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日蓮大聖人『御書』解説

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2024年 09月 16日

発迹顕本を実現した「竜口法難」を予言した書【金吾殿御返事(大師講御書)】

【金吾殿御返事(大師講御書)】  
■出筆時期:文永六年(1269年)十一月二十八日 四十八歳御作
■出筆場所:鎌倉 草庵にて
■出筆の経緯:本書は鎌倉武士で問註所勤務の強信徒・大田乗明(金吾)に与えられた書である。金吾というと同じく強信徒の四条金吾を思い起こすが、そもそも「金吾」とは幕府の官職名である衛門府(検察・警察)を中国の官称(唐名)に当てはめたものである。つまり四条金吾も、大田乗明(金吾)も幕府の同じ部門に所属していたことになる。
 本書冒頭で大聖人は、毎月定期的に開催していた天台大師・法門の講義「大師講」へのご供養を賜ったことについて述べられている。そのため本書の別名は「大師講御書」と言われている。
 本書の核心は、前年蒙古より牒状が幕府に到来、「立正安国論」で予言した他国侵逼難の的中を受け、大聖人は執権北条時宗始め11人の幕臣・極楽寺良観らの僧侶に「公場対決」を迫る書状送ったが、全く音沙汰がなかった。さらにこの年九月、再び蒙古来牒を受け11月に再度各所に書状を送るが、少々返事あるものの「公場対決」は実現しなかった。この事態を受け大聖人は「これほど幕府を諫暁すれば流罪死罪は必定と思われるのに、何も咎めがないのは不思議なことと思われる。これまで法華経のゆへに流罪には及んだが、今死罪に合わないのは不本意である」と言い切っている。さらに法華経の行者として死罪におよぶがために、方々に強く諫言してきたのだとさえ記している。この大聖人の大望は二年後の「竜口法難」で実現し、法華経の行者としての迹を払い、末法の本仏としての本地を顕す(発迹顕本)ことになる。そして流罪先の佐渡にて法本尊開顕の書「如来滅後五五百歳始観心本尊抄」を著し、「御本尊」をご図現なされている。その意味において本書は、発迹顕本を実現した「竜口法難」を予言した書であると言えよう。 [英語版]
■ご真筆: 中山法華経寺所蔵
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[真筆本文:下記緑字箇所]

[金吾殿御返事(大師講御書) 本文]    [英語版]

大師講に鵞目五
連給び候ひ了んぬ。此の大師講
三、四年に始めて候が、
今年は第一にて候ひつ
るに候。
抑(そもそも)、此の法門の事、勘文
の有無に依りて弘まるべきか、弘まらざるか。
去年方々に申して
候ひしかども、いなせ(否応)の返事
候はず候。
今年十一月の比(ころ)、方々へ申して候へば、少々返事あるかたも候。
をほかた(大方)人の心もやわらぎて、さもやと・をぼしたりげに候。又上のげざん(見参)にも入りて候やらむ。
これほどの僻事申して候へば、流・死の二罪の内は一定(いちじょう)と存ぜしが、いまゝでなにと申す事も候はぬは不思議とをぼへ候。いたれる道理にて候やらむ。又自界叛逆難の経文も値ふべきにて候やらむ。山門なんども・いにしえにも百千万億倍すぎて動揺とうけ給はり候。それならず子細ども候やらん。震旦・高麗すでに禅門・念仏になりて、守護の善神の去るかの間、彼の蒙古に従ひ候ひぬ。我が朝(日本国)又此の邪法弘まりて天台法華宗を忽諸のゆへに山門安穏ならず。師檀違叛の国と成り候ひぬれば十が八・九はいかんがとみへ候。

 人身すでにうけぬ、邪師又まぬかれぬ。法華経のゆへに流罪に及びぬ。今死罪に行なはれぬこそ本意ならず候へ。あわれ・さる事の出来し候へかしとこそ・はげみ候ひて方々に強言をかきて挙げをき候なり。すでに年五十に及びぬ。余命いくばくならず。

 いたづらに曠野にすてん身を・同じくは一乗法華のかたになげて、雪山童子・薬王菩薩の跡をおひ、仙予・有徳の名を後代に留めて法華・涅槃経に説き入れられまいらせんと願うところなり。南無妙法蓮華経。

 十一月二十八日           日蓮花押

 御返事

 止観の五、正月一日よりよみ候ひて現世安穏・後生善処と祈請仕り候。便宜に給ふべく候。本末は失せて候ひしかども、これにすり(修理)させて候。多く本入るべきに申し候。
(※上記追記箇所訳:摩訶止観・第五を正月一日より読んで「現世安穏・後生善処」と祈請しております。送って頂いた摩訶止観の最初と末尾は欠損していましたけど修理させました。大師講のために本(摩訶止観等)が多く必要なので手配をお願いします)




by johsei1129 | 2024-09-16 11:54 | 大田乗明・尼御前 | Trackback | Comments(0)


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