【西山殿御返事(雪漆御書)】
■出筆時期:建治二年(1275)十一月七日 五十五歳御作
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本抄は駿河国西山郷の地頭で強信徒の西山殿から青鳧五貫文を供養されたことへの返書となっております。
大聖人は、雪と漆(うるし)が他の物に染められず白、黒の色を保つが人の心は移ろい易い、しかし「法華経にそめられ奉れば必ず仏になる<中略>いかにも御信心をば雪漆のごとくに御もち有るべく候」と法華経への信仰を貫くよう励まされておられます。
尚、青鳧五貫文とは当時の価値で、およそお米五石(約750kg)位となります。
■ご真筆:現存しておりません。
青鳧(せいふ)五貫文給い候い畢んぬ。
夫れ雪至つて白ければそ(染)むるにそめられず、漆至つてくろければしろくなる事なし。
此れよりうつりやすきは人の心なり、善悪にそめられ候。
真言・禅・念仏宗等の邪悪の者にそめられぬれば必ず地獄にをつ。
法華経にそめられ奉れば必ず仏になる。経に云く「諸法実相」云云、又云く「若人不信乃至入阿鼻獄」云云。
いかにも御信心をば雪漆のごとくに御もち有るべく候、恐恐。
建治二年丙子 日 蓮 花 押
西山殿御返事