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日蓮大聖人『御書』解説

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2015年 10月 12日

撰時抄愚記 上七 正境とは本門戒壇の本尊の御事なり。是れ則ち正中の正、妙中の妙なり。


一 九界
(そく)仏界等

「九界即仏界」は(ごん)に即して実なり。「仏界即九界」は実に即して権なり。此の段の大旨(たいし)は二門に(わた)ると雖も、文は(しばら)く釈に従って(しか)して釈するなり云云。

一 此の経の一字は如意(にょい)宝珠(ほうじゅ)

「此の経」等とは他経に(かん)()す。故に「此の経の一字」等と云うなり。他経には一念三千の(ぶっ)(しゅ)を明かさざるが故なり。

問う、諸部の円教、何ぞ(ぶっ)(しゅ)に非らざるや。

答う、(およ)そ仏種とは法華開顕の極理、一念三千の妙法なり。而して()(ぜん)の諸経には(いま)(かつ)て此の事を説かず、故に仏種に非ざるなり。故に爾前を以て(こう)(ぜん)(たと)うるなり。記の第七・二五に云く「三教の助道(じょどう)(なお)肴膳の如し。更に異の方便を以て第一義を助顕(じょけん)するは、肴膳は(しょく)(おわ)れば便(すなわ)(しょう)すること、方便教の究竟(くきょう)(やく)に非ざるが如し」文。通じて爾前を以て三教と名づくるなり。是れ(すなわ)ち円を以て別に属するが故なり。(せん)一末九に云く「(ぜん)及び不定(ふじょう)に寄すと雖も、余経を以て(しゅ)と為さず」と文。

開目抄の下十二に云く「法華経の種に()って(てん)(じん)菩薩は種子無上を立てたり。天台(てんだい)の一念三千是なり」文。

本尊抄十四に云く「(せん)ずる所は一念三千の仏種に非ずんば有情の成仏・木画二像の本尊は有名(うみょう)無実(むじつ)なり」文。故に爾前の諸経は仏種に(あら)ざるなり。

如意(にょい)宝珠(ほうじゅ)」とは(すで)に此の経の題を妙法と名づく、故に()下の文々句々(みな)妙なり。妙は即ち一念三千なり。故に如意珠に(たと)うるなり。妙楽云く「妙は(すなわ)ち三千、三千は即ち法」云云。止観第五に一念三千を譬えて云く「如意珠の如きは天上の(しょう)(ほう)なり。(かたち)()(ぞく)の如くなれども大()(のう)有り。浄妙の五欲、七宝の琳琅(りんろう)は、内に(たくわ)うるに非ず、(そと)より入るに非ず。前後を(はか)らず、多少を(えら)ばず乃至()(かな)いて豊倹(ほうけん)なり、降雨(こうう)すること穣々(じょうじょう)たり。(けだ)し是れ色法(しきほう)(なお)()()くの如し。(いわん)心神(しんじん)の霊妙をや。()んぞ一切の法を()せざらんや」文。

一 一句は()仏の種子となる

一字一句既に是れ一念三千の宝珠なり。故に三仏の種子(しゅし)と成るなり。「仏の三種の身は(ほう)(とう)より生ず」とは是れなり。故に一句を聞くと雖も、即ち(けい)(じゅ)()るなり、

問う、通じて(こん)(きょう)一部を以て末法下種の正体と為すや。

答う、(およ)そ末法下種の正体とは久遠名字(みょうじ)の妙法、事の一念三千なり。是れ(すなわ)ち文底(じん)(じん)の大事、蓮祖弘通(ぐつう)の最要なり。

開目抄に云く「一念三千の法門は(ただ)法華経の本門・寿量品の文の底に秘し沈め給へり」と云云。(まさ)に知るべし、当文の如くんば正に是れ(ごん)(じつ)相対(そうたい)なり。既に華厳(けごん)に対する故なり。

若し本尊抄に「爾前(にぜん)迹門(しゃくもん)の円教すら(なお)仏因に非ず」等と云うは即ち是れ本迹(ほんじゃく)相対なり。

若し「彼は(だつ)此れは(しゅ)なり。彼は一品一半、此れは(ただ)題目の五字なり」と云うは、正しく是れ(しゅ)(だつ)相対なり。()第三の法門、末法下種の正体なり。

秋元抄に云く「三世十方(じっぽう)の仏は必ず妙法蓮華経の五字を種として仏になり給へり」文。

太田抄に云く「(あるい)は一乗を演説すれども(ただ)妙法蓮華経の五字を以て下種と為すべき由来(ゆらい)を知らざるか」と云云。

本尊抄の「但」の字、秋元抄の「必」の字、学者(こころ)を留むべし。太田抄の「由来」の両字、(こと)に深秘の相伝(これ)有り云云。

()一下十一に云く「縦使(たとい)発心(ほっしん)真実ならざる者も正境(しょうきょう)に縁すれば功徳(なお)多し。若し正境に(あら)ざれ(たと)偽妄(ぎもう)無けれども亦(しゅ)成らず」云云。

当に知るべし、正境とは本門戒壇の本尊の御事なり。是れ(すなわ)ち正中の正、妙中の妙なり。久遠名字(みょうじ)の妙法、事の一念三千、何ぞ外に之を求めんや。(すなわ)ち是れ末法下種の正体なり云云。


                        つづく
撰時抄愚記上 目次



by johsei1129 | 2015-10-12 16:01 | 日寛上人 御書文段 | Trackback | Comments(0)


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