2015年 07月 20日
一 或本に云く、一界に三種の世間を具す文。 問う、両本の意如何。 答う、倶に是れ一界は能具、十如は所具、十如は能具、三世間は所具なり。若し観本の意は一界所具の十如の一々に各三世間を具す。故に三十種世間と云うなり。若し異本の意は且く十如の中の一如是に約す。故に三種世間と云う。一を以て九に例する故に、現本の意と往いて差わざるなり。 問う、両本倶に何ぞ十如を挙げざるや。 答う、若し前後の界・間を挙ぐれば、中間の十如は自ら彰るる故なり。解釈の巧妙なること、学者見るべし。 一 問うて曰く、玄義等文。 此の下は次に玄文並びに止観の前の四に一念三千を明かさざることを示す、亦二あり、初めに三千の名目を明かさざることを示し、次に「疑つて曰く」の下は其の名目を明かさざるの相を示す。 初めの文に亦二あり。初めに玄文、次に止観。 初めの玄文に亦二あり。初めに並べて示し、次に引証。引証の文に「並に未だ一念三千と云わず」等と云うは、今に在っては正しく玄文を指して「並に」と云うなり。余は悉く文の如し。 一 疑つて日く、玄義等文。 此の下は次にその名目を明かさざるの相を示す、亦二と為す。初めに玄文並びに百界千如に限るを示し、次に「問うて曰く止観」の下は止観の前の六章は方便に属するを示す。 問う、初めの文の答を欠く意如何。 答う、疑問即ち答なり。既に百界千如に限る文を引く故なり。 問う、次の文に止観の前の四巻と云うに何ぞ止観の前の六章等と云うや。 答う、文は是れ巻を指すと雖も、意は前の六章を問う。十章抄に云く「大意より方便までの六重は前四巻に限る」云云。況や復唯巻を問えるをや。何ぞ第四の問に異らんや。況や復答の文に「是の故に前の六をば皆解に属す」と云えるをや。意に謂く、前の六章は既に是れ方便なり。何ぞ正観の一念三千を明かさん云云。 一 夫れ智者の弘法三十年文。 此の下は三に結歎、亦二と為す。初めに正しく本師を歎じ、次に因んで末学を破するなり。 初めの文意は、夫れ智者大師は仏滅後千四百八十七年、梁の武年の大同四年の誕生、十八歳出家、二十三歳南岳に値い、三十歳金陵に至り、翌年瓦官寺に居して玄義を講ず。而る後、五十七歳、玉泉寺に於て止観を講ず。其の後、六十歳の御入滅なり。故に玄義開講より御入滅に至るまで、正しく是れ三十年なり。故に「智者の弘法三十年」と云うなり。 文に云く「二十九年の間は玄文等の諸義を説いて」とは、啓蒙に云く「入滅の年を除き二十九年の間を玄・文等の弘法に属するか。或は五十七歳の止観の説法を第三十年と為し、其の前を玄・文等の弘法に属するか」と云云。 寛案じて云く、三十一歳玄義開講より五十七歳止観を説きたまう春に至るまで、正に是れ二十七年なり。故に「二十九年」とは恐らく謬れり。応に「二十七年」に作るべし。字形相似の故に伝写之を謬るか。 今例文を考うるに、撰時抄の下に云く「玄奘三蔵は六生を経て月氏に入りて十九年」と云云。蒙抄の十一に云く「月氏に入りて十九年とは、恐らくは謬れり、御直書は十七年なり。語式の如し」等云云。既に十七年を以て謬って十九年に作る。今復然るべきか。若し御真筆に縦い二十九年と有りと雖も、仍是れ示同凡夫の故に不慮の書き謬りならんか。例せば妙楽、証真に告ぐるが如し。又下の文の「諸論師の事章」の如きなり云云。また御書四十三、第二・二十六、是れを見合すべし。 亦復当に知るべし、宗祖の弘法も亦三十年なり。三十二歳より六十一歳に至る故なり。而して復宗旨建立已後第二十七年に当って己心中の一大事、本門戒壇の本尊を顕したまえり。学者宜しく之を思い合わすべし。 一、天竺の大論尚其の類に非ず文。 何ぞ但竜樹の大論に勝るるのみならん、方に天竺一切の大論師に勝るるなり。故に「天竺の論師の未だ述べざる」の文に同ずる義、最も然るべきなり。
by johsei1129
| 2015-07-20 19:10
| 日寛上人 御書文段
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