【兵衛志殿(ひょうえ・さかんどの)御返事】
■出筆時期:建治三年(1276)六月十八日 五十六歳御作
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本抄は短い御消息ですが、池上兄弟の弟・池上宗長より青鳧五貫文をご供養されたことへの返書で、大聖人は「唱え奉る南無妙法蓮華経一返の事」と記され宗長の志に答えられておられます。
尚、青鳧五貫文とは当時の価値でおよそお米五石(約750kg)位となり、金銭としては大きな供養であると考えられます。池上兄弟の父は鎌倉幕府作事奉行(建築・土木の長官)で、広大な所領をもち経済的にはかなり恵まれていたと思われます。また母方の叔父が六老僧の一人日昭で、同じく母方の従兄弟に六老僧の一人日朗がおります。
■ご真筆:京都市 本圀寺所蔵。
【兵衛志殿御返事 本文】
青鳧(せいふ)五貫文
送り給び了んぬ。唱え奉る
南無妙法蓮華
経一返の事、恐恐。
六月十八日 日 蓮 花 押
兵衛志殿御返事