2015年 12月 30日
一 智証大師等文。 此の下は次に智証、亦三と為す。初めに師資習学、次に入唐伝受、三に自述矛盾。 文に云う「智証大師」とは、釈書第三・十八を往いて見よ。文に「別当」と云うは光定の事なり。釈書三・三云云。文に云う「良諝」とは、啓蒙七・五十九。文に云う「大日経の旨帰」とは、此の下は三に自述矛盾、亦三と為す。初めに真言を勝と為し、次に法華を勝と為し、三には「二宗の斉等」、亦二あり。初めに自述、二に宣示。 初めに真言を勝と為すとは、大日経旨帰三十九に云く「今案ずるに此の三摩地門は唯秘密教のみに在り。自余の一切修多羅の中に欠いて而も書かず。故に大乗中の王、秘中の最秘と云う。法華尚及ばず。矧や自余の教をや」云云。 又御書三十二・二に云く「円珍智証大師云く、『華厳・法華を大日経に望むれば為れ戯論と作す』と」文。玄私記の七・四十一に云く「後唐院の記に云く、自証の境界は長短久近の相有ること無し。八葉の諸尊は機に随って土を取る。而して中台は本際を動ぜず。汝が仏は新成、吾が仏は久成等。皆是れ戯論にして仏法に非ず。当に知るべし、華厳・法華の所説は皆戯論なり。久近は機に在り。都て仏に在るに非ず」等云云。又御書三十七・三。 次に法華を勝と為すとは、授決集の下巻四十五に云く「真言を謬誦乃至若し法華・華厳・涅槃等の経に望むれば、是れ摂引門」等云云。啓蒙七・五十九、中正十六・四十五、金山一下末三十五、開目の下十三。 又智証大師の講演法華義抄に云く「言う所の方便に能所有り。能に一相有り、所に十相有り。阿字の法門を能門と名づく。此くの如き一字に四方を具す。所謂能開・能示・能悟・能入等なり。菩提心の阿を能開と為し、菩提行の阿を能示と為し、証菩提の阿を能悟と為し、入涅槃の阿を能入と為す。相性体力作因縁果報等の如是の十法を所開・所示・所悟・所入と為す」等云云。 此の文は、真言を能通の方便と為し、法華を所通の本法と為す。故に法華の勝れたること文に在って分明なり。故に止観見聞は此の文を以て顕勝密劣の判釈とするなり。 三の「二宗の斉等」とは「普賢経の記と論記とには『同じ』等云云。普賢経の記の下二十四に云く「天台の実相観と大日の不生観と並びに心に容るるべし」云云。論記の八末二十四に云く「仏、三世に於て等しく三身有り。諸経の中に於て之を秘して伝えず。故に菩提心論に云く、唯此の経の中に即身成仏す。故に是の三摩地門を説く。諸経の中に於て欠いて書せず。今、無畏三蔵の釈語の次に依って之を書く。今と符合せり。彼此嫌う莫れ」と文。 文に云う「貞観八年」等とは、 問う、何ぞ宣旨を以て自述矛盾の中に属するや。 答う、奏聞の旨に任せて即ち宣旨を下す。故に其の宣旨は、義、自述に当るなり。故に宣旨に「聞くが如くんば、真言・止観、両教一宗」等と云うなり。故に宗祖は宣旨を以て即ち自語相違の中に属したまえるなり。故に下の文に云く「或は真言すぐれ乃至宣旨を申し下すには乃至此等は皆自語相違」等云云。 一 されば慈覚・智証等文。 此の下は次に今師の破責、亦三と為す。初めに略して自語相違を責め、次に「但し二宗」の下は広く先師違背の失を責め、三に「されば粮米」の下は総結。 初めの文に云く「或は真言すぐれ乃至」等とは、 問う、上来の慈覚の中に法華を勝と為すの義を見ず。況や等海抄十七・五に天台・真言の勝劣同異を明かす中にも亦其の相無し。故に等海抄に云く「心賀の御義に云く、一には真言は事理倶に一向に天台に勝れたり。是れは弘法・智証の御義なり。智証釈して云く、天台の三観一心の理は源は阿字本空の理より出でたり云云。此の釈は能生の法は真言、所生の法は天台と釈する故に、所生の法は事理倶に劣ると聞えたり云云。二には事理倶密は真言勝れたり。唯理秘密は両宗同じきなり。是れ慈覚・五大院等の御義なり。三には真言・天台、事理倶に一向に全く同じきなり。是れ伝教の御義なり。山家の釈に云く、真言と止観と其の旨は一なり。故に一山に於て両宗を弘む等云云。四には天台は勝れ、真言は劣るなり。是れ四重の秘釈を以て口伝の子細之有り」等云云。然らば何ぞ「慈覚・智証乃至或は法華すぐれ」等といわんや。 答う、是れ則ち智証に相従う故なり。又此の等海口伝を見るに、慈覚・智証の先師違背の大罪、弥々分明なり。
by johsei1129
| 2015-12-30 22:37
| 日寛上人 御書文段
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