2017年 11月 17日
日興の跡を継いだ日目も師日蓮の意思を厳格に受け継いだ。鎌倉の武家・京の公家へと為政者への諌暁を続け、その回数は実に四十二度にも及んだ。 正安元年(一二九九)六月の奏聞のときには、永年の願いであった公場対決が実現し、京都六波羅探題において、北条宗宣(十一代執権)が帰依する念仏僧・十宗房道智を完膚なきまでに論破する。 元弘三年(正慶二年一三三三年)には百五十年間続いた鎌倉幕府が滅亡し、京都に天皇を頂点とする政治体制が敷かれることになった。これは日本の国主が、北条一門が担った執権から天皇に遷移したことを意味していた。 日目上人はすでに七十四歳という高齢だったが、今こそ天奏すべきとの決意を固め、翌十一月、弟子の日尊、日郷を供として京都へ向かった。しかし途中、美濃の垂井(現在の岐阜県垂井町)の宿に至って病床に伏され、日尊、日郷に天奏の完遂と、後継者の日道上人への遺言を残して十一月十五日、七十四歳で入滅する。 その後、日尊は日目の遺命を守り上洛。また日郷は日目の遺骨を抱いて十二月に大石寺へ帰山し、下之坊に埋葬する。日尊は京都に残り、翌年の建武元年(一三三四年)に代奏を果たす。 以下に日目の天奏の申状を記す。
一巻 立正安国論 祖師日蓮聖人文応元年の勘文 右、謹んで案内を検えたるに、一代の説教は独り釈尊の遺訓なり、取捨宜しく仏意に任すベし、三時の弘経は則ち如来の告勅なり、進退全く人力に非ず。抑一万余宇の寺塔を建立して、恒例の講経陵夷を致さず、三千余の社壇を崇めて如在の礼奠怠懈せしむることなし。然りと雖も顕教密教の護持も叶わずして、国土の災難日に随って増長し、大法秘法の祈祷も験なく、自他の反逆歳を逐うて強盛なり、神慮測られず仏意思い難し。倩微管を傾け聊か経文を披きたるに、仏滅後二千余年の間、正像末の三時流通の程、迦葉・竜樹・天台・伝教の残したもうところの秘法三つあり、所謂法華本門の本尊と戒壇と妙法蓮華経の五字となり。之を信敬せらるれば、天下の安全を致し国中の逆徒を鎮めん、此の条如来の金言分明なり大師の解釈炳焉たり。就中我が朝は是れ神州なり、神は非礼を受けず、三界は皆仏国なり、仏は則ち謗法を誡む。然れば則ち爾前迹門の謗法を退治せば、仏も慶び神も慶ぶ。法華本門の正法を立てらるれば、人も栄え国も栄えん。望み請う、殊に天恩を蒙り諸宗の悪法を棄捐せられ、一乗妙典を崇敬せらるれば、金言しかも愆たず、妙法の唱え閻浮に絶えず、玉体恙無うして宝祚の境、天地と疆無けん。日目、先師の地望を遂げんがために、後日の天奏に達せしむ。誠惶誠恐謹んで言す。 元弘三年十一月 日目 この日蓮・日興の精神をあやまたず記した申状は、ついに日目の手で届けられることはなかった。天奏を目前にして、臨終を迎える心情はどうだったのか。日目を看取った日郷が、門流の者に語った伝承をもとに綴った記録がのこる。 目上御遺言に曰く、此の申状奏せずして終に臨終す。此の土の受生所用無しと雖も、今一度人間に生れ、此の状を奏すべし。若し此の状奏聞の人、未来に於いて之有らば、日目が再来と知るべし。 富要四巻「申状見聞」 訳「この申状を奏進できず、ついに臨終を迎えることは、まことに無念の極みである。此の土に生を受けて以来、自分には取り立てての功績はなかったが、今一度人間に生を受け、なんとしてもこの申状を奏したい。もしもこの状を奏聞する者が将来・未来に現われたならば、日目の再来と知るべきである」 いらい日蓮正宗では広宣流布の代に、日目上人が現われるという言い伝えがある。 最終章 日本の仏法、月氏へ流れる につづく
by johsei1129
| 2017-11-17 21:22
| 小説 日蓮の生涯 下
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