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日蓮大聖人『御書』解説

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2019年 11月 12日

南条時光の求道心を「あいよりもあをく」と称えた書【上野殿御返事(雪中供養御書)】

【上野殿御返事(雪中供養御書)】
■出筆時期:弘安二年(西暦1279)一月三日 五十八歳御作。
■出筆場所:身延山中 草庵にて。
■出筆の経緯:本抄は南条時光(上野殿)が、当時疫病が発生し民衆の半分が死んだとも言われる厳しい時代にも関わらず、正月の祝いのご供養をされたことへの返書となっております。大聖人は亡き父故上野殿の跡を継ぎ、大聖人への純真な帰依の姿勢を貫く時光に対し、中国の儒家・荀子の格言を引いて「あい(藍)よりもあを(青)く、水よりもつめ(冷)たき冰かなと」とその強い信仰心を称えております。
■ご真筆:三ヶ所(京都市妙覚寺、京都市本法寺、広島県妙丁寺)にて分散所蔵
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[冒頭の第一紙(京都市 妙覚寺所蔵)]

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[文末の第四紙(京都市 本法寺蔵)]

[上野殿御返事(雪中供養御書) 本文]

 餅九十枚、薯蕷(やまのいも)五十本、わざと御使ひを以て正月三日、未(ひつじ)の時に駿河国富士郡上野郷より甲州波木井(はきり)の郷・身延山のほら(洞)へおくりたびて候。
 
 夫れ海辺には木を財(たから)とし山中には塩を財とす。旱颰(かんばつ)には水を財とし闇中には灯を財とし、女人は夫を財とし・夫は女人を命とし、王は民を親とし・民は食を天とす。

 此の両三箇年は日本国の中に大疫(だいえき)起りて人半分減じて候か。去年(こぞ)の七月より大なるけかち(飢渇)にて・里市とをき無縁の者と山中の僧等の命(いのち)存しがたし。

 其の上日蓮は法華経誹謗の国に生れて威音王仏の末法の不軽菩薩の如し。将又(はたまた)歓喜増益仏の末の覚徳比丘の如し。王も・にく(悪)み民もあだむ、衣(ころも)もうすく食もとぼし、布衣(ぬのこ)は・にしき(錦)の如し、草葉をば甘露と思ふ。其の上・去年の十一月より雪つもりて山里路たえぬ。

 年返れども鳥の声ならでは・をとづるる人なし。友にあらずばたれか問うべきと心ぼそくて過(すご)し候処に、元三の内に十字(むしもち)九十枚、満月の如し。心中もあきらかに生死のやみもはれぬべし。

 あはれなり・あはれなり。こうへのどの(故上野殿)をこそ、いろあるをとこ(男)と人は申せしに、其の御子なればくれない(紅)のこ(濃)きよしをつたへ給えるか。あい(藍)よりも・あを(青)く、水よりもつめたき冰(こおり)かなと。ありがたし・ありがたし。恐恐謹言。
  
 正月三日         日 蓮  花 押

 上野殿御返事




by johsei1129 | 2019-11-12 06:56 | 南条時光(上野殿) | Trackback | Comments(0)


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