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日蓮大聖人『御書』解説

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2019年 10月 26日

今度法華経の為に身を捨て命をも奪われ奉れば無量無数劫の間の思ひ出なるべしと思ひ切り給うべし、と説いた【大井荘司入道御書】

【大井荘司入道御書】
■出筆時期:建治二年(1276年)二月 五十五歳御作
■出筆場所:身延山中の草庵にて。
■出筆の経緯:本抄は甲斐・大井荘の荘司(荘園の管理者)の職にあった大井荘司入道に送られた消息です。大井荘司入道は日興上人による甲斐国の布教活動により大聖人に帰依したと思われますが、大聖人は恐らくその信仰心に懸念を感じられ、本消息末尾で「然れば今度法華経の為に身を捨て・命をも奪われ奉れば無量無数劫の間の思ひ出なるべしと思ひ切り給うべし」と極めて厳しい指導を為されたものと拝されます。
尚、大井荘司入道の孫の肥前房日伝は、寂日房日華の弟子(日興上人の孫弟子)となりますが、後に日興上人に違背しています。日興上人の弟子分帳には「一、甲斐の国大井入道殿の孫・肥前房は寂日房の弟子なり。仍て日興之を与え申す。但し今は背き了んぬ」と記されておられます。
■ご真筆:現存しておりません。

[大井荘司入道御書 本文]

 柿三本、酢一桶・くぐたち(菜)・土筆(つくづくし)給い候い畢んぬ、
 唐土に天台山と云う山に竜門と申して百丈の滝あり。此の滝の麓(ふもと)に春の初めより登らんとして多くの魚集まれり。千万に一(ひとつ)も登ることを得れば竜となる。

 魚・竜と成らんと願うこと民の昇殿を望むが如く、貧なるものの財(たから)を求むるが如し。仏に成ることも亦此くの如し。彼の滝は百丈、早き事強兵(がっぴょう)の天より箭(や)を射徹(いとお)すより早し。此の滝へ魚・登らんとすれば人集りて羅網(あみ)をかけ、釣(つり)をたれ、弓を以て射る。左右の辺に間なし。空には鵰(くまたか)・鷲(わし)・鵄(とび)・烏(からす)、夜は虎・狼・狐・狸、何にとなく集まりて食い噬(は)む。仏になるをも是を以て知りぬべし。

 有情輪廻・生死六道と申して、我等が天竺に於て師子と生れ、漢土日本に於て虎狼野干と生れ、天には鷹・鷲、地には鹿・蛇と生れしこと数をしらず。或は鷹の前の雉(きじ)・猫の前の鼠と生れ、生(いき)ながら頭をつつ(啄)き・ししむら(肉)をかまれしこと数をしらず。一劫が間の身の骨は須弥山よりも高く、大地よりも厚かるべし。惜しき身なれども云うに甲斐なく奪われてこそ候いけれ。

 然れば今度・法華経の為に身を捨て・命をも奪われ奉れば、無量無数劫の間の思ひ出なるべしと思ひ切り給うべし。穴賢穴賢。又又申すべし。恐恐謹言。

 建治二年丙子  日 蓮 花 押

 大井荘司入道殿




by johsei1129 | 2019-10-26 11:18 | 弟子・信徒その他への消息 | Trackback | Comments(0)


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