2016年 06月 25日
一 「略開」の事 啓運抄の三十九に、此の一意に二類を出だす。「一には略開の文を聞いて、弥勒等の菩薩は但『心生疑惑、怪未曽有』するのみなり、全く等妙に入るには非ざるなり。又其の得道の姿如何。然れば則ち大菩薩等、等妙に入ると判じたもうは不審なり。義に云く、此の品は略開、次の品は広開。分別品に云わく『仏の寿量の長遠なる事を聞き大饒益を得たり』と云うなり。此の品は疑惑までなり。此の分は正機転入に約するなり。而も略を聞いて等妙に入るも有るべきなり。心に疑惑を生ずるは始得無生及び未得の者なり。但し弥勒が『無数の菩薩、心に疑惑を生ず』と云うは、此等の衆に代わって疑いを生ずるなり。此の始得等の人が、寿量に至って初めて断疑生信して増進するなり。其の外の大菩薩は広開を待つべからざるなり。開目抄の上に此くの如し。 次に脱する姿を云わば、略開の中に『我伽耶に於て』等と云って『久遠』と云わざるなり。仏意は今日の伽耶即ち昔の伽耶、昔の伽耶即ち今日の成道伽耶にて説かるるなり。全体、始本不二の心なり。而も弥勒は之を聞いて此の旨を得、されども不知の様にもてなして、此の伽耶を始覚今日の伽耶と疑うなり。之に依って広開の時、『一切の天人』等と説きたもうなり。此の時、久遠を顕わし始覚本覚を顕して、近成遠成も出来するなり」已上。 啓蒙に此の義を料簡して「凡そ利鈍の両機、広略を歴て得道する義なり。然れども今広開は一向に滅後の為と判ずるに対せんが為に、在世の脱を略開にぬしづけ給うなるべし云云。さて広略に付いて啓運抄に四つの義難を出だしたり。一は天台は略開と動執とを一科とせり。何ぞ今二つを別かつや。二に動執生疑は略開なり。何ぞ広開に属するや。三は此の略広の開は倶に在世の脱の為なり、四は観心本尊抄に『彼は一品二半、此れは但題目の五字なり』と、今何ぞ相違するや。断じて云く、第一の難は経文に其の意あり。第二の難は観心本尊抄の意なり。今の文は略を以て一向脱するに対し、広を以て一向滅後に約して判ず、往いて同じきなり。彼の文に云わく『本門は序正流通倶に末法の始めを以て詮と為す』と。又云わく『本門を以て之を論ずれば』等云云。此等の御文体は序の始めより終わりに至るまで、末法の為と判じたもうなり。此くの如く二途ある事は、本尊抄の一往再往の意なり。然れば再往の深意は、本門三段、総じて一部の法門は皆我等が為ぞと云う事なり。此の法門が釈尊出世の本意、滅後に於て聖人出世の本意の法門なり」と。啓蒙に之を引いて云く「此の義分明なり。此の上に助言を加えば文句に総別両向の釈あり。総じては断疑生信に対して略開に属し、又機応の中には応に属する故なり。別しては『是等の衆を教化せり』の文までを略開と取るなり。此くの如き経文、従容なれば両属不定なり。大師と宗祖との異なり」と。 私にいわく、大疑は三つあり。一に略開を以て脱と為し、広開を以て一向滅後とする事。二には動執生疑の文は略開の内なることを広開と名づくると天台と相違なる事。三は本尊抄の一往再往の判、今の二意と相違に似たることか。此の三つの疑いあり。 啓運抄の意は、大菩薩は略開を聞いて得入すべし。始得未得の者は此の品の生疑広開の時に得脱するなり。今は広開を以て滅後の為と判ずるに対せんが為に、在世の脱を以て略開にぬしづけ給うなり。さて科目の相違は経意に任する処なり。さて彼是れの相違は、彼の文は在世の一品二半と末法の始めの題目と相対して判ぜり。されども此の文往いて同じき事なり。 今案ずるに云わく、本門の説法に二意有り。一は久遠下種、中間為熟、今日為脱の為なり。二には末法本未有善の衆生の為なり。観心本尊抄に一往再往を以て判じ給うと、今の本門に二意有りと判ずと、大旨此れ同じきなり。されども文義は異なり。其の上、彼の文には次下に種脱相対して勝劣を判じたもう。今の文には此の判之無し。
by johsei1129
| 2016-06-25 15:04
| 日寛上人 御書文段
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