2015年 08月 12日
此の下は結文なり。 問う、一念三千を以て仏種と名づくる意は如何。 答う、種は是れ能生の義なり。故に妙楽の記の第四に「種は生の義」と云うなり。然れば今「一念三千」とは、即ち是れ文底秘沈の本地難思の境智の妙法の御事なり。此の本地難恩の境智の妙法蓮華経は能く十方三世の諸仏を生ず。故に「一念三千の仏種」と云うなり。即ち前に引く所の開結二経の意なり。忠抄の仏種の義、恐らくは是れ浮浅なり。 一 問うて日く、上の大難未だ其の会通を聞かず等文。 此の下は三に正しく受持即観心を明かすなり。文を分つに亦二あり。初めに問、次に答、亦三と為す。初めに文を引き、次に「私に会通を加えば」の下は釈。三に「妙楽」の下は結文なり。 文に云く「未だ六波羅蜜を修行する事を得ずと雖も乃至自然に在前す」等文。此の文の意は、因位の万行の妙法五字に具足する義を顕すなり。故に妙法五字を受持する則は因位の万行を修せずと雖も、義は之を修するに当る、故に「自然に在前す」と云うなり。因位の万行既に爾り、果位の万徳も亦爾なり。例せば大乗の因とは諸法実相、大乗の果とは亦諸法実相の如し云云。故に下に「因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す」と云うなり。 文に云く「法華経に云く『具足の道を開かんと欲す』」等云云。此の下の五文、並びに妙法即ち是れ「具足」の義を顕すなり。妙楽の弘一中四に云く「法華の前には未だ曽て権を開せざれば具足と名づけず」等云云。当に知るべし、爾前は所開・迹門は能開、迹門は所開・本門は能開、脱益は所開・下種は能開なり。今文底下種の本地難思の境智の妙法を以て「具足」と名づくるなり。 一 私に会通を加えば本文を黷すが如し等文。 此の下は釈、亦二と為す。初めに正釈、次に釈成。文に云く「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す」等とは「因行果徳の二法」と言うは、即ち前に難ずる所の権迹本の教主釈尊の因行・果徳の二法なり。「妙法蓮華経の五字に具足す」と言うは、即ち前に引く所の開結二経の本地難思の境智の妙法なり。前に難ずる所の権迹本の因果の二法は即ち是れ所生なり。前に引く所の本地難思の境智の妙法は即ち是れ能生なり。所生は必ず能生に帰し、権は必ず実に帰し、迹は必ず本に帰し、脱は必ず種に帰す。故に彼の釈尊の因行・果徳の二法は妙法五字に具足す。故に「具足」と云うなり。 玄文の第七・三一に云く「若し過去は最初所証の権実の法を名づけて本と為すなり。本証より已後、方便化他し、開三顕一し、発迹顕本するは還って最初を指して本と為す。中間の示現の発迹顕本も亦最初を指して本と為す。今日の発迹顕本も亦最初を指して本と為す。未来の発迹顕本も亦最初を指して本と為す。三世は乃ち殊なれども毘盧遮那の一本は異らず、百千の枝葉同じく一根に趣くが如し」等云云。此の文、正しく是れ久遠元初を本と為し、一根に譬う。本果已後を迹に属し、以て枝葉に譬う。而して「百千の枝葉同じく一根に趣くが如し」と言う。豈権迹本の教主釈尊の因果の功徳、本地難思の境智の妙法に具足するに非ずや。 問う、本地難思の境智の妙法は、即ち是れ十方三世の諸仏の能生の種子なり。故に十方三世の諸仏の因果の功徳も皆咸く此の妙法五字に具足すべし。何ぞ「釈尊の因行果徳」と云うや。 答う、実に所問の如し。一切諸仏の因位の万行、果位の万徳、皆悉く此の妙法五字に具足するなり。故に本尊の功徳無量無辺にして而も広大深遠の力用を備えたまえり。而るに但「釈尊」と云うは即ち是れ一を挙げて諸に例する故なり。例せば「是れ我が方便なり、諸仏も亦然なり」及び「諸仏如来は、法皆是くの如し」等の如し。
by johsei1129
| 2015-08-12 12:09
| 日寛上人 御書文段
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