第三段 外道の三徳
一 二には月氏の外道文。
「外道」を釈するにまた三あり。初めに能説の人を挙げて所尊の相を示す。次に「此の三仙」の下は、所説の法を挙げて所学の相を示す。三に「所謂善き外道」の下は、仏家の意を以て而も破会を示す云云。これ総じて略なり云云。
「月氏」の名義、略して三意あり。
仏日既に没し、賢聖の月出でて凡を導くが故に是一。
国の形、半月に似たり。故に北広南狭というなり是二。
彼の土は大国にして星中の月の如し是三。
名義三・十紙、啓蒙四・三十二。
「外道」の名義は朝抄一・十三に二義あり。一には外の道、二には道を外にす。
三種の外道とは、一には仏法外の外道、謂く六師等これなり。二には附仏法の外道、謂く仏法に附して仏法を破するなり。三には学仏法の外道、仏教を学する人の悪見を起すなり。
一 摩醯首羅文。
此には大自在という。色界の頂に居し、欲頂の大自在と同名異体なり。「毘紐天」此には遍浄という。これ第三禅の天なり。「迦毘羅」此には黄頭という。面は金色の如きなり。「漚楼僧佉」此には眼足という。足に三眼あり。「勒娑婆」此には苦行というなり。
一 八百年・已前已後文。
仏の出世八百年已前、八百年已後なり。
一 四韋陀文。
一には讚誦、二には祭祀、三には歌詠、四には攘災なり。「韋陀」は此には「分つ」というなり。(攘災 災いを払いのけること。またそのための祈祷)
一 支流・九十五六等文。
今、両説合せ挙ぐるなり。下の文の「但九十五種」とは、台家の諸文に多く「九十五種」という故なり。具に文私五・十六の如し。
一 或は過去・二生・三生等文。
これ利鈍ある故なり。二三乃至八万の異あるなり。
一 因中有果等文。
これ次第の如し。三仙の見計なり。止観十・九。
一 所謂善き外道文。
この下は三に破会を示す中にまた二あり。初めに破、次に「外道の所詮」の下は会。初めの破の中に先ず法を破し、「善師」の下は人を破するなり。
一 屈歩虫文。
尺取り虫の事なり。
一 或は冬寒等文。
これは鴦掘経第四に出でたり。或は牛馬を殺す等は文殊問経上巻に出でたり。
一 外道の所詮等文。
この下は次に会を明かす。また三あり。初めに初門と為すを明かし、次に大涅槃経は法を会し、三に法華の文は人を会するなり。大涅槃経とは北本二十一・二、文七・九十五。
つづく
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