2015年 07月 12日
第二十二段 経文に符号するを明かす。
一 されば日蓮が等文。 この下は三に功を顕して疑を立て、広釈の本と為すなり。「千万(分)が一分」等とは、一には卑下の意、二には慈悲に対するが為なり。 一 難を忍び慈悲のすぐれ等文。 外に大難を忍ぶは、内に慈悲の勝れたる故なり。顕戒論に云く「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」と云云。また云云、愚案三八、御書二十三・三十五。 一 をそれをも・いだきぬべし等文。 啓蒙に云く「天台・伝教も吾が祖に対しては恐れをも懐きぬ可きなり」と云云。今謂く、吾が祖、天台・伝教に大して恐れを懐くの義なり。これ則ち天台・伝教に勝れたりという故なり。 一 而るに法華経の第五の巻等文。 此の下は第四に身に当てて釈成するに、亦三あり。初めに経を引いて身に当て、次に「例せば世尊」の下は仏説の差わざるを明かし、三に「経文に我が身」の下は前を結して素懐を述ぶ。初めの経を引いて身に当つるに、また二あり。初めに総、次に「経に云く、諸の」の下は別なり。 一 勧持品の二十行の偈等文。 問う、勧持品の三類、像法迹化に通ずと為んや、末法の本化に限ると為んや。若し限るといわば、既に是れ迹化の発誓なり。何ぞ本化に局らん。況や南三北七の十師、漢土の無量の学者は天台を怨敵となし、得一大師は天台を悪口して「拙いかな智公」等と云云。南都七大寺の碩徳、護命・修円等は奏状を捧げて伝教大師を讒奏す。豈像法迹化の怨敵に非ずや。若し通ずといわば、今文の意は像法に通ぜず。故に「日蓮だにも此の国に生まれずば・ほとをど世尊は大妄語の人・八十万億那由陀の菩薩は提婆が虚誑罪にも堕ちぬべし」というなり。若し通ずることを許さば、像法の迹化に既に怨敵あり。蓮祖縦い出世せずと雖も、世尊何ぞ大妄語の人ならん。八十万億、若為ぞ虚誑ならん。故に今文は末法に限るなり。 答う、或は通ずべしと雖も、若し別して論せば末法の本化に限るなり。此に両意あり。 一には経意に由るが故に。謂く、三類の次上の文に云く「恐怖悪世中」と云云。この文意は別して末法に在るなり。故に蓮祖、寺泊抄に云く「日蓮が浅智には及ばず但し『恐怖悪世中』の経文は末法の始めを指すなり。」等云云。況や迹化の発誓なりと雖も、仏既に之を許さざるをや。故に「仏、今黙然として告勅を見ず」というなり。況や次下に至って即ち本化を召すをや、故に三類は別して本化に限るなり。故に妙楽が云く「今、下の文に下を召すが如きは尚本眷属を待つ。験けし。余は未だ堪えず」等云云。 二には現事に由るが故に。謂く、今の所難の如きは、彼に怨敵あれどもその事微弱なり。謂く、但悪口怨敵のみにして未だ刀杖・遠流のことあらず。況や一切世間の怨嫉に非ざるをや。所以に賢王・聖主は能く是非を暁る。今、末法の三類はその事、甚だ強盛なり。但一切世間の悪口怨嫉のみに非ず、仍刀杖・遠流に及ぶ。故に今、強を以て弱を奪い、末法の本化に限らしむ。三類は像法に通ぜずというには非ず云云。 一 経に云く諸の無智の人あつて等文。 即ちこれ第一の俗衆増上慢、第二、第三の大檀那等なり。また云く「悪世の中の比丘」とは即ちこれ第二の道門増上慢、念仏宗の法然房等の無戒邪見の者なり。また云く「白衣の与に法を説いて」等とは即ちこれ第三の僭聖増上慢。禅宗・律宗の聖一・良観等なり。 一 付法蔵経に記して云く等文。 付法蔵経の第三九紙、林の五十、同五十六、統紀の三十四初。 一 摩耶経に云く等文。 摩耶経下巻十二に具に滅後の法滅の相を説くなり。 一 大悲経に云く等文。 大悲経第二巻十四、西域第三十四。 一 経文に我が身・符号せり等文。 この下は前を結して素懐を述ぶるなり。 一 いよいよ悦びをますべし等文。 一義に云く、経文に我が身普合する上に、御勘気を蒙る、故に「いよいよ悦ぶ」と云うなり云云。 今謂く、経文に普合して御勘気を蒙る上に、未来の悪道を脱るべければ「いよいよ悦ぶ」なり。即ち此の意を次下に釈するなり。啓蒙の後の義はこの義に似たり云云。 一 願兼於業文。 通教は願に習を兼ね、三蔵は願に業を兼ぬるなり。若し別円は唯願のみにして界内に受生するなり。並びに教力の優劣に由るなり。
by johsei1129
| 2015-07-12 16:07
| 日寛上人 御書文段
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