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日蓮大聖人『御書』解説

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2022年 04月 08日

南条時光の亡き父の墓参りに日興上人を遣わしたことを記した書【春之祝御書】

【春之祝御書】
■出筆時期:文永十二年(1275年)一月 五十四歳御作
■出筆場所:身延山中の草庵にて。
■出筆の経緯:本書は南条時光が十六歳の時に賜った消息です。

大聖人は十年前に亡くなった時光の亡父南条兵衛七郎の墓に詣でた事を伝えられると共に、身延に入山する時「とをりて候ひしが、心にかかりて候」と記し、墓の近くを通ったが詣でる事ができず気にかかっていたと故兵衛七郎を偲ぶ心情を率直に伝えておられます。さらにその思いを叶えるため、正月の内に日興上人を遣わし「御はかにて自我偈一巻よません」と記すとともに、故兵衛七郎の形見とも言える時光と法華経の行者が共に墓に詣でる事を、亡き父はどれほど嬉しかろうと、時光を励まされておられます。

大聖人が兵衛七郎、その子息時光にこれほど配慮されるのは、後に日興上人を自身の領地に招いて大石寺の開基檀那となる当時十六歳の時光に、すでにその将来の姿を見出していたのではと思われます。
■ご真筆:富士大石寺所蔵(非一般公開)。

[春之祝御書 本文]

 春のいわい(祝)わ・すでに事ふり候ぬ。

 さては故なんでう(南条)どのは・ひさしき事には候はざりしかども、よろず・事にふれてなつかしき心ありしかば、をろかならずをもひしに、よわひ盛んなりしに・はかなかりし事、わかれ(別れ)かなしかりしかば、わざとかまくら(鎌倉)よりうちくだり、御はか(墓)をば見候ひぬ。
 それよりのちは・するが(駿河)のびん(便)にはと・をもひ(思い)しに、このたび・くだしには人にしのびてこれヘきたりしかば、にしやま(西山)の入道殿にもしられ候はざりし上は力をよばず。とを(通)りて候ひしが心にかかりて候。
 その心をとげんがために、此の御房(日興上人)は正月の内につかわして・御はか(墓)にて自我偈一巻よませんと・をもひてまいらせ候。
 御との(殿)の御かたみ(形見)もなし、なんど・なげきて候へば、との(時光)をとどめをかれける事よろこび入て候。
 故殿は木のもと、くさむらのかげ、かよう人もなし。仏法をも聴聞せんず、いかにつれづれなるらん、をもひやり候へばなんだ(涙)もとどまらず。
 との(殿)の法華経の行者うちぐして御はかにむかわせ給ふには、いかに・うれしかるらん、いかに・うれしかるらん。 (これ以降の本文は残されておりません)




by johsei1129 | 2022-04-08 20:52 | 南条時光(上野殿) | Trackback | Comments(0)


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