日蓮大聖人『御書』解説

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2014年 11月 29日

33 二度目の流罪、日蓮佐渡ヶ島へ

鎌倉侍所の大広間に御家人が集まり、喧々諤々(けんけんがくがく)の口論がはじまった。

日蓮の処遇についてである。

時宗が広間中央に腕をくみ瞑目していた。明らかに迷っている様子だった。日蓮をどうするか、決めかねていたのである。

彼の前で頼綱と泰盛が、つかみかからんばかりにののしりあった。

泰盛が大声でいう。

「許して召しかえすのだ。これはおぬしの勝手な行動だ」

頼綱は反論する。

「いや斬るべきでござる。このたびは侍所の責任者として行動したまでのこと。やましいことはござらん」

場内かまびすしく激論がつづく。

ここで北条宣時が提案した。

「どうであろう。日蓮は百日のうちにいくさがあるといった。それをまってはどうかな」

何人かの御家人が首をかしげる。笑う者さえいた。

泰盛が時宗に手をついた。

「殿、日蓮は赦免して保護すべきでござる。なにとぞお許しを・・」

頼綱が横から口をだす。

「殿、日蓮の首は斬っておかねば、のちのち後悔いたします。口封じせねば、幕府は危ういでありましょう」

時宗が瞑目したままだった。

そこへ従者が飛びこんできた。

「いま鎌倉の三ヶ所で火事でござる。火付けと思われます」

一同がさわぎ、御家人があわてて出ていった。

頼綱が時宗に言上する。

「すでに鎌倉の火付け、殺人ひまなし。すべて日蓮の残党の仕業でござる」

泰盛がさえぎった。

「ばかな。証拠もなしに。陰謀である」

頼綱が書面を提出した。そこにはおびただしい人名がしるされていた。

「すでに日蓮門下の二百六十人を手配してござる」

「なんと・・」

泰盛があきれた。

「このうち法華経を捨てぬ者は領地没収、鎌倉追放が妥当と思われまする」

頼綱は周到な用意と謀略で日蓮一派を壊滅するつもりでいる。

だが時宗は聞こえないように告げた。

「占ってみよ」

泰盛と頼綱は意外な展開に思わず互いの顔を見る。

陰陽師(おんみょうじ)を召せ」

陰陽師が威厳に満ちた姿であらわれた。やがて時宗の前で占術をはじめた。

当時の陰陽師の力は絶大である。陰陽師は物事の吉凶を占い、為政者に助言した。小事につけ大事につけ人々に注意を喚起させた。「吾妻鑑」には天文の異変や不吉な出来事から、将来を占う記事がうんざりするほどでてくる。

一同がかたずをのんで陰陽師を見守った。

しばらくして陰陽師は突然おどろき、おののいた。種々御振舞御書』にいう。

 (おおい)に国みだれ候べし・此の御房御勘気(ごかんき)のゆへなり、いそぎいそぎ召しかえさずんば世の中いかが候べかるらん

日蓮を罰することは断じてならぬ。陰陽師は日蓮を支持した。

泰盛は歓喜した。いっぽう頼綱は憮然としている。

長い沈黙のあと、時宗が重い口をひらいた。

「日蓮を流罪とする」

「どちらに」

「北海、佐渡ヶ島」

当時、佐渡は絶海の孤島である。今の南極や北極にひとしい。生還は絶望的だった。

いっとき喜んだ泰盛だったが佐渡流罪と聞いて落胆した。頼綱はつぎの策を練っていた。


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by johsei1129 | 2014-11-29 16:16 | 小説 日蓮の生涯 上 | Comments(0)


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