2019年 12月 15日
日蓮はつね日頃、信力強盛な者に成仏の日が絶対にくると明言していた。そして信心ある者の臨終には、自分がかならず現われるといった。日蓮は死にさいし、立ち会うという。まるで冥界の主であるかのように。 このことを弟子檀那の手紙にくりかえし説いている。 但し日蓮をつえはしらともたのみ給ふべし。けはしき山、あしき道、つえをつきぬればたをれず。殊に手をひかれぬればまろぶ事なし。南無妙法蓮華経は死出の山にてはつえはしらとなり給へ。釈迦仏・多宝仏・上行等の四菩薩は手を取り給ふべし。日蓮さきに立ち候はゞ、御迎へにまいり候事もやあらんずらん。また先に行かせ給はゞ、日蓮必ず閻魔法王にも委しく申すべく候。此の事少しもそら事あるべからず。日蓮法華経の文の如くならば通塞の案内者なり。只一心に信心おはして霊山を期し給へ。『弥源太殿御返事』 日蓮こいしくをはせば、常に出づる日、ゆうべにいづる月ををがませ給へ。いつとなく日月にかげをうかぶる身なり。又後生には霊山浄土にまいりあひまいらせん。 『国府尼御前御書』 又若し命ともなるならば法華経ばし恨みさせ給ふなよ。又閻魔王宮にしては何とか仰せあるべき。をこがましき事とはおぼすとも、其の時は日蓮が檀那なりとこそ仰せあらんずらめ。『一谷入道女房御書』 中有の道にいかなる事もいできたり候はゞ、日蓮がでしなりとなのらせ給へ、わずかの日本国なれども、さがみ殿のうちのものと申すをば、さうなくおそるゝ事候。 日蓮は日本第一のふたうの法師、たゞし法華経を信じ候事は、一閻浮提第一の聖人なり。其の名は十方の浄土にきこえぬ。定めて天地もしりぬらん。日蓮が弟子となのらせ給はゞ、いかなる悪鬼等なりとも、よもしらぬよしは申さじとおぼすべし。『妙心尼御前御返事』 我等は穢土に候へども心は霊山に住むべし。御面を見てはなにかせん。心こそ大切に候へ。いつかいつか釈迦仏のをはします霊山会上にまひりあひ候はん。 『千日尼御前御返事』 相かまへて相かまへて、自他の生死はしらねども、御臨終のきざみ、生死の中間に、日蓮かならずむかいにまいり候べし。『上野殿御返事』 故に法性の空に自在にとびゆく車をこそ大白牛車とは申すなれ。我より後に来たり給はん人々は、この車にめされて霊山へ御出で有るべく候。日蓮も同じ車に乗りて御迎ひにまかり向かふべく候。 『大白牛車御消息』
御義口伝に云はく、皆とは十界なり、共とは如我等無異なり、至とは極果の住処なり、宝処とは霊山なり。日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉る者は一同に皆共至宝処なり。共の一字は日蓮に共する時は宝処に至るべし、不共ならば阿鼻大城に堕つべし云云。 『御義口伝上 化城喩品 第七 皆共至宝処の事』 弟子たちはこの手紙を読んで奮いたつ。生きては日蓮に随い、死しては日蓮にまみえる。この死への確信があればこそ、今の生が充実するのだ。 若有人 受持読誦。解其義趣。 若し人有りて 受持し読誦し、その義趣を解す 是人命終為千仏授手。 是の人命終せば、千仏の手を授けて、 法華経を信じる者には臨終の時、千の仏がむかえにきて手をさしのべるという。恐れることなく、悪道にも堕ちさせない。一仏二仏の手ではない、千仏の手がすくいあげるという。当時の強信徒は、臨終の間際に日蓮がこの千仏を率いてやってくると固く信じていた。 逆に謗法不信の者は獄卒がむかえにくるとする。 見有読誦 書持経者。 経を読誦し書持すること有らん者を見て、 此人罪報 汝今復聴。 此の人の罪報を汝今復聴け。 一方、法華不信の者は捕縛されて牢獄へゆくという。なんという厳しさであろうか。
by johsei1129
| 2019-12-15 07:40
| 小説 日蓮の生涯 下
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