惜(りんじゃく)したもう所無しと。所以は何ん。我等昔より来、真に是れ仏子なれども、而も但小法を楽う。若し我等、大を楽うの心有らば、仏則ち我が為に、大乗の法を説きたまわん。今此の経の中に、唯一乗を説きたもう。而も昔、菩薩の前に於いて、声聞の小法を楽う者を毀訾(きし)したまえども、然も仏、実には大乗を以って教化したまえり是の故に我等説く、本心に悕求(けぐ)する所有ること無かりしかども、今、法王の大宝自然にして至れり。仏子の応に得べき所の如き者は、皆已に之を得たり。
爾の時に摩訶迦葉、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言さく、
我等今日 仏の音教を聞いて 

歓喜踊躍して 未曾有なることを得たり 

仏声聞 当に作仏することを得べしと説きたもう 

無上の宝聚 求めざるに自ら得たり
譬えば童子 幼稚無識にして 

父を捨てて逃逝(じょうぜい)して 遠く他土に到りぬ 

諸国に周流すること 五十余年
其の父憂念(うねん)して 四方に推求し
之を求むるに既に疲れて 一城に頓止す 

舎宅を造立して 五欲に自ら娯しむ
其の家巨いに富みて 諸の金銀 

硨磲碼碯(しゃこ・めのう) 真珠瑠璃多く 

象馬牛羊 輦輿(れんよ)車乗 

田業僮僕 人民衆多なり 

出入息利すること 乃ち他国に徧し 

商估賈人(しょうこ・こにん) 処として有らざること無し
千万億の衆 囲繞し恭敬し 

常に王者に 愛念せらるることを為 

群臣豪族 皆共に宗重し 

諸の縁を以っての故に 往来する者衆し 

豪富なること是の如くにして 大力勢有り
而も年朽邁(くまい)して 益(ますます)子を憂念す 

夙夜(しゅくや)に惟念すらく 死の時将に至らんとす 

癡子(ちし)我を捨てて 五十余年 

庫蔵の諸物 当に之を如何すべき
爾の時に窮子 衣食を求索して 

(さと)より邑に至り 国より国に至る 

或は得る所有り 或は得る所無し 

飢餓羸痩(るいしゅ)して 体に瘡癬(そうせん)を生ぜり
漸次に経歴して 父の住せる城に到りぬ 

傭賃(ゆうにん)展転して 遂に父の舎に至る
爾の時に長者 其の門内に於いて 

大宝帳を施して 師子の座に処し 

眷属囲繞し 諸人侍衛せり 

或は金銀宝物を 計算し 

財産を出内し 注記券疏する有り
窮子父の 豪貴尊厳なるを見て 

(おも)わく是れ国王か 若し是れ王と等しきかと 

驚怖して自ら怪む 何が故ぞ此に至れる
(ひそ)かに自ら念言すらく 我若し久しく住せば 

或は逼迫せられ 強いて駆って作さしめん 

是れを思惟し已って 馳走して去りぬ 

貧里に借問して 往いて傭作(ゆうさ)せんと欲す
長者是の時 師子の座に在って 

遙かに其の子を見て 黙して之を識る
即ち使者に勅して 追い捉え将いて来らしむ 

窮子驚き喚びて 迷悶して地に躃(たお)る 

是の人我を執う 必ず当に殺さるべし 

何ぞ衣食を用って 我をして此に至らしむる 

長者子の 愚癡狭劣にして 

我が言を信ぜず 是れ父なりと信ぜざるを知って
即ち方便を以って 更に余人の 

眇目矬陋(みょうもく・ざる)にして 威徳無き者を遣わす 

汝之に語って云うべし 当に相雇って 

諸の糞穢(ふんえ)を除(はら)わしむべし 倍して汝に価を与えんと 

窮子之を聞いて 歓喜し随い来りて 

為に糞穢を除い 諸の房舎を淨む
長者牖(まど)より 常に其の子を見て 

子の愚劣にして 楽って鄙事(ひじ)を為すを念う
於是に長者 弊垢(へいく)の衣を著 

除糞の器を執って 子の所に往到し 

方便して附近き 語って勤作せしむ 

既に汝が価を益し 並びに足に油を塗り 

飲食充足し 薦席厚暖(せんじゃく・こうなん)ならしめん 

是の如く苦言すらく 汝当に勤作すべし 

又以って輭語(なんご)すらく 若我が子の如くせん
長者智有って 漸く入出せしむ 

二十年を経て 家事を執作せしめ 

其に金銀 真珠頗棃(はり) 

諸物の出入を示して 皆知らしむれども 

猶門外に処し 草菴に止宿して 

自ら貧事を念う 我に此の物無しと 

父子の心 漸く已に曠大なるを知って
財物を与えんと欲して 即ち親族 

国王大臣 刹利居士を聚めて 

此の大衆に於いて 説く是れ我が子なり 

我を捨てて他行して 五十歳を経たり 

子を見てより来 已に二十年 

昔某の城に於いて 是の子を失いき 

周行し求索して 遂に此に来至せり 

凡の我が所有の 舎宅人民 

悉く以って之に付す 其の所用を恣(ほしいまま)にすべしと
子念わく昔は貧しくして 志意下劣なりき 

今は父の所に於いて 大いに珍宝 

並及に舎宅 一切の財物を獲たりと 

甚だ大いに歓喜して 未曾有なることを得るが如し


つづく


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by johsei1129 | 2021-10-29 15:37 | 法華経28品 並開結 | Trackback | Comments(0)


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