【百六箇抄(ひゃくろっかしょう)】
■出筆時期:弘安三年 (西暦1280年)1月11日 五十九歳御作。
■出筆場所:身延山 草庵にて
■出筆の経緯:日蓮大聖人から直弟子日興上人に授けられた相伝書。末法の本仏の立場で、法門の勝劣を脱に五十、種に五十六箇条に本迹を立て分けて講説。ご自身滅後における正しい法門の流布のため、弟子への相伝書としてしたためた。
■ご真筆: 曽存(北山本門寺に存在したが紛失)。時代写本:日辰書写(要法寺所蔵)、日我書写(妙法寺所蔵)、日俊書写(大石寺所蔵)
[百六箇抄 本文]その一
本因妙の教主・本門の大師・日蓮 謹んで之を結要(けっちょう)す。
万年救護(くご)・写瓶(しゃびょう)の弟子日興に之を授与す云云。脱種合して一百六箇之れ在り。
霊山浄土・多宝塔中(たっちゅう)・久遠実成・無上覚王・直授相承(じきじゅ・そうじょう)、本迹勝劣の口決相伝譜、
久遠名字より已来(このか)た本因本果の主・本地自受用報身の垂迹・上行菩薩の再誕・
本門の大師日蓮・詮要す。
本 迹 本 迹
一、理の一念三千・一心三観の本迹 三世諸仏の出世成道の脱益寿量の義理の三千、釈迦諸仏が仏心の妙法蓮華経の理観の一心に蘊在(うんざい)せる理なり。
本 迹 経の本迹は常の如し
二、大通・今日の法華本迹 久遠名字・本因妙を本として中間(ちゅうげん)・今日(こんにち)・下種する故に、久成を本と為し、中間・今日の本迹を倶に迹と為す者なり。
三、応仏一代の本迹 久遠下種・霊山得脱・妙法値遇(ちぐう)の衆生を利せん為に、無作三身・寂光浄土従り三眼三智をもつて九界を知見し、迹を垂れ・権を施し、後に説く妙経の故に今日の本迹共に迹と之を得る者なり。
[百六箇抄 本文]その二に続く