【妙音品三箇の大事】
第三 八万四千七宝鉢の事
御義口伝に云く、此の文は妙音菩薩、雲雷音王仏に奉る所の供養の鉢なり。
今、日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者は八万四千の鉢を三世の諸仏に供養し奉るなり。八万四千とは我等が八万四千の塵労(じんろう)なり。
南無妙法蓮華経と唱え奉る処にて八万四千の法門と顕るるなり。
法華経の文字は開結二経(注)を合しては八万四千なり。又云く八とは八苦なり、四とは生老病死なり。七宝とは頭上の七穴(注)なり。鉢とは智器なり。
妙法の智水を受持するを以て鉢とは心得可きなり云云。
注
開結二経
妙法蓮華経の開教である無量義経、結経である仏説観普賢菩薩行法経の二経。
釈尊は無量義経で「四十余四年未顕真実」と断じ、その後、妙法蓮華経を説き始めた。
その時の状況が妙法蓮華経序品第一で下記の様に記されている。
[原文]
爾時世尊 四衆囲繞 供養恭敬 尊重讃歎
為諸菩薩 説大乗経 名無量義 教菩薩法
仏所護念 仏説此経已 結跏趺坐 入於無量義処三昧
[和訳]
その時世尊は、 四衆にとりかこまれ、 供養、恭敬、尊重、讃歎せられし、
諸の菩薩の為に、無量義、菩薩の教法、仏所護念と名づけられた大乗経を説き給う。
仏、此の経を説き已って、結加趺坐(けっかふざ・注)し、無量義処三昧に入り、身心は動ぜず。
仏説普賢菩薩勧発品(普賢経)
インド中部の毘舎離国で釈尊が弟子達に「三ヵ月後に私は涅槃(滅度)する」と説くと、釈尊の従者阿難は「仏が世を去ったあとどのようにして悟りを得る事ができるか」と問い、それについて答えたのが結経である普賢経となる。
尚、日蓮大聖人は普賢経で説かれる「普賢菩薩」について御義口伝【普賢品六箇の大事】で次の様に解き明かされておられます。
『第二 若法華経 行閻浮提の事
御義口伝に云く、此の法華経を閻浮提に行ずることは普賢菩薩の威神の力に依るなり。此の経の広宣流布することは普賢菩薩の守護なるべきなり云云』と。
頭上の七穴
眼二つ、耳二つ、鼻二つ、口一つの七つの穴を意味する。
結加趺坐(けっかふざ)
仏教とヨーガにある瞑想する際の座法。
結加趺坐の一例