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日蓮大聖人『御書』解説

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2019年 10月 27日

妙法蓮華経の妙の一字は<中略>能く毒を変じて薬と為すと説いた【道場神守護事】

【道場神守護事】
■出筆時期:建治二年(1276)十二月十三日 五十五歳御作。
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本抄の対告衆は不明ですが、漢文で記されていることと中山法華経寺に所蔵されていることから推察すると大田乗明、若しくは富木常忍ではないかと思われる。尚、題号の道場神はご本尊にしたためられておられる法華経行者の守護神たる十羅刹女のことです。
 本抄は夢で託宣を得た信徒が、鵞目五貫文という多額の供養をされたことへの返書となっております。
 大聖人は「衣食乏少の間、読経の声続き難く・談義の勤め廃しつ可し。此の託宣は十羅刹の御計らひにて檀那の功を致さしむるか」と記され、厳しい身延山中の草庵での状況を十羅刹が檀那(信徒)に功徳を得させようとした計らいであろうかと、その思いを率直に伝えられておられます。
 また「設い科(とが)有る者も三宝を信ぜば大難を脱れんか。而るに今・示し給える託宣の状(手紙)は兼て之を知る。之を案ずるに・難を郤(さっ)て福の来る先兆ならんのみ」と記され、今降りかかっている難が去って福が来る予兆であると励まされておられます。
 さらに文末では「妙法蓮華経の妙の一字は<中略>災来たるとも変じて幸ひと為らん。何に況んや十羅刹・之を兼ねるをや。薪(たきぎ)の火を熾(さかん)にし、風・求羅(ぐら)を益すとは是なり」と記され、妙法蓮華経と唱える事の大切さを諭されておられます。
■ご真筆:中山法華経寺蔵(重要文化財)。
妙法蓮華経の妙の一字は<中略>能く毒を変じて薬と為すと説いた【道場神守護事】_f0301354_21405115.jpg

[真筆本文:本文緑字箇所]
以彼推之設有料者信
三宝脱大難歟 而今示
給託宣之状兼知之 案
之却難福来先兆耳
妙法蓮華経之妙一字
龍樹菩薩大論釈云 能
変毒為薬 云云
天台大師云 今経得記即是
変毒為薬 云云 災来変
為幸 何況十羅刹兼
之歟 薪熾於火風益

[道場神守護事 本文]

 鵞目五貫文・慥(たしか)に送り給び候い了(おわん)ぬ。
 且つ知食(しろしめ)すが如く、此の所は里中を離れたる深山なり。衣食乏少の間・読経の声続き難く、談義の勤め廃しつ可し。此の託宣は十羅刹の御計らひにて檀那の功を致さしむるか。
 止観の第八に云く「帝釈堂の小鬼・敬い避くるが如し。道場の神・大なれば妄りに侵嬈(しんにょう)すること無し。又城の主・剛(たけ)ければ守る者も強し、城の主・恇(おず)れば守る者・忙(おそ)る。心は是れ身の主なり。同名同生の天・是れ能く人を守護す。心固ければ則ち強し、身の神・尚爾(なおしか)なり、況んや道場の神をや」と。
 弘決の第八に云く「常に人を護ると雖も・必ず心の固きに仮(よ)りて神の守り則ち強し」と。又云く「身の両肩の神・尚常に人を護る。況んや道場の神をや」云云。
 人・所生の時より二神守護す。所謂同生天・同名天。是を倶生神(ぐしょうしん)と云う。華厳経の文なり。
 文句の四に云く「賊・南無仏と称して尚天頭(てんず)を得たり。況んや賢者称せば十方の尊神・敢へて当たらざらんや。但精進せよ、懈怠(けたい)すること勿れ」等云云。
 釈の意は月氏に天を崇(あが)めて仏を用いざる国あり。而るに寺を造り第六天の魔王を主とす。頭(こうべ)は金(こがね)を以てす。大賊・年来之を盗まんとして得ず。有る時・仏前に詣で物を盗んで法を聴く。仏説いて云く、南無とは驚覚の義也。盗人之を聞いて南無仏と称して天頭を得たり。之を糾明する処・盗人上の如く之を申す。一国皆天を捨てて仏に帰せり云云。
 彼を以て之を推するに、設い科(とが)有る者も三宝を信ぜば・大難を脱(まぬが)れんか。而るに・今示し給える託宣の状は兼ねて之を知る。之を案ずるに難を郤(さっ)て福の来たる先兆ならんのみ。
 妙法蓮華経の妙の一字は竜樹菩薩の大論に釈して云く「能く毒を変じて薬と為す」と云云。天台大師の云く「今経に記を得る。即ち是れ毒を変じて薬と為すなり」と云云。災ひ来たるとも変じて幸ひと為らん。何に況んや十羅刹・之を兼ねるをや。薪(たきぎ)の火を熾(さかん)にし、風・求羅(ぐら)を益す
とは是なり。言(ことば)は紙上に尽し難し。心を以て之を量れ。恐恐謹言。

 十二月十三日       日蓮 花押

 御返事




by johsei1129 | 2019-10-27 10:52 | 弟子・信徒その他への消息 | Trackback | Comments(0)


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