2019年 12月 01日
【法華本門宗血脈相承事(けちみゃく・そうじょうじ。別名:本因妙抄)】 ■出筆時期:弘安五年十月十一日(西暦1282年) 六十一歳御作 ■出筆場所:強信徒 池上宗仲の館にて ■出筆の経緯:弘安五年十月十三日に池上宗仲の館にて大聖人がご入滅なされる。その二日前に、唯受一人・本門弘通の大導師と定めた直弟子日興上人に、大聖人の法門を血脈相承するために認められた書である。 ■ご真筆: 現存しておりません。時代写本:日時書写本(大石寺所蔵) [法華本門宗血脈相承事(本因妙抄) 本文]その一 本因妙の行者日蓮 之を得・之を記す。 予が外用(げゆう)の師・伝教大師・生歳四十二歳の御時、仏立寺 天台山仏隴寺 の大和尚に値い奉り、義道を落居(らっこ)し生死一大事の秘法を決したもうの日、大唐の貞元(ていげん)二十一年 太歳乙酉 五月三日、三大章疏を伝え・各七面七重の口決を以て治定し給えり。 所謂玄義七面の決とは正釈の五重列名に約して決したもう。
一に依名判義(えみょうはんぎ)の一面。 名(みょう)とは法の分位に於いて施設(せせつ)す。 体とは宰主を義と為す。 宗とは所作の究竟なり。受持本因の所作に由つて口唱(くしょう)本果の究竟を得。 用(ゆう)とは証体・本因本果の上の功能(くのう)徳行なり。 教とは誡を義と為す。 誡とは本の為の迹為(な)れば、迹は即ち有名(うみょう)無実・無得道なるを実相の名題(みょうだい)は本迹同じければ本迹一致と思惟す可き事を・大いに誡(いましめ)んが為に三種の教相を起て・種熟脱の論不論を立つる者なり。経文解釈(げしゃく)明白なり。此くの如く文文・句句の名・妙正の深義・本迹勝劣の本意を顕はし給う者なり。 然りと雖も天台・伝教の御弘通は偏に理の上の法相(ほっそう)・迹化付属・像法の理位・観行五品の教主なれば迹を表と為して衆を救い、本を隠して裏に用る者なり。甚深甚深。秘す可し・秘す可し。 二に仏意(ぶっち)・機情二意の一面。 仏意は観行・相似(そうじ)を本と為し、機情は理即・名字を本と為す。何れも体用(たいゆう)を離れず。体用は法華の心智に依つて一代五時の次第浅深を開拓す。次に機情とは大通結縁の衆の為に四味の調養を設け法華に来入す。本迹二門乃至文文・句句、此の二意を以て分別す可き者なり。 三に四重浅深の一面。 名の四重有り。 一には名体無常の義・爾前の諸経諸宗なり。 二には体実名仮(たいじつ・みょうけ)、迹門・始覚無常なり。 三には名体倶実(くじつ)・本門本覚常住なり。 四には名体不思議・是れ観心直達(かんじんじきたつ)の南無妙法蓮華経なり。湛然(たんねん)の云く「雖脱在現(すいだつざいげん)・具騰本種(ぐとうほんしゅ)」云云。 次に体の四重とは 一に三諦隔歴(さんたい・きゃくりゃく)の体・爾前権教なり。 二に理性円融の体・迹門十四品なり。 三に三千本有(ほんぬ)の体・本門十四品なり。 四に自性不思議の体・我が内証の寿量品・事行の一念三千なり。 次に宗の四重とは、 一に因果異性(いしょう)の宗・方便権教なり。 二に因果同性の宗・是れ迹門なり。 三に因果並常(びょうじょう)の宗・即ち本門なり。 四に因果一念の宗。文に云く「芥爾(けに)も心有れば即ち三千を具す」と。是れ即ち末法純円・結要(けっちょう)付属の妙法なり云云。 次に用の四重とは、 一に神通幻化(じんずうげんけ)の用、今経已前に明かす所の仏・菩薩・出仮利生(しゅっけ・りしょう)の事。 二に普賢色身の用、即ち一身の中に於て十界を具する事なり。本迹一代五時に亘る。 三に無作常住の用、証道八相有り。無作(むさ)自在の事なり。 四に一心の化用、或説己身等なり。 次に教の四重とは、 一には但顕隔理(たんけんきゃくり)の教・権小なり。 二には教即実理の教、迹門なり。 三には自性会中の教、応仏の本門なり。 四には一心法界の教、寿量品の文の底の法門・自受用報身如来(じじゅゆう・ほうしんにょらい)の真実の本門・久遠一念の南無妙法蓮華経。雖脱在現・具騰本種の勝劣是なり。 第四に八重浅深の一面なり。 名の八重とは、一に名体永別(ようべつ)の名・二に名体不離の名・三に従体流出(じゅうたい・るしゅつ)の名・四に名体具足の名・五に本分常住の名・六に果海妙性(かかい・みょうしょう)の名・七に無相不思議の名・八に自性己己(ここ)の名、乃至教知る可し云云。文に任せて思惟す可きなり。 第五に還住当文(げんじゅうとうもん)の一面、四八の浅深を以て本迹勝劣を知る可し。 第六に但入己心の一面。始め大法東漸より第十の判教に至るまで文の生起を閣(さし)おき、一向に心理の勝劣に入れて正意を成ず可し。謂く、大法とは即ち行者の己心の異名なり云云。釈の意は文義の広博(こうばく)を離れて首題の理を専らにせよと釈し給うなり。 第七に出離生死の一面。心は一代応仏の寿量品を迹と為し、内証の寿量品を本と為し、釈尊・久遠名字即の身と位とに約して南無妙法蓮華経と唱え奉る。是を出離生死の一面と名く。本迹・約身約位(やくしん・やくい)の釈・之を思う可き者なり已上。 玄文畢る。 [法華本門宗血脈相承事(本因妙抄) 本文]その二に続く
by johsei1129
| 2019-12-01 18:21
| 血脈・相伝・講義
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