2019年 12月 02日
[五人所破抄 本文]その二 又五人一同に云く、凡そ倭漢両朝の章疏(しょうじょ)を披いて本迹二門の元意を探るに、判教は玄文に尽き・弘通は残る所無し。何ぞ天台一宗の外に胸臆(くおく)の異義を構えんや。拙いかな尊高の台嶺を褊(さみ)して辺鄙(へんぴ)の富山を崇み、明静の止観を閣(さしお)いて仮字(かなじ)の消息を執す。誠に是れ愚癡を一身に招き、耻辱を先師に及ぼす者なり。僻案(びゃくあん)の至りなり。甚だ以て然るべからず。若し聖人の製作と号し後代に伝えんと欲せば、宜く卑賤の倭言を改め漢字を用ゆべし云云。 日興が云く、夫れ竜樹・天親は即ち四依(しえ)の大士、円頓一実の中道を申(の)ぶと雖も、而も権を以て面と為し・実を隠して裏に用ゆ。天台伝教は亦五品の行位にして専ら本迹二門の不同を分ち、而も迹を弘め・衆を救い・本を残して末に譲りたまふ。内鑒(ないがん)は然りと雖も外は時宜に適うかの故に・或は知らざるの相を示し・或は知つて而も未だ闡揚(せんよう)せず。然るに今、本迹両経共に天台の弘通と称するの条、経文に違背し・解釈は拠(よりどころ)を失う。 所以は宝塔三箇の鳳詔に驚き、勧持二万の勅答を挙げて此土の弘経を申ぶと雖も・迹化の菩薩に許さず。過八恒沙の競望(けいもう)を止めて不須汝等護持此経と示し、地涌千界の菩薩を召して如来一切所有の法を授く。迹化他方の極位すら尚劫数の塵点に暗し。止善男子の金言に豈幽微の実本を許さんや。本門五字の肝要は上行菩薩の付嘱なり。誰か胸臆なりと称せんや 委細文の如し経を開いて見るべし。 次に天台大師・経文を消したまふに「如来之を止むるに凡そ三義有り。汝等各各自ら己が任有り。若し此の土に住すれば彼の利益を廃せん。又他方は此土に結縁の事浅し。宣授せんと欲すと雖も必ず巨益(こやく)無からん。又若し之を許さば則ち下を召すことを得ず、下若し来たらずんば迹も破することを得ず・遠も顕はすことを得ず。是を三義と為す。 如来之を止めて下方を召して来たらしむるに亦三義有り。是れ我が弟子応(まさ)に我が法を弘むべし。縁・深厚なるを以て能く此土に遍して益し、分身の土に遍して益し、他方の土に遍して益し、又開近顕遠することを得。是の故に彼を止めて下を召すなり」文。 又云く「爾時仏告上行の下、是れ第三に結要付嘱」と云云。伝教大師は本門を慕いて「正像稍過ぎ已つて末法太だ近きに有り、法華一乗の機・今正しく是れ其の時なり」文。又云く「代を語れば則ち像の終り・末の初め、地を原(たず)ぬれば則ち唐の東・羯(かつ)の西、人を尋ぬれば則ち五濁の生・闘諍の時。経に云く、猶多怨嫉況滅度後と。此の言・良(まこと)に以(ゆえ)有るなり」云云。 加之(しかのみならず)記の八に大論を引いて云はく「法華は是れ秘密なれば諸の菩薩に付す」と。今の下文に下方を召すが如く尚本眷属を待つ。験(あきら)けし、余は未だ堪へざることを。輔正(ふしょう)記に云く「付嘱を明せば・此の経をば唯下方涌出の菩薩に付す。何を以ての故に爾(しか)る。法是れ久成(くじょう)の法なるに由るが故に・久成の人に付す」と。論釈一に非ず 繁を恐れて之を略す。 観音・薬王は既に迹化に居す、南岳・天台誰人の後身ぞや。正像過ぎて二千年、未だ上行の出現を聞かず。末法も亦二百余廻なれば本門流布の時節なり。何ぞ一部の総釈を以て猥(みだり)に三時の弘経を難ぜんや。 次に日本は惣名なり。亦本朝を扶桑国と云う。富士とは郡の号、即ち大日蓮華山と称す。爰に知んぬ、先師自然の名号と妙法蓮華の経題と山州共に相応す。弘通・此の地に在るなり。遠く異朝の天台山を訪らえば台星の所居なり。大師・彼の深洞を卜して迹門を建立す。近く我が国の大日山を尋ぬれば日天の能住なり。聖人・此の高峰を撰んで本門を弘めんと欲す。閻浮第一の富山なればなり。五人争でか辺鄙(へんぴ)と下さんや。 次に上行菩薩は本極法身・微妙深遠にして寂光に居すと雖も、未了の者の為に事を以て理を顕はす。地より涌出したまいて以来、付を本門に承け、時を末法に待ち、生を我朝に降し、訓を仮字に示す。祖師の鑒機(かんき)失(とが)無くんば、遺弟の改転定めて恐れ有らんか。此等の所勘に依つて浅智の仰信(こうしん)を致すのみ。 抑(そもそも)梵漢の両字と扶桑の一点とは時に依り・機に随つて互に優劣無しと雖も、倩(つらつら)上聖被下の善巧を思うに殆んど天竺震旦の方便に超えたり。何ぞ倭国の風俗を蔑如して・必ずしも漢家の水露を崇重せん。 但し西天の仏法東漸の時、既に梵音を飜じて倭漢(わかん)に伝うるが如く、本朝の聖語も広宣の日は亦仮字を訳して梵震に通ず可し。遠沾(おんでん)の飜訳は諍論に及ばず。雅意の改変は独り悲哀を懐(いだ)く者なり。 [五人所破抄 本文]その三に続く
by johsei1129
| 2019-12-02 21:52
| 日興上人
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