第三に時を知るとは、今末法に入り一切の仏法悉く皆滅尽す。故に大集経に「後五百歳白法隠没」と云うなり。正に爾の時に当たりて三大秘法広宣流布す、故に薬王品に「後五百歳広宣流布」と説くなり、宗祖云わく「後五百歳に一切の仏法滅する時、上行菩薩に妙法蓮華経の五字を持たしめ、謗法一闡提の輩の白癩病の良薬と為す」云云。具さには撰時抄の如し。此くの如く知るを則ち之時を知ると謂うなり。
第四に国を知るとは、通じて之を論ずれば法華有縁の国なり、別して之を論ずれば本門の三大秘法広宣流布の根本の妙国なり。
日本の名に且く三意有り。
一には所弘の法を表わして日本と名づくるなり。謂わく、日は是れ能譬・本は是れ所譬、法譬倶に挙げて日本と名づくるなり。経(薬王品)に云わく「又日天子の能く諸の闇を除くが如し」云云。
宗祖云わく「日蓮云わく、日は本門に譬うるなり」云云。日は文底独一本門に譬うるなり、四条抄に「名の目出度きは日本第一」と云う是れなり云云。
二に能弘の人を表わして日本と名づくるなり。謂わく、日蓮の本国の故なり。
故に顕仏未来記に云わく「天竺・漢土に亦法華経の行者之有るか如何。答えて云わく、四天下の中に全く二の日無し、四海の内豈両主有らんや」云云。故に知んぬ、此の国は日蓮の本国なり云云。
三には本門流布の根本を表して日本と名づくるなり。謂わく、日は即ち文底独一の本門三大秘法なり、本は即ち此の秘法広宣流布の根本なり、故に日本と云うなり。応に知るべし、月は西より東に向う、日は東より西に入る、之を思い合わすべし。然れば則ち日本国は本因妙の教主日蓮大聖の本国にして本門の三大秘法広宣流布の根本の妙国なり。
問う、若し爾らば蓮祖出世の後、応に日本と名づくべし、何ぞ開闢已来日本国と名づくるや。
答う、是れ霊瑞感通し嘉名早く立つる故なり、例せば不害国の名の如し。記の一末に云わく「摩訶提は此に不害と云う。劫初より已来刑殺無き故なり、阿闍世に至りて指を截るを刑と為す、後自ら指を齧むに痛し、復此の刑を息む。仏当に其の地に生まるべき故に吉兆預め彰わる、所以に先ず不害国の名を置く」等云云。
今復是くの如し。蓮祖当に此の国に生まれ独一本門の妙法を弘通すべき故に吉兆預め彰わる。所以に先より日本国の名を置くなり、彼此異なりと雖も其の趣是れ同じきなり、豈之を信ぜざるべけんや。此くの如く知るを則ち之国を知ると謂うなり。
三大秘法の「教法流布の先後」を知る につづく
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