日蓮大聖人『御書』解説

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2015年 08月 31日

悪縁にあふて還俗の念起る事浅ましき次第なり<略>薬を捨てて毒をとるが如し、と説いた【出家功 徳御書】

【出家功徳御書】
■出筆時期:弘安二年(1279年)五月 五十八歳御作
■出筆場所:身延山中の草庵にて。
■出筆の経緯:本抄の対告衆の詳細は不明ですが、冒頭で「内内還俗の心中、出来候由風聞候ひけるは、実事にてや候らん虚事にてや候らん。心元なく候間一筆啓せしめ候」と記されておられるように、弟子の中で還俗(出家僧から俗の身に戻る)をする噂を大聖人が憂へ、その相手を直接諌めるべく本抄をしたためられたと思われます。   

弘安二年は熱原の法難が勃発した年で、日興上人の教化で、天台宗滝泉寺の僧が次々と大聖人が門下に下りました。そのため院主代の行智はその動きを止めるべく、大聖人の弟子信徒への迫を強めます。その際、行智に唆されて大聖人門下の大進坊、三位房が退転するという事態に陥ります。この行智の迫害に恐れをなし、弟子の中に還俗を考えた僧侶が出てきたものと思われます。 大聖人は本抄で「されば人身をうくること難く、人身をうけても出家と成ること尤も難し<中略>還俗の念起る事浅ましき次第なり<略>薬を捨てて毒をとるが如し」と、還俗することを強く諌めておられます。さらに文末では「我が身は天よりもふらず地よりも出でず。父母の肉身を分たる身なり、我が身を損ずるは父母の身を損ずるなり」と記し、還俗は最大の親不孝であると諭されて。この出家についてですが、鎌倉時代は宗派を問わず仏教が民衆の精神的支柱であり、世俗の仕事は早めに子供に譲り、自身は出家し仏門に入ることが通例でした。例えば、大聖人が「立正安国論」を献上した北条時頼は、二十九歳で家督を六歳の時宗に譲り、自身は出家し最明寺入道と名乗っております。

それでは現代における出家の意味は、狭義では出家し僧になることですが、広義の意味では大聖人の教えを人生の基盤にすること、つまり入信を意味すると拝せます。また本抄の大聖人の還俗への戒めは、大聖人の教えに背き「退転」することと配すべきと考えられます。
■ご真筆:現存しておりません。
[出家功徳御書 本文]

近日誰やらん承りて申し候は・内内還俗の心中・出来候由風聞候ひけるは・実事にてや候らん虚事にてや候らん・心元なく候間一筆啓せしめ候、凡父母の家を出でて僧となる事は必ず父母を助くる道にて候なり、出家功徳経に云く「高さ三十三天に百千の塔婆を立つるよりも一日出家の功徳は勝れたり」と、されば其の身は無智無行にもあれかみをそり袈裟をかくる形には天魔も恐をなすと見えたり、大集経に云く「頭を剃り袈裟を著くれば持戒及び毀戒も天人供養す可し則ち仏を供養するに為りぬ」云云、又一経の文に有人海辺をとをる一人の餓鬼あつて喜び踊れり、其の謂れを尋ぬれば我が七世の孫今日出家になれり其の功徳にひかれて出離生死せん事喜ばしきなりと答へたり、されば出家と成る事は我が身助かるのみならず親をも助け上無量の父母まで助かる功徳あり、されば人身をうくること難く人身をうけても出家と成ること尤も難し、然るに悪縁にあふて還俗の念起る事浅ましき次第なり金を捨てて石をとり薬を捨てて毒をとるが如し、我が身悪道に堕つるのみならず六親眷属をも悪道に引かん事不便の至極なり。

其の上在家の世を渡る辛労一方ならずやがて必ず後悔あるべし、只親のなされたる如く道をちがへず出家にてあるべし、道を違へずば十羅刹女の御守り堅かるべし、道をちがへたる者をば神も捨てさせ給へる理りにて候なり、大勢至経に云く「衆生五の失有り必ず悪道に堕ちん一には出家還俗の失なり」、又云く「出家の還俗は其の失五逆に過ぎたり」、五逆罪と申すは父を殺し母を殺し仏を打ち奉りなんどする大なる失を五聚めて五逆罪と云うなり、されば此の五逆罪の人は一中劫の間・無間地獄に堕ちて浮ぶ事なしと見えたり。

然るに今宿善薫発して出家せる人の還俗の心付きて落つるならば・彼の五逆罪の人よりも罪深くして大地獄に堕つべしと申す経文なり、能く能く此の文を御覧じて思案あるべし、我が身は天よりもふらず地よりも出でず父母の肉身を分たる身なり、我が身を損ずるは父母の身を損ずるなり、此の道理を弁へて親の命に随ふを孝行と云う親の命に背くを不孝と申すなり、所詮心は兎も角も起れ身をば教の如く一期出家にてあらば自ら冥加も有るべし、此の理に背きて還俗せば仏天の御罰を蒙り現世には浅ましくなりはて後生には三悪道に堕ちぬべし、能く能く思案あるべし、身は無智無行にもあれ形出家にてあらば里にも喜び某も祝著たるべし、況や能き僧にて候はんをや、委細の趣・後音を期し候。

弘安二年五月 日  日蓮 花押

by johsei1129 | 2015-08-31 21:10 | 弟子・信徒その他への消息 | Trackback | Comments(0)
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