2015年 06月 13日
又、啓蒙に云く「既に二乗作仏の下に於て、多宝・分身を引いて真実の旨を定めたまえり。故に未だ発迹顕本せざる時も真の一念三千にして、二乗作仏も定まれり。然るに今、真の一念三千も顕れず、二乗作仏も定まらずとは、久成を以て始成を奪うの辞なり。此くの如くに久成を以て始成を奪う元意は、天台過時の迹を破せんが為なり」と云云。この義は如何。 答う、これはこれ曲会私情の僻見にして、蓮祖違背の大罪なり。凡そ二乗作仏の下に多(宝)仏分身を引き、真実の旨を定むることは、権迹相対して爾前に望む故なり。 故に結文二十一に云く「此の法門は迹門と爾前と相対して」と云云。 今「まことの一念三千もあらはれず二乗作仏も定まらず」とは、本迹相対して本門に望む故なり。故に所対に随ってその義同じからず。妙楽云く「凡そ諸法相は所対不同なり」と云云。日講の盲目、この則を知らず。若し強いて爾らずんば、一代の聖教皆これ真実ならんや。その故は上の内外相対の下六に云く「此の仏陀は三十成道より八十御入滅にいたるまで五十年が間・一代の聖教を説き給へり、一字一句・皆真言なり一文一偈・妄語にあらず」等云云。 若しこの文を以て外典外道に対する故なりといわば、何ぞ爾前に対して迹門真実といわざらんや。況やまた、久成を以て始成を奪う則は真の一念三千も顕れず、二乗作仏も定まらざること、汝も亦之を知れり。若し実に爾らずんば、蓮祖何ぞ無実を以て台宗を破すべけんや。 問う、啓蒙中に諸文の本迹相対の判釈を会する意に云く、それ実に本化の知見に約すれば「如是我聞」の初めより元来一致の妙法なり。然るに諸文の中に本迹の起尽を明かすことは、これ機情の移転に約する一往の判釈なり。是れ尚開迹顕本すれば一部皆本門なり。故に再往は本迹一致なり。得意抄の意は即ちこれなり等云云。この義は如何。 答う、凡そ本化の知見とは妙楽の釈に分明なり。故に記九本二に云く「然れども本の弟子は元より近迹を知れり。今の弟子は猶遠本に迷えり」と文。意に云く、本化の菩薩は但遠本を知るのみに非ず、元よりまた近迹をも知れり。譬えば「本より迹を垂れ、月の水に現るるが如し」というが如し。今の弟子は近迹を知らざるのみに非ず、猶亦遠本にも迷えり。故に「天月を識らず、但池月を観ず」というが如し等云云。故に知んぬ、今日の弟子は遠近倶に迷い、本化の菩薩は本迹倶に明らかなり。何ぞ本化の知見、元来一致といわんや是一。 凡そ吾が祖の一代諸経の浅深勝劣を判ずることは、専ら如来の金言を守り、偏に今経の明文に依れり。何ぞ機情昇進に約すといわんや是二。 宗祖の云く、二十三・三十一に云く「日本国中の諸人・一同に如説修行の人と申し候は諸乗一仏乗と開会しぬれば何れの法も皆法華経にして勝劣浅深ある事なし(乃至)予が云く然らず所詮・仏法を修行せんには人の言を用う可らず只仰いで仏の金言をまほるべきなり(乃至)此の経の序分無量義経に(乃至)四十余年・未顕真実」と已上。 宗祖の本意分明なり。権実相対既に爾なり。本迹相対も例して爾なり。寿量品に云く「誠諦之語」と。また云く「楽於小法」と。また云く「我実成仏」と云云。故に知んぬ、爾前・迹門は随他意なり、小法なり、未顕真実なることを。本門は随自意なり、大法なり、已顕真実なり。如来の金言、勝劣分明なり。何ぞ機情の移転といわんや是三。 仮令開会の迹門なりとも仍是れ体内の迹なり。体内の本に及ばず。 例せば十章抄に「設い開会をさとれる念仏なりとも猶体内の権なり体内の実に及ばず」というが如し。 故に十法界抄に云く「本門顕れ已りぬれば迹門の仏因は即ち本門の仏果なるが故に天月水月本有の法と成りて本迹倶に三世常住と顕るるなり」と云云。当に知るべし、三世常住の水月は三世常住の天月に及ばざるなり。別に義章あり、故に略してこれを示す。若し爾らば顕本已後も本迹の勝劣は宛然なり。何ぞ顕本已後は本迹一致といわんや是四。 (注)以下に方便品の長行を載せる。十如是の文に続けて読誦する。 妙法蓮華経 方便品 第二 爾時世尊。告舎利弗。汝已慇懃三請。豈得不説。汝今諦聴。善思念之。吾当為汝。分別解説。説此語時。会中有比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。五千人等。即従座起。礼仏而退。所以者何。此輩罪根深重。及増上慢。未得謂得。未証謂証。有如此失。是以不住。世尊黙然。而不制止。爾時仏告舎利弗。我今此衆。無復枝葉。純有貞実。舎利弗。如是増上慢人。退亦佳矣。汝今善聴。当為汝説。舎利弗言。唯然世尊。願楽欲聞。仏告舎利弗。如是妙法。諸仏如来。時乃説之。如優曇鉢華。時一現耳。舎利弗。汝等当信。仏之所説。言不虚妄。舎利弗。諸仏随宜説法。意趣難解。所以者何。我以無数方便。種種因縁。譬諭言辞。演説諸法。是法非思量分別。之所能解。唯有諸仏。乃能知之。所以者何。諸仏世尊。唯以一大事因縁故。出現於世。舎利弗。云何名諸仏世尊。唯以一大事因縁故。出現於世。諸仏世尊。欲令衆生。開仏知見。使得清浄故。出現於世。欲示衆生。仏知見故。出現於世。欲令衆生。悟仏知見故。出現於世。欲令衆生。入仏知見道故。出現於世。舎利弗。是為諸仏。唯以一大事因縁故。出現於世。仏告舎利弗。諸仏如来。但教化菩薩。諸有所作。常為一事。唯以仏之知見。示悟衆生。舎利弗。如来但以。一仏乗故。為衆生説法。無有余乗。若二若三。舎利弗。一切十方諸仏。法亦如是。舎利弗。過去諸仏。以無量無数方便。種種因縁。譬諭言辞。而為衆生。演説諸法。是法皆為。一仏乗故。是諸衆生。従諸仏聞法。究竟皆得。一切種智。舎利弗。未来諸仏。当出於世。亦以無量。無数方便。種種因縁。譬諭言辞。而為 |