2019年 10月 22日
【上野殿御返事】 ■出筆時期:建治元年(1274年)五月三日 五十四歳御作 ■出筆場所:身延山中にて。 ■出筆の経緯:本抄は上野殿(南条時光)が、石のように干された芋一駄をご供養されたことへの返書となっおります。 大聖人は冒頭、釈尊十大弟子の一人で天眼第一と言われていた阿那律が過去世で猟師だったとき、飢饉で七日間も食べていなかった利吒(りだ)尊者に稗(ひえ)の飯を供養した功徳で、法華経第四の巻で普明如来の記別を受けた因縁を引いて、大宮の造営で忙しい中、時光が「山里(身延山中)の事を・をもひやらせ給いて・をくりたびて候」事は阿那律に劣らず「(亡き)父の御ために釈迦仏・法華経へまいらせ給うにや。孝養の御心か」と讃えられておられます。 さらに文末では、「わが大事とおもはん人人(主君ら)のせいし(迫害)候<中略>其の時一切は心にまかせんずるなり、かへす・がへす人のせいし(制止)あらば心にうれしくおぼすべ」と記し、主君の迫害に怯むことなく法華経信仰を全うするよう励まされておられます。 尚、芋一駄とは、馬1頭に背負わせられるだけの分量の芋を意味します。 ■ご真筆現存しておりません。古写本:日興上人筆(富士大石寺所蔵) [上野殿御返事 本文] さつき(皐月)の二日にいものかしら、いし(石)のやうにほ(干)されて候を一駄、ふじのうへの(富士の上野)より・みのぶの山へをくり給いて候。 仏の御弟子にあなりち(阿那律)と申せし人は天眼第一のあなりちとて十人の御弟子のその一(ひとり)。迦葉・舎利弗・目連・阿難にかたをならべし人なり。 この人のゆらひ(由来)をたづねみれば、師子頬(ししきょう)王と申せし国王の第二の王子に、こくぼん(斛飯)王と申せし人の御子、釈迦如来のいとこ(従弟)にておはしましき。この人の御名三つ候。一には無貧・二には如意・三にはむれう(無獦)と申す。一一にふしぎの事候。 昔う(飢)えたるよに、りだそんじや(利吒尊者)と申せし・たう(尊)とき辟支仏(縁覚)ありき。うえたるよに七日とき(斎)もならざりけるが・山里にれうし(猟師)の御器に入れて候いける・ひえ(稗)のはん(飯)をこひてならせ給う。 このゆへにこの・れうし・現在には長者となり・のち九十一劫が間・人中・天上にたのしみをうけて・今最後にこくぼん王の太子とむまれさせ給う。金(こがね)のごき(御器)に・はん・とこしなへにたえせず・あらかんとならせ給う。御眼に三千大千世界を一時に御らんありていみじくをはせしが、法華経第四の巻にして普明如来と成るべきよし、仏に仰せをかほらせ給いき。
妙楽大師此の事を釈して云く「稗飯軽しと雖も所有を尽し、及び田勝るるを以ての故に故(ことさら)に勝報を得る」と云云。釈の心・かろきひえのはんなれども・此れよりほかには・もたざりしを、たうとき人のうえておはせしに・まいらせてありしゆへに・かかるめでたき人となれりと云云。 此の身のぶ(延)のさわは石なんどはおほく候、されども・かかるものなし。その上夏のころなれば民のいとまも候はじ。又御造営と申し・さこそ候らんに、山里の事を・をもひやらせ給いて・をくりたびて候。所詮は・わがをやの・わかれをしさに・父の御ために釈迦仏・法華経へまいらせ給うにや。孝養の御心(みこころ)か。 さる事なくば梵王・帝釈・日月・四天、その人の家をすみかとせんと・ちかはせ給いて候は・いふにかひ(功)なきものなれども、約束と申す事はたがへぬ事にて候に、さりとも・この人人はいかでか仏前の御約束をば・たがへさせ給い候べき。もし此の事まことになり候はば、わが大事とおもはん人人のせいし(制止)候。又おほきなる難来るべし。その時すでに此の事かなうべきにやと・おぼしめして、いよいよ強盛なるべし。さるほどならば聖霊・仏になり給うべし。成り給うならば来たりて・まほり給うべし。 其の時、一切は心にまかせんずるなり。かへす・がへす、人のせいし(制止)あらば心にうれしくおぼすべし。恐恐謹言。 五月三日 日 蓮 花押 上野殿御返事
by johsei1129
| 2019-10-22 09:33
| 南条時光(上野殿)
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