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日蓮大聖人『御書』解説

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2024年 10月 01日

人の心を貫く妙法蓮華経は宇宙に遍満し一体であると明した【三世諸仏総勘文教相廃立】一

【三世諸仏総勘文教相廃立(はいりゅう】
■出筆時期:弘安2年10月(1279)58歳御作 門下の弟子一同にあてられたと思われる。
■出筆場所:身延山中 草庵
■出筆の経緯:
本抄で大聖人は「我が心の妙法蓮華経の一乗は十方の浄土に周編して闕(か)くること無し、十方の浄土の依報・正報の功徳荘厳は我が心の中に有つて片時も離るること無き三身即一の本覚の如来にて是の外(ほか)には法無し」と述べ、人の心を貫く妙法蓮華経は、人を取り巻く浄土(宇宙)に遍満し心と一体であることを明かし、さらに「此の心の一法より国土世間も出来する事なり。一代聖教とは此の事を説きたるなり。此れを八万四千の法蔵とは云うなり。是れ皆悉く一人の身中の法門にて有るなり。然れば八万四千の法蔵は我身一人の日記文書なり」と解き明かし、八万四千法蔵と膨大な釈尊の一代聖教はつまるところ、一人の心を説き明かしている」と明言している。
■ご真筆: 現存していない。

[三世諸仏総勘文教相廃立 本文] その一

          日蓮之を撰す

 夫れ一代聖教とは総(す)べて五十年の説教なり。是を一切経とは言うなり。此れを分ちて二と為す。一には化他・二には自行なり。
 一には化他の経とは法華経より前の四十二年の間説き給える諸の経教なり。此れをば権教(ごんきょう)と云い亦は方便と名づく。此れは四教の中には三蔵教・通教・別教の三教なり。五時の中には華厳・阿含・方等・般若なり。法華より前の四時の経教なり。又十界の中には前の九法界なり。
 又夢と寤(うつつ)との中には夢中の善悪なり。又夢をば権と云い、寤をば実と云うなり。是の故に夢は仮に有つて体性無し。故に名けて権と云うなり。寤は常住にして不変の心の体なるが故に此れを名けて実と為す。故に四十二年の諸の経教は生死(しょうじ)の夢の中の善悪の事を説く、故に権教と言う。夢中の衆生を誘引し驚覚して法華経の寤と成さんと思食(おぼしめ)しての支度方便の経教なり。故に権教と言う。
 斯れに由つて文字の読みを糾して心得可きなり。故に権をば権(かり)と読む。権なる事の手本には夢を以て本と為す。又実をば実(まこと)と読む。実事の手本は寤(うつつ)なり。故に生死の夢は権にして性体無ければ権なる事の手本なり。故に妄想(もうぞう)と云う。本覚の寤は実にして生滅を離れたる心なれば真実の手本なり。故に実相と云う。是を以て権実の二字を糾して一代聖教の化他の権と自行の実との差別を知る可きなり。故に四教の中には前の三教と五時の中には前の四時と十法界の中には前の九法界は同じく皆夢中の善悪の事を説くなり。故に権教と云う。此の教相をば無量義経に「四十余年未顕真実と説き給う」已上
 未顕真実の諸経は夢中の権教なり。故に釈籤(しゃくせん)に云く「性(しょう)殊なること無しと雖も・必ず幻(げん)に藉(よ)りて幻の機と・幻の感と・幻の応と・幻の赴(ふ)とを発(おこ)す。能応と所化(しょけ)と並びに権実に非ず」已上。此れ皆夢幻の中の方便の教なり。性雖無殊(しょうすいむしゅ)等とは夢見る心性と寤の時の心性とは只一の心性にして総て異なること無しと雖も、夢の中の虚事(こじ)と寤の時の実事と二事一の心法なるを以て見ると思うも我が心なりと云う釈なり。故に止観に云く「前の三教の四弘・能も所も泯(みん)す」已上。四弘とは衆生の無辺なるを度せんと誓願し、煩悩の無辺なるを断ぜんと誓願し、法門の無尽なるを知らんと誓願し、無上菩提を証せんと誓願す。此を四弘(しぐ)と云う。能とは如来なり、所とは衆生なり。此の四弘は能の仏も所の衆生も前三教は皆夢中の是非なりと釈し給えるなり。
 然れば法華以前の四十二年の間の説教たる諸経は未顕真実の権教なり方便なり。法華に取り寄る可き方便なるが故に真実には非ず。此れは仏自ら四十二年の間・説き集め給いて後に今法華経を説かんと欲して・先ず序分の開経の無量義経の時、仏自ら勘文し給える教相なれば人の語も入る可からず・不審をも生(な)す可からず。故に玄義に云く「九界を権と為し・仏界を実と為す」已上。九法界の権は四十二年の説教なり、仏法界の実は八箇年の説・法華経是なり。故に法華経をば仏乗と云う。九界の生死は夢の理なれば権教と云い、仏界の常住は寤の理なれば実教と云う。故に五十年の説教・一代の聖教・一切の諸経は化他の四十二年の権教と自行の八箇年の実教と合して五十年なれば・権と実との二の文字を以て鏡に懸けて陰(くもり)無し。

 故に三蔵教を修行すること三僧祇・百大劫を歴て終はりに仏に成らんと思えば、我が身より火を出だして灰身(けしん)入滅とて灰と成つて失(う)せるなり。通教を修行すること七阿僧祇・百大劫を満てて仏に成らんと思えば、前の如く同様に灰身入滅して跡形も無く失せぬるなり。別教を修行すること二十二大阿僧祇・百千万劫を尽くして終りに仏に成りぬと思えば、生死の夢の中の権教の成仏なれば本覚の寤の法華経の時には別教には実仏無し。夢中の果なり。故に別教の教道には実の仏無しと云うなり。別教の証道には初地に始めて一分の無明を断じて一分の中道の理を顕し、始めて之を見れば別教は隔歴不融(きゃくりゃく・ふゆう)の教と知つて・円教に移り入つて円人と成り已つて別教には留まらざるなり。上中下三根の不同有るが故に初地・二地・三地・乃至・等覚までも円人と成る故に別教の面(おもて)に仏無きなり。故に有教無人と云うなり。
 故に守護国界章に云く「有為の報仏は夢中の権果 前三教の修行の仏、無作(むさ)の三身は覚前の実仏なり 後の円教の観心の仏」又云く「権教の三身は未だ無常を免れず 前三教の修行の仏 実教の三身は倶体倶用なり 後の円教の観心の仏
 此の釈を能く能く意得(こころう)可きなり。権教は難行苦行して適(たまたま)仏に成りぬと思えば夢中の権(かり)の仏なれば本覚の寤の時には実仏無きなり。極果の仏無ければ有教無人なり。況んや教法実ならんや。之を取つて修行せんは聖教に迷えるなり。此の前三教には仏に成らざる証拠を説き置き給いて末代の衆生に慧解(えげ)を開かしむるなり。
 九界の衆生は一念の無明の眠(ねむり)の中に於て生死の夢に溺れて本覚の寤を忘れ、夢の是非に執して冥(くら)きより冥きに入る。是の故に如来は我等が生死の夢の中に入つて顛倒(てんどう)の衆生に同じて・夢中の語を以て夢中の衆生を誘(いざな)い、夢中の善悪の差別の事を説いて漸漸に誘引し給うに、夢中の善悪の事・重畳(ちょうじょう)して様様に無量無辺なれば、先ず善事に付いて上中下を立つ。三乗の法是なり、三三九品なり。此くの如く説き已つて後に又上上品の根本善を立て上中下・三三九品の善と云う。皆悉く九界生死の夢の中の善悪の是非なり。今是をば総じて邪見・外道と為す 捜要記の意。
 此の上に又上上品の善心は本覚の寤の理なれば・此れを善の本(もと)と云うと説き聞かせ給し時に、夢中の善悪の悟りの力を以ての故に・寤の本心の実相の理を始めて聞知せられし事なり。是の時に仏・説いて言く、夢と寤との二は虚事と実事との二の事なれども心法は只一なり、眠りの縁に値(あ)いぬれば夢なり、眠り去りぬれば寤の心なり。心法は只一なりと開会せらるべき下地を造り置かれし方便なり 此れは別教の中道の理 是の故に未だ十界互具・円融相即を顕はさざれば成仏の人無し。故に三蔵教より別教に至るまで四十二年の間の八教は皆悉く方便・夢中の善悪なり。只暫く之を用いて衆生を誘引し給う支度方便なり。
 此の権教の中にも分分に皆悉く方便と真実と有りて権実の法闕(か)けざるなり。四教一一に各(おのおの)四門有つて差別有ること無し。語(ことば)も只同じ語なり・文字も異ること無し。斯(こ)れに由つて語に迷いて権実の差別を分別せざる時を仏法滅すと云う。
 是の方便の教は唯穢土(えど)に有つて総じて浄土には無きなり。法華経に云く「十方の仏土の中には唯一乗の法のみ有つて二無く亦三も無し。仏の方便の説をば除く」已上。故に知んぬ、十方の仏土に無き方便の教を取つて往生の行と為し、十方の浄土に有る一乗の法をば之を嫌いて取らずして成仏す可き道理・有る可しや否や。
 一代の教主釈迦如来・一切経を説き勘文し給いて言く、三世の諸仏同様に一つ語(ことば)一つ心に勘文し給える説法の儀式なれば、我も是くの如く一言も違わざる説教の次第なり云云。方便品に云く「三世の諸仏の説法の儀式の如く、我も今亦是くの如く無分別の法を説く」已上。
 無分別の法とは一乗の妙法なり。善悪を簡(えら)ぶこと無く、草木・樹林(じゅりん)・山河・大地にも一微塵の中にも互ひに各十法界の法を具足す。我が心の妙法蓮華経の一乗は十方の浄土に周遍して闕(か)くること無し。十方の浄土の依報・正報の功徳荘厳は我が心の中に有つて片時も離るること無き三身即一の本覚の如来にて・是の外(ほか)には法無し。此の一法計り十方の浄土に有りて余法有ること無し。故に無分別法と云う是なり。此の一乗妙法の行をば取らずして全く浄土には無き方便の教を取つて成仏の行と為さんは迷いの中の迷いなり。我・仏に成りて後に穢土に立ち還りて穢土の衆生を仏法界に入らしめんが為に次第に誘引して方便の教を説くを化他の教とは云うなり。故に権教と言い又方便とも云う。化他の法門の有様・大体略を存して斯くの如し。




by johsei1129 | 2024-10-01 10:51 | 血脈・相伝・講義 | Trackback | Comments(0)


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