一 神力品に云く、爾の時に千世界等文。
此の下は三に本門流通の文を引く、亦三と為す。初めに別付嘱の文を引き、次に総付嘱の文を引き、三に捃拾遺嘱を示す。
初めの別付嘱の文を引くに亦三と為す。初めに本化発誓の文を引き、次に十神力の文を引き、三に正しく結要付嘱の文を引く。
初めの本化発誓の文、亦二と為す。初めに正しく経文を引き、次に「天台」の下は釈。
初めの経文に云く「地より涌出せる者」とは、即ち「今の遣使還告」なり。「仏の滅後に於て」とは即ち是れ「悪世末法の時」なり。「当に広く此の経を説くべし」とは「寿量品の肝要たる名体宗用教の南無妙法蓮華経是れなり」と。発誓既に然なり。付嘱知るべし云云。
文に「天台の云く」等と云うは、此の下は釈、亦二と為す。初めに但本化の発誓のみ有ることを明かす。故に「但下方の発誓のみを見たり」と云うなり。
次に「道暹」の下は迹化の発誓無きを明かす、亦三と為す。初めに別付嘱は唯本化に限ることを明かし、次に「夫れ文殊」の下は暫時往来の菩薩なることを明かし、三に「又爾前」の下は本法所持の人に非ざることを明かすなり、
初めの文意に謂く、別付嘱は唯本化に限る。故に道暹の云く「此の経をば唯下方涌出の菩薩に付す」と云云。付嘱既に爾なり、発誓も亦然り。故に迹化の発誓無きなり。
問う、別付嘱は本化に限ると雖も、総付嘱は既に迹化に通ず。何ぞ発誓無からんや。
答う、別命に由り故に方に本化の発誓有り。発誓に由る故に即ち別付嘱あり。故に別命、発誓、付嘱、並びに是れ一例なり。又通命に由り即ち勧持品の発誓あり。勧持品の発誓に由り総付嘱有り、故に総付嘱は迹化に通ずるなり。故に亦一例なり。
次の文意に謂く、若し本化の菩薩は塵劫常に此の土に住し釈尊の初発心の弟子なり。故に発誓有り。然るに文殊等は他方他仏の弟子にして暫時往来の菩薩なり。故に発誓無きなり。
問う、縦い他方他仏の弟子にして暫時往来の菩薩なりと雖も、何ぞ必ずしも発誓なからんや。例せば過八恒沙は他方他仏の弟子にして暫時往来の菩薩なりと雖も、而も発誓有るが如し。他方すら尚爾なり。況や文殊等をや。如何。
答う、既に他方他仏の弟子・暫時往来の菩薩を止めて「止みね善男子」と説く。故に其の義正しく文殊等の迹化をも止むるに当れり。故に重ねて更に発誓あるべからざるなり。
第三の文意は、本化は既に是れ本法所持の人なり。故に発誓有り。文殊等は是れ権迹の菩薩にして本法所持の人に非ず。故に発誓無きなり。
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