2019年 11月 29日
【大夫志殿御返事】 ■出筆時期:弘安三年(1280)十二月初旬 五十九歳御作。 ■出筆場所:身延山中 草庵にて。 ■出筆の経緯:本抄は池上兄弟の兄、池上宗仲から小袖(こそで)、直垂(ひたたれ)、腰三具等を供養されたことへの返書となっております。 大聖人は本抄後段で「百万億那由佗国の六道の衆生を八十年やしなひ、法華経より外の已今当の一切経を一一の衆生に読誦せさせて三明六通の阿羅漢・辟支仏(びゃくしぶつ)・等覚の菩薩となせる一人の檀那と、世間出世の財を一分も施さぬ人の法華経計りを一字・一句・一偈持つ人と相対して功徳を論ずるに、法華経の行者の功徳勝れたる事・百千万億倍なり」と記され、法華経計りを一字・一句・一偈持つ法華経の行者の功徳が甚大であると断じられておられます。また文末で「此の由を女房には申させ給へ」と記されておられるのは恐らく宗仲が女房から法華経をたもつことの功徳について何がしか質問され、それを宗仲が大聖人に問われたものと推察されます。 ■ご真筆:京都市妙覚寺(右)、神奈川県妙本寺(左)、他二ヶ所にて断簡所蔵。 [真筆本文緑字] 【大夫志殿御返事 本文】 小袖一つ・直垂(ひたたれ)三具・同じく腰三具等云云。小袖は七貫・直垂並びに腰は十貫・已上十七貫文に当れり。 夫れ以(おもんみ)れば天台大師の御位を章安大師・顕はして云く「止観の第一に序文を引いて云く、安禅として化す。位五品に居したまえり。故に経に云く、四百万億那由佗の国の人に施すに一一に皆七宝を与え又化して六通を得しむるすら初随喜の人に如(しか)ざること百千万倍せり。況んや五品をや。文に云く即ち如来の使ひなり、如来の所遣(しょけん)として如来の事を行ず」等云云、 伝教大師・天台大師を釈して云く「今吾が天台大師は法華経を説き・法華経を釈し・群に特秀し唐に独歩す」云云。又云く「明らかに知んぬ如来の使ひなり。讃(ほ)むる者は福を安明(あんみょう)に積み、謗(そし)る者は罪を無間に開く」と云云。 如来は且らく之を置く、滅後一日より正像二千余年の間・仏の御使ひ二十四人なり。所謂第一は大迦葉・第二は阿難・第三は未田地(までんだい)・第四は商那和修・第五は毱多(きくた)・第六は提多迦(だいたか)・第七は弥遮迦(みしゃか)・第八は仏駄難提(ぶつだなんだい)・第九は仏駄密多(ぶつだみった)・第十は脇比丘(きょうびく)・第十一は富那奢(ふなしゃ)・第十二は馬鳴(めみょう)・第十三は毘羅(びら)・第十四は竜樹(りゅうじゅ)・第十五は提婆(だいば)・第十六は羅喉(らご)・第十七は僧佉難提(そうぎゃなんだい)・第十八は僧佉耶奢(そうぎゃやしゃ)・第十九は鳩摩羅駄(くまらだ)・第二十は闍夜那(じゃやな)・第二十一は盤駄(はんだ)・第二十二は摩奴羅(まぬら)・第二十三は鶴勒夜奢(かくろくやしゃ)・第二十四は師子尊者。 此の二十四人は金口の記する所の付法蔵経に載す。但し小乗・権大乗経の御使ひなり、いまだ法華経の御使ひにはあらず。三論宗の云く「道朗吉蔵は仏の使ひなり」法相宗の云く「玄奘・慈恩は仏の使ひなり」華厳宗の云く「法蔵・澄観は仏の使ひなり」真言宗の云く「善無畏・金剛智・不空・慧果・弘法等は仏の使ひなり」。日蓮之を勘えて云く、全く仏の使ひに非ず、全く大小乗の使ひにも非ず、之を供養せば災を招き之を謗ぜば福を至さん。 問う、汝の自義か。 答えて云く、設い自義為りと雖も有文有義ならば何の科(とが)あらん。然りと雖も釈有り。伝教大師云く「誰か福を捨て罪を慕う者あらんや」云云。福を捨てるとは天台大師を捨てる人なり、罪を慕うとは上に挙ぐる所の法相・三論・華厳・真言の元祖等なり。彼の諸師を捨て一向に天台大師を供養する人の其の福を今申すべし。 三千大千世界と申すは東西南北・一須弥山・六欲梵天を一四天下となづく。百億の須弥山・四州等を小千と云う、小千の千を中千と云う、中千の千を大千と申す。此の三千大千世界を一にして四百万億那由佗国の六道の衆生を八十年やしなひ、法華経より外の已今当の一切経を一一の衆生に読誦せさせて、三明六通の阿羅漢・辟支仏(びゃくしぶつ)・等覚の菩薩となせる一人の檀那と、世間出世の財(たから)を一分も施さぬ人の法華経計りを一字・一句・一偈(いちげ)持(たも)つ人と相対して功徳を論ずるに、法華経の行者の功徳勝れたる事・百千万億倍なり。天台大師此れに勝れたる事五倍なり。かかる人を供養すれば福を須弥山につみ給うなりと・伝教大師ことはらせ給ひて候。此の由を女房には申させ給へ。恐恐謹言。 日蓮 花押 大夫志(さかん)殿御返事
by johsei1129
| 2019-11-29 20:10
| 池上兄弟
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