【芋 一 駄 御 書】
■出筆時期:建治元年(1275)八月十四日 五十四歳御作。
■出筆場所:身延山中の草庵にて。
■出筆の経緯:本抄の対告衆は不明ですが、同様の内容の御書が在るため南条時光ではないかという説もあります。大聖人は、ご供養された、いも、はじかみ(生姜)は身延の地では見ることがない貴重な食べ物であり、あなたの志は法華経に申し上げたので、釈迦仏は必ず承知していることでしょう、と称えられておられます。
■ご真筆:富士大石寺所蔵(一般非公開)。
【芋 一 駄 御 書 本文】
いも(芋)一駄・はじかみ五十ぱ(把)をくりたびて候。
この・みのぶのやまと申し候は・にしは・しらね(白根)のたけ(嶽)・つねにゆきをみる。ひんがしには・てんし(天子)のたけ・つねにひ(日)をみる。
きた(北)は・みのぶのたけ、みなみは・たかとり(鷹取)のたけ、四山のあひ(間)・はこの・そこ(箱の底)のごとし。
いぬゐ(戌亥・北西)のすみ(角)より・かは(河)ながれて・たつみ(辰巳・東南)のすみにむかう。
かかるいみじきところ、みね(峰)には・せひのこへ(蝉の声)、たに(谷)には・さる(猿)のさけび、木はあし(芦)のごとし、くさ(草)はあめ(雨)ににたり。
しかれども・かかるいも(芋)はみ(見)へ候はず。はじかみは・を(生)ひず。いし(石)に・にて少しまもり・やわらかなり。くさ(草)に・にて・くさよりもあぢ(味)あり。
法華経に申しあげ候ひぬれば、御心ざしはさだめて釈迦仏しろしめしぬらん。恐恐謹言。
八月十四日 日 蓮 花押
御返事