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2014年 06月 28日
[持妙法華問答抄 本文]その二 問うて云く、已今当の中に法華経・勝れたりと云う事はさも候べし。但し有る人師の云く、四十余年未顕真実と云うは法華経にて仏になる声聞の為なり。爾前の得益の菩薩の為には未顕真実と云うべからずと云う義をばいかが心得候べきや。 答えて云く、法華経は二乗の為なり菩薩の為にあらず、されば未顕真実と云う事・二乗に限る可しと云うは徳一大師の義か。此れは法相宗の人なり。此の事を伝教大師破し給うに「現在の麤食者(そじきしゃ)は偽章数巻を作りて法を謗じ・人を謗ず。何ぞ地獄に堕せざらんや」と破し給ひしかば徳一は其の語に責められて舌八にさけてうせ給いき。
未顕真実とは二乗の為なりと云はば最も理を得たり。其の故は如来布教の元旨は元より二乗の為なり。一代の化儀・三周の善巧(ぜんぎょう)・併(しかしなが)ら二乗を正意とし給へり。されば華厳経には地獄の衆生は仏になるとも二乗は仏になるべからずと嫌い、方等には高峯に蓮の生ぜざるように、二乗は仏の種をいりたりと云はれ、般若には五逆罪の者は仏になるべし、二乗は叶うべからずと捨てらる。かかる・あさましき捨者(すてもの)の仏になるを以て如来の本意とし法華経の規模とす。之に依つて天台の云く「華厳大品も之を治すること能わず。唯法華のみ有りて能く無学をして還つて善根を生じ、仏道を成ずることを得せしむ。所以に妙と称す。又闡提は心有り、猶作仏す可し。二乗は智を滅す、心生ず可からず。法華能く治す。復称して妙と為す」と云云。 此の文の心は委く申すに及ばず。誠に知んぬ華厳・方等・大品等の法薬も二乗の重病をばいやさず。又三悪道の罪人をも菩薩ぞと爾前の経にはゆるせども二乗をばゆるさず。之に依つて妙楽大師は「余趣を実に会すること諸経に或は有れども二乗は全く無し。故に菩薩に合して二乗に対し難きに従つて説く」と釈し給えり。 しかのみならず二乗の作仏は一切衆生の成仏を顕すと天台は判じ給へり。修羅が大海を渡らんをば是れ難しとやせん、嬰児(えいじ)の力士を投げん、何ぞたやすしとせん。然らば則ち仏性の種あるものは仏になるべしと爾前にも説けども未だ焦種の者作仏すべしとは説かず、かかる重病を・たやすく・いやすは独り法華の良薬なり。只須(すべから)く汝仏にならんと思はば慢のはたほこ(幡)をたをし、忿(いか)りの杖をすてて偏に一乗に帰すべし。名聞名利は今生のかざり、我慢偏執は後生のほだしなり。嗚呼(ああ)恥づべし・恥づべし、恐るべし・恐るべし。 問うて云く、一を以て万を察する事なれば・あらあら法華のいわれを聞くに・耳目始めて明かなり。但し法華経をば・いかように心得候てか速に菩提の岸に到るべきや。伝え聞く、一念三千の大虚には慧日くもる事なく、一心三観の広池には智水にごる事なき人こそ其の修行に堪えたる機にて候なれ。然るに南都の修学に臂(ひじ)をくだく事なかりしかば・瑜伽(ゆが)唯識にもくらし。北嶺の学文に眼を・さらさざりしかば止観玄義にも迷へり。天台・法相の両宗はほとぎ(瓫)を蒙りて壁に向へるが如し。されば法華の機には既にもれて候にこそ何んがし候べき。 答えて云く、利智精進にして観法修行するのみ法華の機ぞと云つて無智の人を妨ぐるは当世の学者の所行なり。是れ還つて愚癡邪見の至りなり。一切衆生・皆成仏道の教なれば上根・上機は観念・観法も然るべし、下根下機は唯信心肝要なり。されば経には「浄心に信敬して疑惑を生ぜざらん者は、地獄・餓鬼・畜生に堕ちずして十方の仏前に生ぜん」と説き給へり。いかにも信じて次の生の仏前を期すべきなり。譬えば高き岸の下に人ありて登ることあたはざらんに、又岸の上に人ありて繩をおろして此の繩にとりつかば我れ岸の上に引き登さんと云はんに、引く人の力を疑い・繩の弱からん事をあやぶみて手を納めて是をとらざらんが如し。争か岸の上に登る事をうべき。若し其の詞に随ひて手をのべ・是をとらへば即ち登る事をうべし。唯我一人・能為救護の仏の御力を疑い、以信得入の法華経の教への繩をあやぶみて、決定無有疑(けつじょう・むうぎ)の妙法を唱へ奉らざらんは力及ばず、菩提の岸に登る事難かるべし。 不信の者は堕在泥梨(だざいないり)の根元なり。されば経には「疑を生じて信ぜざらん者は則ち当に悪道に堕つべし」と説かれたり。受けがたき人身をうけ・値いがたき仏法にあひて・争(いかで)か虚(むなし)くて候べきぞ。同じく信を取るならば又大小・権実のある中に、諸仏出世の本意・衆生成仏の直道の一乗をこそ信ずべけれ。持つ処の御経の諸経に勝れてましませば・能く持つ人も亦諸人にまされり。爰(ここ)を以て経に云く「能く是の経を持つ者は一切衆生の中に於て亦為(これ)第一なり」と説き給へり。大聖の金言疑ひなし。然るに人・此の理をしらず見ずして名聞・狐疑・偏執を致せるは堕獄の基なり。 只願くは経を持ち・名を十方の仏陀の願海に流し・誉れを三世の菩薩の慈天に施すべし。然れば法華経を持ち奉る人は天竜・八部・諸大菩薩を以て我が眷属とする者なり。しかのみならず因身の肉団に果満の仏眼を備へ、有為(うい)の凡膚(ぼんふ)に無為の聖衣を著ぬれば三途に恐れなく・八難に憚りなし。七方便の山の頂に登りて九法界の雲を払ひ、無垢地の園に花開け・法性の空(そら)に月明かならん。是人於仏道・決定無有疑の文憑(たのみ)あり。唯我一人・能為救護の説疑ひなし。一念信解の功徳は五波羅蜜の行に越へ、五十展転の随喜は八十年の布施に勝れたり。頓証菩提の教は遥に群典に秀で顕本遠寿の説は永く諸乗に絶えたり。爰を以て八歳の竜女は大海より来つて経力を刹那に示し、本化(ほんげ)の上行は大地より涌出して仏寿を久遠に顕す。言語道断の経王・心行所滅の妙法なり。 然るに此の理をいるかせにして余経にひとしむるは謗法の至り・大罪の至極なり。譬へを取るに物なし。仏の神変にても何ぞ是を説き尽きん、菩薩の智力にても争か是を量るべき。されば譬喩品に云く「若し其の罪を説かば劫を窮むとも尽きず」と云へり。文の心は法華経を一度もそむける人の罪をば・劫を窮むとも説き尽し難しと見えたり。 然る間三世の諸仏の化導にも・もれ、恒沙の如来の法門にも捨てられ、冥きより冥きに入つて阿鼻大城の苦患・争でか免れん。誰か心あらん人・長劫の悲みを恐れざらんや。爰を以て経に云く「経を読誦し書持すること有らん者を見て、軽賤憎嫉して結恨を懐かん。其の人命終して阿鼻獄に入らん」と云云。文の心は法華経をよみ・たもたん者を見てかろしめ・いやしみ・にくみ・そねみ・うらみを・むすばん。其の人は命をはりて阿鼻大城に入らんと云へり。大聖の金言・誰か是を恐れざらんや。正直捨方便の明文・豈是を疑うべきや。然るに人皆・経文に背き、世悉く法理に迷へり。汝何ぞ悪友の教へに随はんや。されば邪師の法を信じ受くる者を名けて毒を飲む者なりと天台は釈し給へり。汝能く是を慎むべし・是を慎むべし。 [持妙法華問答抄 本文]その三に続く
by johsei1129
| 2014-06-28 21:02
| 重要法門(十大部除く)
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