第五段 心具の十界を釈す
一 問うて曰く経文並びに天台等文。
此の下は三に正しく釈す、亦二と為す。初めに且く現見を以て心具の十界を明かし、次に「問うて日く、教主」の下は正しく受持に約して観心を明かすなり。
初めの且く現見を以て心具の十界を示す文、亦三と為す。初めに六道を示し、次に「問うて曰く、六道に於て」の下は三聖を示し、三に「問うて曰く、十界互具」の下は仏界を明かす。
初めの六道を示すに、亦二と為す。初めに問、次に答、亦二あり。初めに正しく明かし、次に四聖冥伏を示す。
一 問うて曰く六道に於て等文。
此の下は次に三聖を示す、亦二あり。初めに問、次に答、亦二あり。
初めに正しく明かし、次に「但仏界」の下は仏界に例す。亦三あり。初めに勧誡、次に引文、三に「末代」の下は道理なり云云。
一 問うて日く十界互具等文。
此の下は三に仏界を明かす、亦二あり。初めに問、次に答。
初めの問に亦二あり。初めに文を信じ義を疑い、次に「今の時」の下は伏して救助を求む。
次の答に亦二あり。初めに誡許、次に「十界互具之を立つ」の下は正しく答う。
初めの誡許に亦二あり。初めに誡、次に「然りと雖も」の下は許、亦四あり。初めに略して余縁得道の例を示し、二に「其れ機」の下は機を判じ、三に「其の上」の下は宿因開発の助縁を明かし、四に因みに執権謗実の失を破す。
文にいう「過去の下種結縁無き者の権小に執着する者」とは、応に是くの如く点ずべきなり。謂く、過去の下種結縁無しと雖も、若し権小に執着せざれば、今日始めて下種結縁して正法の行者と成る故なり。
文にいう「十界互具之を立つるは石中の火・木中の花」等とは、此の下は、正しく答う、亦三あり。初めに信じ難きを信ずるの現証を引き、次に「尭・舜等の聖人の如き」の下は現事を引いて証し、三に「此等の現証を以て」の下は結勧。
初めの文、亦二と為す。初めに通じて十界互具を挙げ、次に「人界」の下は別して人界所具の仏界を示す。
次の文に亦三あり。初めに尭・舜、次に不軽、三に悉達。
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