2024年 09月 25日
【妙法曼陀羅供養事】 ■出筆時期:文永十年(西暦1273年) 五十二歳 御作。
■出筆場所:佐渡・一谷、一谷入道の屋敷にて。 ■出筆の経緯:本書は佐渡で日蓮大聖人と念仏僧らとの法論「塚原問答」に立ち会い、念仏信仰をその場で捨て、大聖人に帰依した阿仏房の女房、千日尼に送られた書と思われる。阿仏房と千日尼は人目を忍んで、夜間食料などを塚原三昧堂に運んで大聖人を外護された。その志を称え大聖人はご本尊を夫妻に下付したものと思われ、本書で御本尊の意義について「日本国一同に一闡提大謗法の者となる<中略>末代の一切衆生にとって大医、良薬」であると断じておられる。 ■ご真筆: 現存していない。 [妙法曼陀羅供養事 本文] 妙法蓮華経の御本尊・供養候いぬ。此の曼陀羅(まんだら)は文字は五字七字にて候へども三世の諸仏の御師、一切の女人の成仏の印文なり。冥途(めいど)にはともしびとなり、死出(しで)の山にては良馬(りょうめ)となり、天には日月の如し、地には須弥山(しゅみせん)の如し。生死海の船なり、成仏得道の導師なり。此の大曼陀羅は仏滅後・二千二百二十余年の間、一閻浮提(いちえんぶだい)の内には未だひろまらせ給はず。 病によりて薬あり。軽病には凡薬をほどこし、重病には仙薬をあたうべし。仏滅後より今までは二千二百二十余年の間は、人の煩悩(ぼんのう)と罪業の病・軽かりしかば、智者と申す医師(くすし)たち・つづき出でさせ給いて病に随つて薬をあたえ給いき。所謂・倶舎(いわゆる・くしゃ)宗・成実(じょうじつ)宗・律宗・法相(ほっそう)宗・三論宗・真言宗・華厳宗・天台宗・浄土宗・禅宗等なり。彼の宗宗に一一に薬あり。所謂・華厳の六相十玄・三論の八不(はっぷ)中道・法相の唯識観・律宗の二百五十戒・浄土宗の弥陀の名号・禅宗の見性成仏・真言宗の五輪観・天台宗の一念三千等なり。 今の世は既に末法にのぞみて諸宗の機(き)にあらざる上、日本国一同に一闡提(いっせんだい)・大謗法の者となる。又物に譬(たと)うれば父母を殺す罪・謀叛(むほん)ををこせる科(とが)・出仏身血(すいぶつしんけつ)等の重罪等にも過ぎたり。三千大千世界の一切衆生の人の眼をぬける罪よりも深く、十方世界の堂塔を焼きはらへるよりも超えたる大罪を、一人して作れる程の衆生・日本国に充満せり。されば天は日日に眼をいからして日本国をにらめ、地神は忿(いか)りを作して時時に身をふるうなり。 然るに我が朝の一切衆生は皆我が身に科(とが)なしと思ひ、必ず往生すべし・成仏をとげんと思へり。赫赫(かくかく)たる日輪をも目無き者は見ず知らず、譬えばたいこ(鼓)の如くなる地震をも・ねぶれる者の心には・おぼえず。日本国の一切衆生も是くの如し。女人よりも男子の科(とが)は・ををく、男子よりも尼のとがは重し。尼よりも僧の科(とが)はををく、破戒の僧よりも持戒の法師のとがは重し。持戒の僧よりも智者の科は・をもかるべし。此等は癩病(らいびょう)の中の白癩病・白癩病の中の大白癩病なり。 末代の一切衆生はいかなる大医・いかなる良薬を以てか治す可きとかんがへ候へば、大日如来の智拳(ちけん)の印・並びに大日の真言・阿弥陀如来の四十八願・薬師如来の十二大願・衆病悉除(しゅびょうしつじょ)の誓ひも此の薬には及ぶべからず。つやつや病・消滅せざる上・いよいよ倍増すべし。 此等の末法の時のために教主釈尊、多宝如来・十方分身の諸仏を集めさせ給うて一の仙薬をとどめ給へり、所謂(いわゆる)妙法蓮華経の五(いつつ)の文字なり。此の文字をば法慧(ほうえ)・功徳林・金剛薩埵(さった)・普賢(ふげん)・文殊(もんじゅ)・薬王・観音等にも・あつらへさせ給はず。何に況んや迦葉(かしょう)・舎利弗(しゃりほつ)等をや。上行菩薩等と申して四人の大菩薩まします。此の菩薩は釈迦如来・五百塵点劫(じんてんごう)よりこのかた、御弟子とならせ給いて一念も仏を・わすれず・まします大菩薩を召し出だして授けさせ給へり。 されば此の良薬を持たん女人等をば此の四人の大菩薩・前後左右に立(たち)そひて、此の女人たたせ給へば此の大菩薩も立たせ給ふ・乃至(ないし)此の女人・道を行く時は此の菩薩も道を行き給ふ。譬(たと)へば・かげと身と、水と魚と、声とひびきと、月と光との如し。此の四大菩薩・南無妙法蓮華経と唱えたてまつる女人をはな(離)るるならば、釈迦・多宝・十方分身の諸仏の御勘気(ごかんき)を此の菩薩の身に蒙(こうむ)らせ給うべし。提婆(だいば)よりも罪深く、瞿迦利(くぎゃり)よりも大妄語のものたるべしと・をぼしめすべし。あら悦ばしや・あら悦ばしや、南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経。 日 蓮 花押
by johsei1129
| 2024-09-25 10:46
| 阿仏房・千日尼
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