2019年 11月 03日
【富木殿御書】 ■出筆時期:建治三年(1277年)八月二十三日 五十六歳御作 ■出筆場所:身延山中 草庵にて。 ■執筆の経緯:この時期、蒙古の再来襲が確実視される中、真言亡国の念を強めた大聖人は、富木常忍他信徒に宛てて本書を送られた。大聖人は文中で「畏るべきは深法を謗ずると及び謗法の知識となり。決定(けつじょう)して人をして畏るべき阿鼻獄に入らしむ」と記されるともに「今日本国の八宗並びに浄土・禅宗等の四衆<中略>皆一人も無く弘法・慈覚・智証の三大師の末孫・檀越なり」と記し、弘法・慈覚・智証こそ法華経謗法の根幹であると断じておられます。 さらに文末では門下の信徒一同に対し「此等の意を以て之を案ずるに、我が門家は夜は眠りを断ち、昼は暇(いとま)を止めて之を案ぜよ、一生空しく過して万歳悔ゆること勿れ」と生涯、破邪顕正を案ずることを厳命されておられます。 この大聖人の思いは日興上人に引き継がれ、さらに現代の我々弟子・信徒に対する指南でもあると拝されます。 ■ご真筆:中山法華経寺所蔵。 [真筆本文(第七紙):下記及び文中緑字箇所] 弘法之御弟子実慧・真済・真 雅等数百人 並八宗十宗等 大師先徳 如日与日月与月与 星与星並出既経歴四百 余年。此等人々一人 不疑此義。 汝以何智難之云云。 以此等意案之 我門家 夜断眠 昼止暇案之。 一生空過万歳勿悔。 恐恐謹言。 [富木殿御書 本文] 妙法蓮華経の第二に云く「若し人信ぜずして此の経を毀謗し、経を読誦し書持すること有らん者を見て軽賤憎嫉(きょうせんぞうしつ)して結恨を懐かん。其の人命終して阿鼻獄に入らん・乃至是の如く展転して無数劫に至らん」第七に云く「千劫阿鼻獄に於てす」第三に云く「三千塵点」第六に云く「五百塵点劫」等云云。涅槃経に云く「悪象の為に殺されては三悪に至らず、悪友の為に殺されては必ず三悪に至る」等云云。 賢慧(けんね)菩薩の法性論に云く「愚にして正法を信ぜず・邪見及び傲慢なるは過去の謗法の障(さわ)りなり。不了義に執着して供養恭敬に著し・唯邪法を見て善知識に遠離して謗法者の小乗の法に楽著(ぎょうじゃく)する、是(かく)の如き等の衆生に親近して大乗を信ぜず。故に諸仏の法を謗ず。智者は怨家(おんけ)・蛇・火・毒・因陀羅・霹靂(へきれき)・刀杖(とうじょう)諸の悪獣・虎狼・師子等を畏るべからず。彼は但能く命を断じて・人をして畏るべき阿鼻獄に入らしむること能わず。畏るべきは深法を謗ずると及び謗法の知識となり。決定(けつじょう)して人をして畏るべき阿鼻獄に入らしむ。悪知識に近づきて・悪心にして仏の血を出だし及び父母を殺害し、諸の聖人の命を断じ、和合僧を破壊し及び諸の善根を断ずると雖も、念を正法に繋(つな)ぐるを以て能く彼の処を解脱せん。若し復余人有つて甚深の法を誹謗せば、彼の人無量劫にも解脱を得べからず。若し人衆生をして是の如きの法を覚信せしめば彼は是(これ)我が父母亦是れ善知識なり。彼の人は是智者なり。如来の滅後に邪見顛倒を廻(めぐら)して正道に入らしむるを以ての故に三宝清浄の信・菩提功徳の業(ごう)なり」等云云。 竜樹菩薩の菩提資糧論に云く「五無間の業を説きたもう乃至若し未解(みげ)の深法(じんぽう)に於て執着を起せるは○彼の前の五無間等の罪聚(ざいじゅ)に之を比するに百分にしても及ばず」云云。 夫れ賢人は安きに居て危ふきを歎き、佞人(ねいじん)は危きに居て安きを歎く。大火は小水を畏怖し・大樹は小鳥に値いて枝を折らる。智人は恐怖すべし、大乗を謗ずる故に。天親菩薩は舌を切らんと云い、馬鳴菩薩は頭を刎ねんと願い、吉蔵大師は身を肉橋と為し、玄奘三蔵は此れを霊地に占い、不空三蔵は疑いを天竺に決し、伝教大師は此れを異域に求む、皆上に挙ぐる所は経論を守護する故か。 今日本国の八宗並びに浄土・禅宗等の四衆・上(かみ)主上・上皇より下(しも)臣下万民に至るまで、皆一人も無く弘法・慈覚・智証の三大師の末孫・檀越(たんのつ)なり。 円仁・慈覚大師云く「故に彼と異なり」円珍・智証大師云く「華厳・法華を大日経に望むれば戯論と為す」空海弘法大師・云く「後に望むれば戯論と為す」等と云云。此の三大師の意は法華経は已・今・当の諸経の中の第一なり、然りと雖も大日経に相対すれば戯論の法なり等云云。此の義・心有らん人信を取る可きや不(いな)や。 今日本国の諸人、悪象・悪馬・悪牛・悪狗(あっく)・毒蛇・悪刺(あくせき)・懸岸(けんがん)・険崖・暴水・悪人・悪国・悪城・悪舎・悪妻・悪子・悪所従等よりも此に超過し以て恐怖すべきこと・百千万億倍なるは持戒・邪見の高僧等なり。 問うて云く、上に挙ぐる所の三大師を謗法と疑うか。叡山第二の円澄寂光大師・別当光定(こうじょう)大師・安慧大楽(あんねだいぎょう)大師・慧亮(えりょう)和尚・安然和上・浄観僧都・檀那僧正・慧心先徳・此等の数百人、弘法の御弟子・実慧(じつえ)・真済(しんぜい)・真雅(しんが)等の数百人・並びに八宗・十宗等の大師先徳、日と日と・月と月と・星と星と・並びに出でたるが如し。既に四百余年を経歴(きょうりゃく)するに、此等の人人・一人として此の義を疑わず。汝・何なる智を以て之を難ずるや云云。 此等の意を以て之を案ずるに・我が門家は、夜は眠りを断ち、昼は暇(いとま)を止めて之を案ぜよ。一生空しく過して万歳悔ゆること勿れ。恐恐謹言。 八月二十三日 日 蓮 花 押 富 木 殿 鵞目一結(ゆい)給び候ひ畢んぬ。志有らん諸人は一処に聚集(じゅしゅう)して御聴聞有るべきか。
by johsei1129
| 2019-11-03 20:12
| 富木常忍・尼御前
|
Trackback
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
全体 御書 INDEX・略歴 WRITING OF NICHIREN 観心本尊抄(御書五大部) 開目抄(御書五大部) 撰時抄(御書五大部) 報恩抄(御書五大部) 立正安国論(御書五大部) 御書十大部(五大部除く) 日蓮正宗総本山大石寺 重要法門(十大部除く) 血脈・相伝・講義 短文御書修正版 御義口伝 日興上人 日寛上人 六巻抄 日寛上人 御書文段 小説 日蓮の生涯 上 小説 日蓮の生涯 中 小説 日蓮の生涯 下 LIFE OF NICHIREN 日蓮正宗関連リンク 南条時光(上野殿) 阿仏房・千日尼 曾谷入道 妙法比丘尼 大田乗明・尼御前 四条金吾・日眼女 富木常忍・尼御前 池上兄弟 弟子・信徒その他への消息 釈尊・鳩摩羅什・日蓮大聖人 日蓮正宗 宗門史 創価破析 草稿 富士宗学要集 法華経28品 並開結 重要御書修正版 検索
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 01月 お気に入りブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
タグ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||