2014年 11月 14日
【白米一俵御書)】 ■出筆時期:弘安三年(西暦1280年) 五十九歳御作。 ■出筆場所:身延山中 草庵にて。 ■出筆の経緯:本抄を送られた人物の名は不明ですが、白米一俵その他のご供養の品々を身延山中の大聖人のもとに送られた信徒への返書となっております。「仏になり候事は、凡夫は志ざしと申す文字を心へて仏になり候なり」と説くと共に、法華経第六巻の「一切世間の治生産業は皆実相と相い違背せず」の文を引き「法華経はしからず、やがて世間の法が仏法の全体と釈せられて候」と断じておられます。また最後に「白米は白米にはあらず・すなはち命なり」と書き記し、この度の白米一俵は単なるご供養ではなく、末法の本仏・日蓮の命をつなぐ尊い志であることを暗に指し示しておられると拝します。 ■ご真筆: 富士・大石寺所蔵。 [白米一俵御書ご真筆:富士大石寺所蔵] [白米一俵御書 本文] 白米一俵・けいも(毛芋)ひとたわら(一俵)・こふのり(河海苔)ひとかご、御つかいをもつてわざわざをくられて候。 人にも二つの財(たから)あり。一には衣。二には食なり。経に云く「有情は食に依つて住す」と云云。文の心は生ある者は衣と食とによつて世にすむと申す心なり。魚は水にすむ、水を宝とす。木は地の上にを(生)いて候、地を財とす。人は食によつて生あり、食を財とす。 いのちと申す物は一切の財の中に第一の財(たから)なり。遍満三千界・無有直身命(むうじきしんみょう)ととかれて三千大千世界にみ(満)てて候財も、いのちにはかへぬ事に候なり。さればいのちは・ともしび(灯)のごとし、食はあぶらのごとし。あぶらつ(尽)くればともしびきへぬ、食なければいのち・た(断)へぬ。 一切のかみ・仏をうやまいたてまつる始めの句には南無と申す文字をを(置)き候なり。南無と申すはいかなる事ぞと申すに、南無と申すは天竺のことばにて候。漢土・日本には帰命と申す。帰命と申すは我が命を仏に奉ると申す事なり。我が身には分に随いて妻子・眷属・所領・金銀等をもてる人人もあり、又財なき人人もあり。財あるも財なきも・命と申す財にすぎて候財は候はず。さればいにしへ(古)の聖人・賢人と申すは命を仏にまいらせて仏にはなり候なり。 いわゆる雪山童子と申せし人は身を鬼にまかせて八字をならへり。薬王菩薩と申せし人は臂(ひじ)をやいて法華経に奉る。我が朝にも聖徳太子と申せし人は手のかわ(皮)をは(剝)いで法華経をかき奉り、天智天皇と申せし国王は無名指と申すゆび(指)をたいて釈迦仏に奉る。此れ等は賢人・聖人の事なれば我等は叶いがたき事にて候。 ただし仏になり候事は凡夫は志ざしと申す文字を心へ(得)て仏になり候なり。志ざしと申すはなに事ぞと委細にかんがへて候へば、観心の法門なり。観心の法門と申すはなに事ぞとたづね候へば、ただ一つき(著)て候衣を法華経にまいらせ候が身のかわをわ(は)ぐにて候ぞ。うへたるよに・これはなしては・けう(今日)の命をつぐべき物もなきに、ただひとつ候ごれう(御料)を仏にまいらせ候が身命を仏にまいらせ候にて候ぞ。これは薬王のひぢ(臂)をやき、雪山童子の身を鬼にたびて候にもあい・をと(劣)らぬ功徳にて候へば、聖人の御ためには事供やう(養)、凡夫のためには理くやう(供養)、止観の第七の観心の檀ばら(波羅)蜜と申す法門なり。 まことのみち(道)は世間の事法にて候。金光明経には「若し深く世法を識(し)らば即ち是れ仏法なり」ととかれ、涅槃経には「一切世間の外道の経書は皆是れ仏説にして外道の説に非ず」と仰せられて候を、妙楽大師は法華経の第六の巻の「一切世間の治生産業は皆実相と相い違背(いはい)せず」との経文に引き合せて心をあらわされて候には、彼れ彼れの二経は深心の経経なれども、彼の経経は・いまだ心あさくして法華経に及ばざれば、世間の法を仏法に依せてしらせて候。法華経はしからず。やがて世間の法が仏法の全体と釈せられて候。 爾前の経の心心は、心より万法を生ず。譬へば心は大地のごとし、草木は万法のごとしと申す。法華経はしからず。心すなはち大地・大地則ち草木なり。爾前の経経の心は心のすむは月のごとし、心のきよきは花のごとし。法華経はしからず。月こそ心よ、花こそ心よと申す法門なり。 此れをもつてしろしめせ、白米は白米にはあらず・すなはち命なり。 ※この文以降はご真筆が残されていないため不明です。
by johsei1129
| 2014-11-14 20:30
| 弟子・信徒その他への消息
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