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日蓮大聖人『御書』解説

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2021年 10月 29日

妙法蓮華経 信解品第四 (1)  訓読

妙法蓮華経 信解品第四   漢訳版

爾の時に慧命須菩提、摩訶迦旃延、摩訶迦葉、摩訶目犍連、仏に従いたてまつりて、聞ける所の未曾有の法と、世尊の舎利弗に阿耨多羅三藐三菩提の記を授けたもうとに、希有の心を発し、歓喜踊躍す。
即ち座より起ちて衣服を整え、偏に右の肩を袒にし、右の膝を地に著け、一心に合掌し、曲躳恭敬し、尊顔を瞻仰して、仏に白して言さく、


我等僧の首に居し、年並びに朽邁(くまい)せり。
自ら已に涅槃を得て、堪任する所無しと謂いて、復阿耨多羅三藐三菩提を進求せず、世尊往昔の説法既に久し。我時に座に在って、身体疲懈(ひけ)し、但、空、無相、無作を念じて、菩薩の法の遊戯神通し、仏国土を浄め、衆生を成就するに於いて、心憙楽せざりき。
所以は何ん。世尊、我等をして三界を出でて、涅槃の証を得せしめたまえり。
又今我等、年已に朽邁して、仏の菩薩を教化したもう阿耨多羅三藐三菩提に於いて、一念好楽の心を生じき。
我等今仏前に於いて、声聞に阿耨多羅三藐三菩提の記を授けたもうを聞きて、心甚だ歓喜し、未曾有なることを得たり。謂(おも)わざりき、於今忽然に希有の法を聞くことを得んとは。深く自ら慶幸す、大善利を獲たりと。無量の珍宝、求めざるに自(おのずか)ら得たり。

世尊、我等今者楽わくは、譬喩を説いて、以って斯の義を明さん。譬えば人有って、年既に幼稚にして、父を捨てて逃逝(じょうぜい)、久しく他国に住して、或は十、二十より五十歳に至る。
年既に長大して、(ますま)す復窮困し、四方に馳騁して、以って衣食を求め、漸漸に遊行して、本国に遇い向かいぬ。
其の父先より来、子を求むるに得ずして、一城に中止す。其の家大いに富んで、財宝無量なり。金銀、瑠璃、珊瑚、琥珀、頗棃珠等、其の諸の倉庫に、悉く皆盈溢(よういつ)せり。多く僮僕、臣佐、吏民有って、象馬、車乗、牛羊(ごよう)無数なり。出入息利すること、乃ち他国に徧し。商估賈客(しょうこ・こきゃく)亦甚だ衆多なり。
時に貧窮(びんぐ)の子、諸の聚落に遊び、国邑を経歴して、逐に其の父の所止の城に到りぬ。

父毎に子を念う。子と離別して五十余年、而も未だ曾て、人に向って此の如き事を説かず。但自ら思惟して、心に悔恨(けこん)を懐く。自ら念わく、老朽して多く財物有り。金銀、珍宝、倉庫に盈溢すれども、子息あること無し。一旦に終没しなば、財物散失して委付する所無けん。
是を以って、慇懃(おんごん)に毎に其の子を憶う。復是の念を作さく、
我若し子を得て、財物を委付せば、坦然快楽にして、復憂慮無けん。
世尊、爾の時に、窮子傭賃(ぐうじ・ゆうにん)展転して、父の舎に遇い到りぬ。

門の側に住立して、遙かに其の父を見れば、師子の牀に踞して、宝几足を承け、諸の婆羅門、刹利、居士、皆恭敬し囲繞せり。真珠の瓔珞、価直千万なるを以って其の身を荘厳し、吏民、僮僕手に白払(びゃくほつ)を執って左右に侍立せり。覆うに宝帳を以ってし、諸の華旛を垂れ、香水を地に灑(そそ)ぎ、衆の名華を散じ、宝物を羅列して、出内取与す。是の如き等の種種の厳飾有って威徳特尊なり。
窮子、父の大力勢有るを見て、即ち恐怖を懐いて、此に来至せることを悔ゆ。竊(ひそ)かに是の念を作さく、
此れ或は是れ王か、或は是れ王と等しきか、我が傭力して物を得べき処に非ず。如かじ、貧里に往至して肆力地(しりきところ)有って衣食得易からんには。若し久しく此に住せば、或は逼迫(ひっぱく)せられん。強いて我をして作さしめんかと。
是の念を作し已って、疾く走って去りぬ。

時に富める長者師子の座に於いて、子を見て便ち識りぬ。心大いに歓喜して、即ち是の念を作さく。
我が財物、庫蔵、今付する所有り。我常に此の子を思念すれども、之れを見るに由無し。而るを忽ちに自ら来れり。甚だ我が願い適えり。我年朽ちたりと雖も猶故貪惜(とんじゃく)す。
即ち傍人を遣わして、急に追うて将(ひき)いて還らしむ。爾の時に使者、疾く走り往いて捉う。
窮子驚愕して、怨なりと称して大いに喚ばう。
我相犯さず、何ぞ捉(とら)えらるることを為る。
使者之れを執()らうること、愈(いよいよ)急にして、強いて牽将(ひき)いて還る。

時に窮子自ら念わく
罪無くして囚執(とら)えらる。此れ必定して死せん。転た更に惶怖し悶絶して地に躃(たお)る。
父遙かに之を見て、使に語って言わく、
此の人を須(もち)いじ。強いて将いて来ること勿れ。冷水を以って面に灑いで、醒悟することを得せしめよ。復与し語ること莫れ。
所以は何ん。父其の子の志意下劣なるを知り、自ら豪貴にして、子の為に難る所を知って、審かに是れ子なりと知れども、方便を以って他人に語りて、是れ我か子なりと云わず。

使者之に語らく、
我今汝を放す。意の所趣に随え。
窮子歓喜して未曾有なることを得て、地より起きて貧里に往至して、以って衣食を求む。
爾の時に長者、将に其の子を誘引せんと欲して、方便を設けて、密かに二人の形色憔悴(ぎょうしき・しょうすい)して、威徳無き者を遣わす。
汝彼に詣いて、徐(ようや)く窮子に語るべし。此に作処有り、倍して汝に直を与えん。窮子若し許さば、将いて来り作さしめよ。若し何の所作をか欲すと言わば、便ち之に語るべし。汝を雇うことは、糞(あくた)を除(はら)わしめんとなり。我等二人、亦汝と共に作さんと。

時に二人の使人、即ち窮子を求むるに、既已に之を得て具さに上の事を陳ぶ。
爾の時に窮子、先ず其の価を取って、尋()いで与に糞を除う。其の父、子を見て、悲しんで之を怪しむ。
又他日を以って、窻牖(そうゆ)の中より遙かに子の身を見れば、羸痩憔悴(しゅそう・しょうすい)し、糞土塵坌汗穢(ふんど・じんぽん・わえ)不浄なり。即ち瓔珞細輭(ようらく・さいなん)の上服、厳飾の具を脱いで、更に麤弊垢膩(そへいくに)の衣を著、塵土に身を坌(けが)し、右の手に除糞の器を執持して、畏るる所有るに状(かたど)れり。
諸の作人に語らく、

汝等勤作して、懈息(けそく)すること得ること勿れと。
方便を以っての故に、其の子に近づくことを得つ。後に復告げて言わく、
(つたな)や、男子、汝常に此にして作せ、復余(また・ほか)に去ること勿れ。当に汝に価を加うべし。諸の所須有る盆器、米麺、塩酢の属あり。自ら疑い難(はばか)ること莫れ。亦老弊の使人有り、須いば相給わん。好く自ら意(こころ)を安くせよ。我汝が父の如し。復憂慮すること勿れ。所以は何ん。我年老大にして、汝小壮なり。汝常に作さん時、欺怠(ごたい)、瞋恨(しんこん)、怨言有ること無かれ。都べて汝が此の諸悪有らんを、余の作人の如くに見じ。今より已後、所生の子の如くせん。
即時に長者、更に与に字を作って、之を名づけて児と為す。爾の時に窮子、此の遇を欣ぶと雖も、猶故(なお)自ら客作の賤人と謂えり。是れに由るが故に、二十年の中に於いて常に糞を除わしむ。是を過ぎて已後、心相体信して入出に難(はばか)り無し。然も其の所止は猶本処に在り。

世尊爾の時に長者疾(やまい)有って、自ら将に死せんこと久しからじと知って、窮子に語って言わく、

我今多く、金銀、珍宝有って倉庫に盈溢(よういつ)せり。其の中の多少、応に取与すべき所、汝悉く之を知れ、我が心是の如し。当に此の意を体るべし。所以は何ん。今我と汝と便ち為異らず。宜しく用心を加うべし。漏失せしむること無かれ。
爾の時に窮子、即ち教勅を受けて、衆物の金銀珍宝、及び諸の庫蔵を領知すれども、而も一餐(いっさん)を稀取(けしゅ)するの意無し。然も其の所止は、故本処に在り。下劣の心、亦未だ捨つること能わず。復少時を経て、父、子の意漸く已に通泰して、大志を成就し、自ら先の心を鄙(いや)しんずと知って、終らんと欲する時に臨んで、其の子に命じ、並に親族、国王、大臣、刹利、居士を会むるに、皆悉く已に集まりぬ。即ち自ら宣言すらく、

諸君当に知るべし。此は是れ我が子なり。我が所生なり。某の城中に於いて、吾を捨てて逃走して、伶俾(りょうびょう)辛苦すること五十余年。其の本の字は某。我が名は某甲。昔本城に在って、憂を懐いて推(たず)ね覓(もと)めき。忽ちに此の間に於いて、遇い会うて之を得たり。此れ実に我が子なり。我実に其の父なり。
今吾が所有の一切の財物は、皆是れ子の有なり。先に出内する所は、是れ子の所知なり。

世尊、是の時窮子(ぐうじ)、父の此の言を聞いて、即ち大いに歓喜して、未曾有なることを得て、是の念を作さく、
我本心に、稀求する所有ること無かりき。今此の宝蔵、自然にして至りぬ、といわんが若し。


つづく


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by johsei1129 | 2021-10-29 15:32 | 法華経28品 並開結 | Trackback | Comments(0)


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