【道妙禅門御書】
■出筆時期:建治二年(1276年)八月十日 五十五歳御作。
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本消息は妙一尼が身延の大聖人を訪れた時、道妙の父親の病状回復の願いを申し出たことへの返書となっております。大聖人は祈祷には顕祈顕応・顕祈冥応・冥祈冥応・冥祈顕応の四種があるが「只肝要は此の経の信心を致し給い候はば現当の所願満足有る可く候」と諭されるとともに、妙一尼の身延への見参を称え、巻物一巻を持たせたのでこれを見てくださいと指導をされておられます。道妙禅門の名が御書に出てくるのは本消息だけですが、信徒一人一人の願いに答えられている大聖人の振る舞いは「一切衆生の異の苦を受くるは悉く是れ日蓮一人の苦なるべし」そのものであると拝されます。
尚、道妙禅門は一説では妙一尼の家人ではないかと伝えられておりますが、詳細は不明です。
■ご真筆:現存しておりません。
【道妙禅門御書 本文】
御親父祈祷の事承り候間、仏前にて祈念申すべく候。
祈祷に於ては顕祈顕応・顕祈冥応・冥祈冥応・冥祈顕応の祈祷有りと雖も、只肝要は此の経の信心を致し給い候はば、現当の所願満足有る可く候。
法華
第三に云く「魔及び魔民有りと雖も皆仏法を護る」と。
第七に云く「病即ち消滅して不老不死ならん」との金言、之を疑う可からず。
妙一尼御前(ごぜ)当山参詣有り難く候、巻物一巻之を進(まい)らせ候、披見有るべく候、南無妙法蓮華経。
八月十日 日蓮 花押
道妙禅門