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日蓮大聖人『御書』解説

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2015年 09月 01日

観心本尊抄文段 下十

一 (また)法華経等の十巻に於て等

(ひょう)(しゃく)見るべし。此の下は迹門熟益(じゅくやく)の三段、亦五と()す。には(まさ)しく三段を明かし、二には能説の教主、三には所説の法体(ほったい)、四には権実勝劣(しょうれつ)、五には化導の始終なり。

第一、第二は文の(ごと)く見るべし。

第三は所説の法体を示す。文に「本無今有の百界千如を説いて」と云うは、後の本門に望みて是れを判ず。故に「本無今(ほんむこん)()」等と云うなり。十法界抄()に云く「迹門には(ただ)()れ始覚の十界()()を説きて末だ必ずしも本覚本有(ほんぬ)の十界互具を明かさず故に所化の大衆能化(のうけ)の円仏(みな)是れ(ことごと)()(かく)なり、若し(しか)らば本無今有の(とが)何ぞ(まぬか)るることを得んや」と云云。即ち此の文の意なり。

第四に「已今当に超過せる」等とは、是れ権実の勝劣(しょうれつ)を判ずるなり。文の意は、後の本門に望むれば本無今有の百界千如なれども、()し三説に対すれば難信難解(なんげ)の正法なりと云云。

第五に「過去の結縁を尋れば」等とは、是れ()(どう)始終(しじゅう)を明かすなり。此の文に(また)あり。初めに爾前(にぜん)入実、次に「二乗」の下は今経の当機、三に「又在世に於て」の下は結縁(けちえん)(しゅ)なり。(まさ)に知るべし、同じく大通(だいつう)十六の時、仏果の種子を下す中に()三類を(わか)つなり。

但毒発等の一分」とは、是れ爾前入実の機類を以て総じて毒発(どくはつ)不定に属するなり。(しか)して種類は(あら)ざる故に「分」と云うなり。

二乗凡夫等」とは、是れ今経の当機(とうき)なり。

問う、(まさ)に「法華に来至(らいし)して得脱す」と云うべし。何ぞ「法華に来至して種子を顕わし」と云うや。

答う、(およ)そ得脱とは種子を顕示するを得脱と名づくるなり。故に五百品に云く「(たま)を与えし親友(しんぬ)、示すに()けし所の珠を以てす。貧人(びんにん)此の珠を見て()の心大いに歓喜(かんぎ)す」等云云。此れは是れ脱は必ず種に(かえ)の明文なり。(せん)の本に云く「聞法(もんぽう)は珠を()くるなり。是れを円因と()す。得記は珠を示すなり。名づけて円果と為す」等云云。

又在世に於て始めて八品を聞く」等とは、此の下は三に結縁(けちえん)(しゅ)なり。

或は一句一偈等を聞て下種とし」とは、

問う、云う所の「下種」とは、聞法下種とせんや、発心下種とせんや。()し聞法下種と云わば、在世は(みな)是れ本已(ほんい)()(ぜん)の衆生なり。何ぞ始めて聞法を論ずべけんや。若し発心下種といわば、(すで)に「始めて八品(はっぽん)を聞く」等と云う(あに)聞法下種に(あら)ずや。

答う、是れ発心下種なり。(いわ)く、大通十六の(とき)、法華を聞くと(いえど)(しか)も信を生ぜず。不信を以ての故に不聞(ふもん)に属す。故に「始めて聞く」等と云うなり。例せば「第三類の人、(いま)(かつ)て大を聞かず」の義勢の如し云云。

或は普賢・涅槃等に至り」等とは、

問う、何ぞ本門(とく)(だつ)の人を挙げざるや。

答う、本門得脱の人は即ち是れ本門(しゅ)(だつ)の人にして迹門種脱の人に非ず。何ぞ是れ()ぐべけんや。

或は正像末」とは、

問う、此の人は(ただ)正像に至るべし、何ぞ末法に至らん。此れ即ち末法は皆是れ本未(ほんみ)()(ぜん)の衆生なるが故なり。

答う、(なお)末法の初めの二百年は、本已(ほんい)()(ぜん)の衆生(これ)あり。故に下の文云く「迹門の四依(しえ)は多分は像法千年・少分(しょうぶん)は末法の初めなり」と云云。

問う、当文には(つぶさ)()(どう)始終(しじゅう)を明かすべし。何ぞ迹門熟益(じゅくやく)の三段と云うや。

答う、迹門の言は()(ぜん)に対し、熟益の言は本門の脱益(だっちゃく)に対するなり。(いわ)く、爾前に対する時は化導の始終を明かすと(いえど)も、若し本門の脱益に望む時は通じて熟益に属する故なり。故に下の文に云く「久遠を以て下種と()し、大通・前四味・迹門を熟と為して本門に至って等妙に(のぼ)らしむるを脱と為す」(取意)等云云。(まさ)に知るべし、(いま)化導の始終を明かすは、今家(しょ)(りゅう)の第の教相なり。()し今家所立の第二の教相に望めば、(ただ)是れ熟益の(ぶん)(ざい)なり。


        つづく
文段下 目次



by johsei1129 | 2015-09-01 22:22 | 日寛上人 御書文段 | Trackback | Comments(0)


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