丑寅勤行 総本山大石寺・大客殿
問う、古より今に至るまで毎朝の行事、丑寅の刻みに之を勤む、其の謂れ如何。
答う、丑の終り寅の始めは即ち是れ陰陽生死の中間にして三世諸仏成道の時なり。是の故に世尊は明星の出づる時、豁然として大悟し、吾が祖は子丑に頚を刎ねられ魂魄佐渡に到る云云。当山の行事亦復斯くの若し、朝々刹那の成道、半偈の成道を唱うるなり。
本因妙抄に云わく「天台云わく刹那成道、半偈成道云云、伝教云わく仏界の智は九界を境と為し、九界の智は仏界を境と為す、境智互いに冥薫し凡聖常恒なり、此れを刹那成道と謂い、三道即三徳と解すれば諸悪儵ちに真善なり、是れを半偈成道と名づく。今会釈して云わく、刹那半偈の成道も吾が家の勝劣修行、南無妙法蓮華経の一言に摂尽する者なり」云云。
当流行事抄畢んぬ
享保十乙巳歳五月下旬上野大坊に於て之を書す
六十一歳 日 寛 在判
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