第四十九段 折伏を行ずる利益を明かす
一 問うて云く摂受等文。
此の下は三に料簡、亦二あり。初めに折伏の時に摂受を行ずる失を明かし、次に「問うて云く」の下は折伏の時に折伏を行ずる得を明かすなり。初めの文に亦二あり。初めに経を引き、次に「建仁」の下は台密二宗を破するなり。
一 涅槃経に云く等文。
会疏の三・五十二。「善男子」の下は在家、「能く戒を持ち浄行を守護すと雖も」の下は出家なり。
一 法然・大日等文。
「大日」とは能忍の事なり。釈書の二・五。
一 若し能く挙処を駈遣し、呵責せんは文。
応に此くの如くに点ずべし。上の文に例して知るべし。
「挙処」というは、啓蒙三・十四に四義を出せり。
一には謗者の住処を挙げて折伏する義なり。
二には動なりの訓を用い、追って処を去らしむる義なり。
三には挙容の処を倶に駈遣すべし。
四には罪を挙げて処分する義なり云云。
此等の諸義、皆未だ分明ならず。今謂く「挙処」とは即ち一切の処なり。謂く、謗者の所至の処、一処をも漏らさず駈遣し、呵責すべしとなり。弘決第七末六十三に云く「空の挙心は法界に非ざること無しと談ず」等云云。止随の七・五十八に云く「挙心とは一切心なり」と云云。又和訓には「処を挙って」と読むべし。例せば「世を挙って・人を挙って・国を挙って・身を挙って」等の如し。此等の例文を持って今の意を了すべきなり。
つづく
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