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日蓮大聖人『御書』解説

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2019年 09月 15日

「仏経と行者と檀那と三事相応して一事を成ぜん」と説いた【問注得意抄】

【問注得意抄】
■出筆時期:文永六年(1269年)五月九日 四八歳御作
■出筆場所:鎌倉 草庵にて
■出筆の経緯:本書の宛先は三人御中となっている。本文の出だしに土木入道殿とあるので、一人は富木常忍であるが、他の一人は大田乗明、残りの一人は四条金吾か曾谷教信のいずれかと見られている。内容は、法華経の布教に関係するトラブルで富木常忍を筆頭に3名の信徒が鎌倉幕府の問注所(当時は一審制のため事実上最高裁判所の位置づけとなる)に呼び出され、申し開きをすることになった。恐らく3人は問註所に出廷する前に大聖人に挨拶に伺ったものと思われる。その時大聖人が、問註所での対応について細々した指導をしたためた本書を当日用意しておき、富木殿に渡したものと思われる。決して大々的なものではないが、大聖人が立正安国論で国家諌暁して以来、長年願っていた公的な場で堂々と法論を論ずることができる機会を得たことには変わりがなく、本書で大聖人は三人の信徒を「三千年に一度花さき菓(このみ)なる優曇華(うどんげ)に値へるの身」と励まされている。
■ご真筆: 中山法華経寺 所蔵(重要文化財)
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[問注得意抄 本文] 

 今日召し合はせ御問注の由承り候。各々御所念の如くならば、三千年に一度花さき・菓(このみ)なる優曇華に値へるの身か。西王母の薗(その)の桃、九千年に三度之を得るは東方朔(とうほうさく)が心か。一期の幸ひ、何事か之に如かん。御成敗の甲乙は且く之を置く。前立ちて欝念(うつねん)を開発せんか。

 但し兼日・御存知有りと雖も・駿馬にも鞭(むち)うつの理之有り。今日の御出仕・公庭に望みての後は、設ひ知音(ちいん)たりと雖も・傍輩に向かひて雑言を止めらるべし。両方召し合はせの時、御奉行人・訴陳の状之を読むの剋(きざ)み、何事に付けても御奉行人・御尋ね無からんの外(ほか)は一言をも出だすべからざるか。設ひ敵人等悪口を吐くと雖も各々当身の事、一・二度までは聞かざるが如くすべし。三度に及ぶの時、顔貌(げんみょう)を変ぜず・麁言(そげん)を出ださず・軟語(なんご)を以て申すべし。

 各々は一処の同輩なり。私に於ては全く違恨(いこん)無きの由之を申さるべきか。又御供の雑人等に能く能く禁止を加へ、喧嘩を出だすべからざるか。是くの如きの事・書札に尽くし難し。心を以て御斟酌(しんしゃく)有るべきか。

 此等の嬌言(きょうげん)を出だす事恐れを存ずと雖も、仏経と行者と檀那と三事相応して一事を成ぜんが為に愚言を出だす処なり。恐々謹言。

 五月九日          日 蓮 花押

 三人御中




by johsei1129 | 2019-09-15 08:45 | 富木常忍・尼御前 | Trackback | Comments(0)


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