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日蓮大聖人『御書』解説

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2019年 10月 25日

富木常忍が法友・大田乗明、曾谷入道の抱える問題を大聖人に報告したことへの返書【尊霊御菩提御書】

【尊霊御菩提御書】
■出筆時期:建治元年(1275年)十一月 五十四歳御作。
■出筆場所:身延山中の草庵にて。
■出筆の経緯:本抄は一紙の断簡が伝えられておりますが、恐らく最古参の強信徒・富木常忍から立宗初期からの法友ともいえる大田乗明、曾谷次郎教信入道の抱える問題について大聖人に報告があり、それへの返書であろうと思われます。
本文冒頭の「尊霊の御菩提」とは富木常忍の亡き母の菩提を意味しているのではと思われます。
また大田乗明の問題は「大田殿御所労の事」と記されておられるように、大田乗明が重病にかかっていた事に関してで、これについては本抄を記された同時期の建治元年十一月三日に送られた「大田入道殿御返事」にて大聖人は次のように諭されておられます。「宿縁の催す所又今生に慈悲の薫ずる所存の外に貧道に値遇して、改悔を発起する故に・未来の苦を償うも現在に軽瘡(きょうそう)出現せるか。<中略>所持の妙法は月愛に超過す。豈軽瘡を愈(い)やして長寿を招かざらんや」。

また曾谷入道の問題とは、曾谷教信が【観心本尊抄】を読んで誤解し、迹門の方便品は読誦せず本門の如来寿量品のみ読誦するという、所謂「迹門不読」を唱えたことについてです。これに関して大聖人は本抄で「観心の法門の時申すべし」と記され、本抄の数日後に富木常忍に送られた【観心本尊得意抄】で「教信の御房、観心本尊抄の「未得」等の文字に付いて迹門をよまじと疑心の候なる事、不相伝の僻見(びゃっけん)にて候か」と厳しく指導なされる一方、この年の三月には曾谷教信に宛てた消息[曾谷入道殿御返事】で「方便品の長行書進(まい)らせ候。先に進らせ候し自我偈に相副へて読みたまうべし。此の経の文字は皆悉く生身妙覚の御仏なり」と、自ら方便品の長行を書写され曾谷入道に方便品も読誦するよう送られておられます。

これらの一連の経緯は現在の我々大聖人の信徒の一分として、この当時の大聖人と信徒との深い師弟関係の一端を垣間見る思いがいたします。
■ご真筆:京都市頂妙寺(一紙断簡)所蔵。
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【尊霊御菩提御書 本文】

尊霊の御菩提 疑ひ無き者か。
時に適(かな)ふのみ 等の釈は此の意か。大田殿
次郎入道殿の御事は観心の法門の
時申すべし。大田殿御所労の事、
之を歎くと雖もはた(将)又軽重




by johsei1129 | 2019-10-25 06:58 | 富木常忍・尼御前 | Trackback | Comments(0)


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