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日蓮大聖人『御書』解説

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2015年 11月 19日

撰時抄愚記 上終 本門の本尊を信ぜずして題目を唱うるは、手なくして宝山に入るに似たり

 十一月十五日

一 此の法門を申さん事は経文に候へば等

問う、(まさ)しく(いず)れの経文に()りや。

答う、此れは是れ第一の秘事なり。容易(ようい)に君に向かって説かず。

重ねて問うて云く、説かざれば(すなわ)ち聞かず、聞かざれば則ち信ぜず、信ぜざれば則ち行ぜず、行ぜざれば如何(いかん)清涼(しょうりょう)()に進趣せんや。

(しか)らば(すなわ)ち一文を示さん。(なんじ)、聞いて深く之を信ぜよ。本因(ほんにん)(みょう)の文に云く「()本行(ほんぎょう)菩薩道、(しょ)(じょう)寿命(じゅみょう)」と云云。「我」とは釈迦如来なり。「本」とは五百塵点劫(じんてんごう)当初(そのかみ)凡夫(ぼんぷ)の御時なり。「行」とは即ち本時の行妙なり。「菩薩」は是れ因人、(また)位妙を顕すなり。()(みょう)は即ち本時の智妙なり。智には必ず境あり。即ち是れ境妙なり。六重の本迹の第二の理本、(これ)を思い合わすべし。

(しばら)く天台に(じゅん)ずるに、此の一句の文に、本因の四妙、(あたか)も明月の如し。
(まさ)に知るべし、四妙とは即ち是れ三大秘法なり。(いw)く、境妙は即ち是れ本門の本尊なり。智妙・行妙は本門の題目なり。位妙は是れ本門の戒壇を表するなり。何となれば位は是れ()()の義なり。故に妙楽の云く「位は久しく()すべし」等云云。戒壇も(また)是れ本尊可居の処なり。(あに)位妙は戒壇を表するに非ずや。故に知んぬ、四妙とは(すなわ)ち是れ三大秘法なり。

(しばら)く開合あり。謂く、天台は本門の題目を開いて智行の二妙と為す。宗祖は智行の二妙を合せて本門の題目と()す。故に本門の題目は必ず智行の二義を具す。智は(いわ)く、信心なり。信を以て()()うる故なり。故に本門の本尊を信じて南無妙法蓮華経と唱うるを第三の本門の題目と名づくるなり。文証(もんしょう)は広く余処(よそ)に引く。(こころざし)らん人は(きた)って之を尋ぬべし。

()し本門の本尊を信ぜずして南無妙法蓮華経と唱うるは、(なお)宝山の空手(くうしゅ)に似たり。諸流の心地、(これ)を思量すべし。(さいわい)なるかな(よろこば)しいかな、(はげ)むべし、(つと)むべし云云。

一 (ただ)し此の法門には()ず三つの大事あり

(すなわ)ち禅・念仏・真言を以て(きょう)(ごう)に折伏するを「三つの大事」と為したもうなり。

(いわ)く、此の三宗は日本国に充満して、上一人より下万人に至るまで、渇仰(かつごう)すること年()り、信心すること日に(あら)たなり。(しか)るを折伏して念仏無間(むけん)・禅天魔・真言亡国と云わんは、(あに)大事の中の大事に非ずや。下の文に云く「裸形(あかはだか)にて大火に入るはやす()し(乃至)日本国にして()の法門を立てんは大事なるべし」と云うは是れなり。又、三宗の謗法の根元を(ただ)す、故に是れ大事なり。下二十・八ヲ

一 大海は広しと雖も死骸(しがい)とど()めず

涅槃(ねはん)経三十二十八の、大海の八不思議の中の第七の不思議なり。経の意は闡提(せんだい)・四重・五逆の謗法の者に(たと)うるなり。

一 大地は厚しと(いえど)も不孝の者をば()せず

四十華厳第十二巻・普賢行願品の文なり。録外(ろくげ)第四巻二十

一 或は座主(ざす)

「座主」は叡山(えいざん)なり。「御室(おむろ)」は仁和寺(にんなじ)なり。「長吏(ちょうり)」は三井寺(みいでら)なり。「検校(けんぎょう)」は高野(こうや)なり。並びに是れ真言なり。

一 ()内侍所(ないしどころ)

啓蒙(けいもう)に諸文を引く、()いて見よ。(また)釈書の十七・十七、太平剣の巻十二、盛衰記四十四の巻、往いて見よ。(けだ)し此等の文に三種の神器、略して()相を知らん。太平記の二十五・八。

神境(みかがみ)(じん)(かい)」とは人王六十二代村上天皇の天徳四年(960)庚申(かのえさる)九月二十三日()(こく)内裏(だいり)災上の時、(かい)(じん)()れり。(しか)るに盛衰記の四十四・十五にも、此の焼亡の時、神鏡(みかがみ)飛上って()殿(でん)桜樹(おうじゅ)(かか)る、小野宮(おののみや)大臣(おとど)実頼(さねより)(そで)()けて損ずること無し等云云。世雄房(せおうぼう)云く、此の説有りと雖も、僻事(ひがごと)にて実無しと、神皇(じんのう)正統(しょうとう)()下巻に見ゆ云云。

「宝剣海に入る」とは八十一代安徳帝の文治元年(1185)乙巳(きのとみ)三月二十四日、西海に没する時、(とも)湮淪(いんりん)して滅す云云、盛衰記の四十三・十二。宝剣を竜宮に取り返すと()う事、盛衰の四十四・七丁にあり。伊勢(いせ)の国より宝剣を(まい)らす事、太平記の二十五・六。

一 五大尊。

東方の金剛(こんごう)(しゅ)菩薩、南方の金剛宝菩薩、西方の金剛利菩薩、北方の金剛夜叉(やしゃ)菩薩、中央の金剛()()(みっ)()菩薩云云。
 

下巻につづく


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by johsei1129 | 2015-11-19 20:32 | 日寛上人 御書文段 | Trackback | Comments(0)


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