【弁殿御消息】
■出筆時期:文永一二年(1275年)三月十日 五四歳御作
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:大聖人はこの消息を記された丁度三ヶ月後の六月十日に、御書五大部の中で最も長文の全五巻百十紙の『撰時抄』を書き上げておられます。
恐らく本消息はそのための資料として、天台の法華玄義六の本末(全て)、法華文句十、その他の疏(しょ)等を身延の草庵に持参するよう弁殿(のちの六老僧の一人日昭)に依頼した書であると思われます。
尚、
『撰時抄』には天台の法華玄義、法華文句について記された下記の御文がございます。
【疑つて云く正法一千年の論師の内心には法華経の実義の顕密の諸経に超過してあるよしは・しろしめしながら・外には宣説せずして但権大乗計りを宣べさせ給うことは・しかるべしとはをぼへねども、其の義はすこしきこえ候いぬ。像法一千年の半ばに天台智者大師・出現して題目の妙法蓮華経の五字を玄義十巻一千枚にかきつくし、文句十巻には始め如是我聞(にょぜがもん)より終り作礼而去(さらいにこ)にいたるまで一字一句に因縁・約教・本迹・観心の四の釈をならべて又一千枚に尽し給う。已上玄義・文句の二十巻には一切経の心を江河として法華経を大海にたとえ、十方界の仏法の露・一しずくも漏らさず妙法蓮華経の大海に入れさせ給いぬ】
■ご真筆:東京都 池上本門寺所蔵。
[弁殿御消息 本文]
千観内供(ないぐ)の五味義
盂蘭経の疏(しょ)
玄義六の本末、
御随身有るべし。
文句十、少輔殿へ
御借用有るべし。
恐々謹言。
三月十日 日 蓮 花押
弁殿
[撰時抄 全五巻:玉沢 妙法華寺所蔵]