2024年 09月 27日
[法華取要抄 本文] その二 夫れ諸宗の人師等、或は旧訳の経論を見て新訳の聖典を見ず、或は新訳の経論を見て旧訳を捨て置き、或は自宗の曲に執著して己義に随い、愚見(ぐけん)を注し止めて後代に之を加添す。株杭(くいぜ)に驚き騒ぎて兎獣(うさぎ)を尋ね求め、智・円扇(ち・えんせん)に発して仰いで天月を見る。非を捨て理を取るは智人なり。今・末の論師・本の人師の邪義を捨て置いて専ら本経本論を引き見るに、五十余年の諸経の中に法華経・第四法師品の中の已今当(い・こん・とう)の三字最も第一なり。 諸の論師・諸の人師、定めて此の経文を見けるか。然りと雖も或は相似の経文に狂い、或は本師の邪会(じゃえ)に執し、或は王臣等の帰依を恐るるか。所謂・金光明経の「是諸経之王」密厳経(みつごんきょう)の「一切経中勝」六波羅蜜経の「総持第一」大日経の「云何菩提(うんが・ぼだい)」華厳経の「能信是経・最為難(さいいなん)」般若経の「会入法性(えにゅう・ほっしょう)・不見一事」大智度論の「般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)最第一」涅槃論の「今者涅槃理(こんじゃ・ねはんり)」等なり。 此等の諸文は法華経の已今当の三字に相似せる文なり。然りと雖も或は梵帝・四天等の諸経に対当すれば是れ諸経の王なり、或は小乗経に相対すれば諸経の中の王なり、或は華厳(けごん)・勝鬘(しょうまん)等の経に相対すれば一切経の中に勝れたり、全く五十余年の大小・権実・顕密の諸経に相対して是れ諸経の王の大王なるに非ず。所詮所対を見て経経の勝劣を弁(わきま)うべきなり。強敵を臥伏(ふくふ)するに始て大力を知見する是なり。其の上・諸経の勝劣は釈尊一仏の浅深なり。全く多宝分身の助言を加うるに非ず。私説を以て公事に混ずる事勿(なか)れ。 諸経は或は二乗・凡夫に対揚(たいよう)して小乗経を演説し、或は文殊(もんじゅ)・解脱月(げだつがつ)・金剛薩埵(さった)等の弘伝の菩薩に対向して全く地涌千界の上行等には非ず。今・法華経と諸経とを相対するに一代に超過(ちょうか)すること二十種之有り。其の中最要二有り、所謂(いわゆる)三五の二法なり。三とは三千塵点劫(じんてんごう)なり。諸経は或は釈尊の因位を明すこと・或は三祇(ぎ)・或は動逾塵劫(どうゆじんごう)・或は無量劫なり。梵王(ぼんのう)云く、此の土には二十九劫より已来(このかた)知行の主なり。第六天・帝釈・四天王等も以て是くの如し。釈尊と梵王等と始めて知行の先後・之を諍論(じょうろん)す。爾りと雖も一指を挙げて之を降伏してより已来(このかた)、梵天頭を傾け・魔王掌(たなごころ)を合せ、三界の衆生をして釈尊に帰伏せしむる是なり。又諸仏の因位と釈尊の因位と之を糾明するに、諸仏の因位は或は三祇(ぎ)・或は五劫等なり、釈尊の因位は既に三千塵点劫(じんてんごう)より已来・娑婆(しゃば)世界の一切衆生の結縁の大士なり。 此の世界の六道の一切衆生は、他土の他の菩薩に有縁の者一人も之無し。法華経に云く「爾(そ)の時に法を聞く者は各諸仏の所に在り」等云云。天台云く「西方は仏別に縁異り、故に子父の義成せず」等云云。妙楽云く「弥陀・釈迦二仏既に殊なり。況んや宿昔(むかし)の縁・別にして化導同じからざるをや。結縁は生の如く・成熟は養の如し。生養・縁異れば父子成ぜず」等云云。当世日本国の一切衆生、弥陀の来迎(らいごう)を待つは、譬えば牛の子に馬の乳を含め、瓦の鏡に天月を浮ぶるが如し。 又果位を以て之を論ずれば、諸仏如来或は十劫・百劫・千劫已来(いらい)の過去の仏なり。教主釈尊は既に五百塵点劫(じんてんごう)より已来・妙覚果満の仏なり。大日如来・阿弥陀如来・薬師如来等の尽十方の諸仏は、我等が本師教主釈尊の所従等なり、天月の万水に浮ぶ是なり。華厳経の十方台上の毘盧遮那(びるしゃな)、大日経・金剛頂経・両界の大日如来は宝塔品の多宝如来の左右の脇士(きょうじ)なり。例せば世の王の両臣の如し。此の多宝仏も寿量品の教主釈尊の所従なり。此の土の我等衆生は五百塵点劫より已来教主釈尊の愛子なり。不孝の失(とが)に依つて今に覚知せずと雖も、他方の衆生には似る可からず。有縁の仏と結縁の衆生とは譬えば天月の清水に浮かぶが如く、無縁の仏と衆生とは譬えば聾者(みみしい)の雷(らい)の声を聞き、盲者の日月に向うが如し。 而るに或る人師は釈尊を下して大日如来を仰崇(ぎょうすう)し、或る人師は世尊は無縁なり・阿弥陀(あみだ)は有縁なり。或る人師の云く、小乗の釈尊と・或は華厳経の釈尊と・或は法華経迹門の釈尊と・此等の諸師並びに檀那等、釈尊を忘れて諸仏を取ることは、例せば阿闍世太子(あじゃせたいし)の頻婆沙羅王(びんばしゃらおう)を殺し、釈尊に背いて提婆達多に付きしが如し。二月十五日は釈尊御入滅の日乃至十二月十五日も三界慈父の御遠忌(おんき)なり。善導・法然・永観等の提婆達多に誑(たぶらか)されて阿弥陀仏の日と定め畢(おわ)んぬ。四月八日は世尊御誕生の日なり。薬師仏に取り畢(おわ)んぬ。我が慈父の忌日(きじつ)を他仏に替るは孝養の者なるか如何。寿量品に云く「我も亦為(こ)れ世の父、狂子を治せんが為の故に」等云云。天台大師云く「本此の仏に従つて初めて道心を発す。亦此の仏に従つて不退地に住す。乃至猶百川の海に潮すべきが如く、縁に牽(ひ)かれて応生すること亦復(またまた)是くの如し」等云云。 問うて云く、法華経は誰人の為に之を説くや。 答えて曰く、方便品より人記品に至るまでの八品に二意有り。上より下に向て次第に之を読めば、第一は菩薩・第二は二乗・第三は凡夫なり。安楽行より勧持(かんじ)・提婆(だいば)・宝塔・法師と逆次に之を読めば滅後の衆生を以て本と為す。在世の衆生は傍なり。滅後を以て之を論ずれば、正法一千年・像法一千年は傍なり、末法を以て正と為す。末法の中には日蓮を以て正と為すなり。 問うて曰く、其の証拠如何。 答えて曰く、「況滅度後(きょうめつどご)」の文是なり。 疑つて云く、日蓮を正と為す正文如何。 答えて云く「諸の無智の人有つて・悪口罵詈(めり)等し・及び刀杖を加うる者」等云云。 問うて曰く、自讃(じさん)は如何。 答えて曰く、喜び身に余るが故に・堪え難くして自讃するなり。 問うて曰く、本門の心如何。 答えて曰く、本門に於て二の心有り。一には涌出品(ゆじゅつほん)の略開近顕遠(りゃっかいごん・けんのん)は前四味・並びに迹門の諸衆をして脱せしめんが為なり。 二には涌出品の動執生疑(どうしゅう・しょうぎ)より一半並びに寿量品・分別功徳品の半品・已上一品二半を広開近顕遠(こうかいごん・けんのん)と名く。一向に滅後の為なり。 問うて曰く、略開近顕遠の心如何。 答えて曰く、文殊・弥勒(もんじゅ・みろく)等の諸大菩薩・梵天・帝釈・日月・衆星・竜王等、初成道の時より般若経に至る已来(このかた)は一人も釈尊の御弟子に非ず。此等の菩薩・天人は初成道の時、仏・未だ説法したまわざる已前に不思議解脱に住して我と別円二教を演説す。釈尊其の後に阿含・方等・般若を宣説し給う。然りと雖も全く此等の諸人の得分に非ず。既に別円二教を知りぬれば蔵通をも又知れり。勝は劣を兼ぬる是なり。委細(いさい)に之を論ぜば或は釈尊の師匠なるか、善知識とは是なり。釈尊に随うに非ず。 法華経の迹門の八品に来至して始めて未聞の法を聞いて此等の人人は弟子と成りぬ。舎利弗・目連(しゃりほつ・もくれん)等は鹿苑(ろくおん)より已来・初発心の弟子なり。然りと雖も権法のみを許せり。今法華経に来至して実法を授与(じゅよ)し、法華経本門の略開近顕遠に来至して華厳よりの大菩薩・二乗・大梵天・帝釈・日月・四天・竜王等は位・妙覚に隣り又妙覚の位に入るなり。若し爾(しか)れば今・我等天に向つて之を見れば、生身の妙覚の仏・本位に居して衆生を利益する是なり。 問うて曰く、誰人の為に広開近顕遠の寿量品を演説するや。 答えて曰く、寿量品の一品二半は始より終に至るまで正く滅後衆生の為なり。滅後の中には末法今時の日蓮等が為なり。 疑つて云く、此の法門・前代に未だ之を聞かず。経文に之れ有りや。 答えて曰く、予が智・前賢(ぜんけん)に超えず。設(たと)い経文を引くと雖も誰人か之を信ぜん。卞和(べんか)が啼泣(ていきゅう)・伍子胥(ごししょ)が悲傷是なり。然りと雖も略開近顕遠・動執生疑の文に云く「然(しか)も諸の新発意(しんぽっち)の菩薩、仏の滅後に於て若し是の語を聞かば、或は信受せずして法を破する罪業の因縁を起さん」等云云。文の心は寿量品を説かずんば末代の凡夫・皆悪道に堕せん等なり。寿量品に云く「是の好き良薬を今留めて此に在く」等云云。文の心は上は過去の事を説くに似たる様なれども、此の文を以て之れを案ずるに滅後を以て本と為す。先ず先例を引くなり。 分別功徳品に云く「悪世末法の時」等云云。 神力品に云く「仏滅度の後に能く是の経を持たんを以つての故に諸仏皆歓喜して無量の神力を現じ給う」等云云。 薬王品に云く「我が滅度の後・後の五百歳の中に広宣流布して閻浮提(えんぶだい)に於て断絶せしむること無けん」等云云。又云く「此の経は則ち為(こ)れ閻浮提の人の病の良薬なり」等云云。 涅槃経に云く「譬えば七子の如し。父母平等ならざるに非ざれども、然も病者に於て心則ち偏(ひとえ)に重し」等云云。 七子の中の第一第二は一闡提・謗法(いっせんだい・ほうぼう)の衆生なり。諸病の中には法華経を謗ずるが第一の重病なり。諸薬の中には南無妙法蓮華経は第一の良薬なり。 此の一閻浮提(いちえんぶだい)は縦広(じゅうこう)七千由善那(ゆぜんな)八万の国之れ有り。正像二千年の間・未だ広宣流布せざるに、法華経当世に当つて流布せしめずんば釈尊は大妄語の仏・多宝仏の証明は泡沫(ほうまつ)に同じく、十方分身の仏の助舌も芭蕉(ばしょう)の如くならん。 疑つて云く、多宝の証明・十方の助舌(じょぜつ)・地涌の涌出此等は誰人の為ぞや。 答えて曰く、世間の情に云く、在世の為と。 日蓮云く、舎利弗・目犍(もくけん)等は現在を以て之を論ずれば智慧第一・神通第一の大聖なり。過去を以て之を論ずれば金竜陀仏(こんりゅうだぶつ)・青竜陀仏(せいりゅうだぶつ)なり。未来を以て之を論ずれば華光如来、霊山を以て之を論ずれば三惑頓尽(さんなく・とんじん)の大菩薩、本を以て之を論ずれば内秘外現の古菩薩なり。文殊・弥勒等の大菩薩は過去の古仏・現在の応生なり。梵帝(ぼんたい)・日月・四天等は初成已前の大聖なり。其の上前四味・四教・一言に之を覚りぬ。仏の在世には一人に於ても無智の者之れ無し。誰人の疑(うたがい)を晴さんが為に多宝仏の証明を借り、諸仏舌を出し、地涌の菩薩を召さんや。方方以て謂(いわ)れ無き事なり。経文に随つて「況滅度後・令法久住」等云云。此等の経文を以て之を案ずるに偏に我等が為なり。随つて天台大師・当世を指して云く「後の五百歳遠く妙道に沾(うるお)わん」 伝教大師当世を記して云く「正像稍(やや)過ぎ已つて末法太(はなは)だ近きに有り」等云云。
by johsei1129
| 2024-09-27 11:23
| 御書十大部(五大部除く)
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