【窪尼御前御返事】
■出筆時期:弘安二年(1279)十二月二十七日 五十八歳御作
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本書を記されたのは年の瀬の十二月二十七日です。窪尼は新年に合わせて祝いの品々を大聖人の元へ届けられ、大聖人は直ぐに返書として本消息を送られたと思われます。
大聖人は文中で「御心ざし・さきざき(先々)かき(書き)つくして・ふで(筆)もつひ・ゆび(指)もたたぬ」と記され、窪尼がいかに頻繁に四季折々にご供養の品を届けられているかを物語っております。
さらに文末では「法華経の一字供養の功徳は知りがたしとこそ仏はとかせ給いて候へ。此れをもつて御心へあるべし」と法華経信仰を貫くよう励まされておられます。
■ご真筆:現存しておりません。古写本:日興上人筆:富士大石寺所蔵。
【窪尼御前御返事 本文】
十字(むしもち)五十まい、くしがき一れん、あめをけ一(ひとつ)送り給い了んぬ。御心ざし・さきざき・かきつくして・ふで(筆)も・つ(禿)び、ゆび(指)もたたぬ。
三千大千世界に七日ふる雨のかず(数)はかずへつくしてん、十方世界の大地のちり(塵)は知る人もありなん。
法華経の一字供養の功徳は知りがたしとこそ仏はとかせ給いて候へ。此れをもつて御心へあるべし。恐恐謹言。
十二月二十七日 日 蓮 花 押
くぼの尼御前御返事