2016年 06月 26日
答う、総じて奪う則は略開を聞いて疑いを生じ、広開を聞いて疑いを断じて信を生ず、後に分別品に至って記を受くるなり。若し又別に与うる則は、略開を聞いて深く仏意に通達するの間、略開に脱せしむと云わるる者なり。今は滅後の凡夫に望んで、別して与えて之を判ず。所以に略開を以て得脱に属し、広開を以て一向に滅後の為としたもうなり。若し又本尊抄は、奪の辺に約して傍証を判ず。所以に一往再往を作って傍正を判じたもう。然れば則ち彼此の判文の意は同じといえども其の文義は不同なり。然るに啓運等に一概に彼此の釈を同ずるは非なり。 問う、与奪有る事、何を以て之を知るや。 答う、証真法師の私記に云わく「問う、因位に豈仏の所知に達するや。答う、且く新発意に望んで与えて達すと言う。之を奪えば達すべからず」已上。此の釈分明なり。「新発意」とは滅後の凡夫の法華経を信ずる者の事なり。在世の得脱の者を滅後の凡夫に対して与うる則、略開の中にして得脱するといえども、若し奪う則んば、一品二半を聞いて得脱するぞと云う事なり。 問う、略開の中に得脱とすると云う証文は如何。 答う、動執生疑の文に云わく「我等は復、仏の随宜の所説、仏の所出の言未だ曾て虚妄ならず、仏の所知は皆悉く通達したまえりと信ずと雖も」文。此の文に分明なり。略開の時に大衆知って悉く得脱すると云う事を何ぞ疑うべけんや。 難じて云わく、此の品に「仏昔釈種より出家して伽耶に近く」等云云。寿量品に能迷の衆を出して「一切世間の天人、及び阿修羅」等云云。次の品に、一生八生の益あって、時の衆、供養をなし畢って、弥勒の領解に「仏希有の法を説きたもう、昔より未だ曾て聞かざる所なり、世尊は大力有して、寿命量るべからず」等云云。然れば則ち実に是れ仏の所知に於て未だ得脱を為さずと見えたり。何ぞ別して与えて略開の中に皆悉く脱せしむると判ずるや。 答えて云わく、其の文は皆悉く是れ奪の義なり。今は与の義なり。奪の義を以て与の義を難ずべからざるなり。又経に云く「然も諸の新発意の菩薩、仏の滅後に於いて」等云云。此の文を次下に得脱と遊ばさるる文の意は、寿量品を説かずんば末代の凡夫皆悪道に墮つ、是を以て末法の衆生の為に寿量の説を設けたもう者なりと云う意なり。 問うて云く、天台と祖師と、分文の相違は如何。 答う、天台は奪の義に約して判釈したもうなり。之に依って動執生疑の文を略開に属するなり。祖師は与の義に依る。依って動執生疑より下の文を広開と名づけ、其れより上の文を略開と為す。是れ則ち動執生疑の文に「我等は復、仏の随宜の所説、仏の所出の言未だ曾て虚妄ならず、仏の所知は、皆悉く通達したまえりと信ずと雖も、然も諸の新発意の菩薩」と言えるを以て勘えたもうに、略開の中にして皆得脱すると相見えたり。依って動執生疑の文段を以て広開に属し給う者なり。故に各々一意に依るなり。然れば則ち動執已下を一品二半と云えるは滅後の為なる事、経文に分明なり。 問う、与奪の義分明なり。爾りと雖も宗祖の判釈之有りや。 答えて云わく、四菩薩造立抄外の十四・三十六に云わく「御得意候へ、本迹二門の浅深・勝劣・与奪・傍正は時と機とに依るべし」云云。 然れば則ち直ちに其の文之無しと云えども、其の義是れ宛然なり。疑うべからず。彼の啓運抄の料簡は其の義に当たるに似たりと雖も、大旨に応ぜざるが故に之を斥う。
by johsei1129
| 2016-06-26 21:08
| 日寛上人 御書文段
|
Trackback
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
全体 御書 INDEX・略歴 WRITING OF NICHIREN 観心本尊抄(御書五大部) 開目抄(御書五大部) 撰時抄(御書五大部) 報恩抄(御書五大部) 立正安国論(御書五大部) 御書十大部(五大部除く) 日蓮正宗総本山大石寺 重要法門(十大部除く) 血脈・相伝・講義 短文御書修正版 御義口伝 日興上人 日寛上人 六巻抄 日寛上人 御書文段 小説 日蓮の生涯 上 小説 日蓮の生涯 中 小説 日蓮の生涯 下 LIFE OF NICHIREN 日蓮正宗関連リンク 南条時光(上野殿) 阿仏房・千日尼 曾谷入道 妙法比丘尼 大田乗明・尼御前 四条金吾・日眼女 富木常忍・尼御前 池上兄弟 弟子・信徒その他への消息 釈尊・鳩摩羅什・日蓮大聖人 日蓮正宗 宗門史 創価破析 草稿 富士宗学要集 法華経28品 並開結 重要御書修正版 検索
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 01月 お気に入りブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
タグ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||