2015年 07月 25日
第三段 略して観心を釈す
一 問うて日く出処既に之を聞く観心の意如何文。 問の意は、一念三千の出処既にこれを聞く、一念三千の観心の意如何となり。故に此の問は初めの一段より起るなり、何ぞ細科とせんや。是の故に此の下は大段の第二、観心の本尊を明かす、亦二と為す。初めに観心を明かし、次に「夫れ始め」の下は本尊を明かす。 初めの観心を明かすに、亦二と為す。初めは略釈、次に「問うて云く法華経」の下は広釈。 初めの略釈に亦二あり。初めに問、次に答、亦三と為す。初めに法、次に譬、三に「設い」の下は譬を合するなり。 文に云う「我が己心を観じて十法界を見る」とは。 問う、これ台家の観心と為せんや。当家の観心と為せんや。 答う、忠抄・蒙抄等並びに云く「付文の辺は台家の観心、元意の辺は当家の観心なり」云云。若し付文の辺は己心所具の十法界を観見する義なり。弘の五上の七十四等云云。若し元意の辺は「我が己心を観ず」とは、即ち本尊を信ずる義なり。「十法界を見る」とは、即ち妙法を唱うる義なり。謂く、但本尊を信じて妙法を唱うれば、則ち本尊の十法界全く是れ我が己心の十法界なるが故なり。 問う、総勘文抄に云く「所詮己心と仏身と一なりと観ずれば速かに仏に成るなり乃至『一切の諸仏は、己心は仏心に異ならずと観じ給うに由るが故に成仏を得』と。此を観心と云う」と云云。此の文意如何。 答う、仏心も妙法五字の本尊なり。己心も亦妙法五字の本尊なり。己心・仏心異なりと雖も、妙法五字の本尊は異らず、故に「一」と云うなり。而して「観」というは、初心の行者其の義を知らざれども但本尊を信じて妙法を唱うれば、自然に「己心と仏心と一なり」と観ずるに当るなり。故に「観心」と云うなり。故に往いて当文に同じきなり。 文に云く「譬えば他人の六根を見ると雖も、未だ自面の六根を見ざれば」等文。 問う、何ぞ自面というや。 答う、此れに二意あり。 一には面には六根を具足す。故に謂く、眼耳鼻舌並びに身あり。亦色等に縁する時は、意根亦面に居する故なり。二には面には十界の相を現ずる故に。謂く、或は嗔り、或は貪り、或は癡か、或は諂曲、或は平らか、或は喜び、或は無常、或は慈愛等、並びに是れ面に現ずるが故なり。啓蒙に疏の第三を引く、未だ全く同じからざるなり。 文に云く「明鏡に向うの時、始めて自具の六根を見る」と文。当に知るべし、向背は信・不信の異名なり。言う所の明鏡とは、若し付文の辺は文の如く法華止観を指すなり。伝教云く「一乗の独円は、動と静と無碍なり、鏡像円融三諦」等云云。道宣律宗、智者大師の所釈を讃して云く「行人の心鏡、巨夜の明灯」と云云。是等は法華止観を明鏡に譬うる文なり。 若し元意の辺は正しく本尊を以て明鏡に譬うるなり。 御義の下二十二に云く「南無妙法蓮華経と唱え奉る者の希有の地とは末法弘通の明鏡たる本尊なり」等云云。 又上二十七に云く「惣じて鏡像の譬とは自浮自影の鏡の事なり。此の鏡とは一心の鏡なり。惣じて鏡に付いて重重の相伝之有り。所詮鏡の能徳とは万像を浮ぶるを本とせり。妙法蓮華経の五字は万像を浮べて一法も残る物之無し。又云く鏡に於て五鏡之有り。妙の鏡には法界の不思議を浮べ・法の鏡には法界の体を浮べ・蓮の鏡には法界の果を浮べ・華の鏡には法界の因を浮べ・経の鏡には万法の言語を浮べたり乃至我等衆生の五体五輪、妙法蓮華経と浮び出でたる間、宝塔品を以て鏡と習うなり乃至自浮自影の鏡とは南無妙法蓮華経是なり」と。 修禅寺決三十に云く「玄師の伝に自影自浮の大鏡之有り。一念三千の観を成ず。自影自浮とは、釈迦如来、大蘇法華道場に於て智者大師の為に大鏡を授け一念三千を伝う。其の鏡の事とは日光に向うの時、十界の形像を現ず。一鏡に十界を現ずる故に一念三千の深義なり」等云云。故に知んぬ、自影自浮の鏡とは事の一念三千の南無妙法蓮華経の本尊なることを。
by johsei1129
| 2015-07-25 23:28
| 日寛上人 御書文段
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