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日蓮大聖人『御書』解説

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2019年 11月 09日

時光が、麦何ぞ変じて法華経の文字とならざらんと称えた【時光殿御返事 】

【時光殿御返事 】
■出筆時期:弘安元年(1278)七月八日 五十七歳御作。
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本書は南条時光(上野殿)が日本中が疫病と飢渇に苦しんでいる中、白麦一駄、はじかみ(生姜)を供養されたことへの返書となっております。大聖人は釈迦の直弟子で天眼第一と謳われた阿那律、また頭陀行第一と謳われた迦葉尊者の謂れを引いて、時光の白麦一駄の供養は「此の時光が麦何ぞ変じて法華経の文字とならざらん。此の法華経の文字は釈迦仏となり給ひ、時光が故親父の左右の御羽となりて霊山浄土へとび給へ」と讃えられておられます。尚この時時光は弱冠二十歳の北条門下の武士で、父亡き後上野郷の地頭として大聖人また日興上人を生涯支え続けました。
■ご真筆:現存していない。古写本:日興上人筆(富士大石寺所蔵)。

[時光殿御返事 本文]

むぎのしろきこめ一駄、はじかみ(薑)送り給ひ畢ぬ。
こくぼんわう(斛飯王)の太子あなりち(阿那律)と申す人は、家にましましし時は俗性は月氏国の本主、てんりん聖王のすえ、師子けう(頬)王のまご(孫)、浄飯王のおひ(甥)、こくぼん王には太子なり。

天下にいや(賤)しからざる上、家中には一日の間、一万二千人の人出入す。六千人はたから(財)をか(借)りき、六千人はかへりなす。
かかる富人にておはする上、天眼第一の人、法華経にては普明如来となるべきよし仏記し給ふ。

これは過去の行はいかなる大善ぞとたづぬるに、むかしれうし(猟師)あり。
山のけだものをとりてすぎけるが、又、ひえ(稗)をつくり食とするほどに、飢えたる世なればものもなし。
ただひえのはん(飯)一ありけるをくひければ、りだ(利吒)と申す辟支仏(縁覚)の聖人来て云く、我七日の間食なし、汝が食者(くいもの)えさせよとこわせ給ひしかば、きたなき俗のごき(器)に入れてけが(汚)しはじめて候と申しければ、ただえ(得)させよ、今食せずば死ぬべしと云ふ。
おそれながらまいらせつ。此の聖人まいり給ひしが、ただひえ(稗)一つび(粒)をとりのこして、れうし(猟師)にかへし給ひき。
ひえへんじていのこ(猪)となる。いのこ変じて金となる。金変じて死人となる。死人変じて又金人となる。指をぬ(抜)いて売れば本のごとし。

かくのごとく九十一劫長者に生れ、今はあなりち(阿那律)と申して仏の御弟子なり。
わづかのひえなれども、飢えたる国に智者の御いのちをつぐゆへに、めでたきほう(報)をう(得)。
迦葉尊者と申せし人は、仏の御弟子の中には第一にたと(尊)き人なり。此の人の家をたづぬれば摩(ま)かだい(竭提)国の尼(に)くりだ(拘律陀)長者の子なり。
宅にたたみ(畳)千でうあり。一でうはあつさ七尺、下品のたたみは金千両なり。からすき(犂)九百九十九、一(ひとつ)のからすきは金千両。金三百四十石入れたるくら(倉)六十。かかる大長者なり。

め(妻)は又身は金色(こんじき)にして十六里をてらす。日本国の衣通姫(そとおりひめ)にもすぎ、漢土のりふじん(李夫人)にもこえたり。
此の夫婦道心を発(おこ)して仏の御弟子となれり。法華経にては光明如来といはれさせ給ふ。
此の二人の人人の過去をたづねれば、麦飯(むぎはん)を辟支仏に供養せしゆへに迦葉尊者と生れ、金のぜに一枚を仏師にあつらへて毘婆尸(びばし)仏の像の御はく(箔)にひきし貧人は、此の人のめ(妻)となれり。

今日蓮は聖人にはあらざれども、法華経に御名をたてり。国主ににくまれて我が身をせく上、弟子かよう(通行)人をも、或はのり、或はうち、或は所領をとり、或はところをおふ。

かかる国主の内にある人人なれば、たとひ心ざしあるらん人人もと(訪)ふ事なし。此の事事ふりぬ。
なかにも今年は疫病と申し、飢渇と申し、とひくる人々もすくなし。
たとひやまひ(病)なくとも飢ゑて死なん事うたがひなかるべきに、麦の御とぶ(訪)らい金にもすぎ、珠にもこえたり。

彼のりだ(利吒)がひゑ(稗)は変じて金人となる。此の時光が、麦何ぞ変じて法華経の文字とならざらん。
此の法華経の文字は釈迦仏となり給ひ、時光が故親父の左右の御羽となりて霊山浄土へとび給へ、
かけり給へ。かへりて時光が身をおほ(覆)ひはぐくみ給へ。恐恐謹言。


弘安元年七月八日  日蓮花押 
上野殿御返事 

by johsei1129 | 2019-11-09 15:31 | 南条時光(上野殿) | Trackback | Comments(0)
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